鹿(読み)シカ

デジタル大辞泉 「鹿」の意味・読み・例文・類語

しか【鹿】


㋐シカ科の哺乳類。日本にすみ、ヤクシカホンシュウジカなどの亜種があり、北のものほど大形。雄は3または4本に枝分かれした角をもつ。毎年4月ごろ前年の角が落ちたあと、袋角が伸び、9月ごろ完成した角となり皮がむける。幼時および夏毛には白斑があるが、冬毛では消失。古くは雄を「しか」、雌を「めか」といった。ニホンジカ。か。かせぎ。かのしし。しし。 秋》「青年―を愛せり嵐の斜面にて/兜太
偶蹄ぐうてい目シカ科の哺乳類の総称。雄は枝角えだづのをもち、毎年生え替わる。ヨーロッパ・アジア・南北アメリカに分布する。ニホンジカ・アカシカトナカイヘラジカなど。
《揚げ代が十六文であったところから、「四四」を「鹿しし」にこじつけたという》江戸時代、大坂の遊里で、大夫天神に次ぐ遊女の位。鹿恋かこい。囲。
寄席芸人用語。咄家はなしかのこと。「はなしか」を略して、鹿の字を当てた語。「鹿芝居」
[類語]日本鹿蝦夷鹿えぞしか本州鹿九州鹿屋久鹿赤鹿大鹿尾白鹿麝香鹿じゃこうじか花鹿箆鹿へらじか豆鹿きょん四不像のろウエムルカリブーサンバートナカイワピチ

ろく【鹿】[漢字項目]

[音]ロク(呉)(漢) [訓]しか か かのしし しし
学習漢字]4年
〈ロク〉
動物の名。シカ。「鹿砦ろくさい鹿鳴神鹿
帝位。「逐鹿
〈しか(じか)〉「牡鹿おじか大鹿河鹿かじか
〈か〉「鹿毛かげ
[難読]氈鹿かもしか馴鹿トナカイ鹿尾菜ひじき

か‐の‐しし【鹿/鹿肉】

《「しし」はいのししや鹿など食肉用の野獣の総称》
鹿のこと。
のしし―は知らず、いくさはただ平攻ひらぜめに攻めて勝ったるぞ、心地はよき」〈平家・一一〉
鹿の肉。
「相ともに心等しき―の味噌のなければ食はじとぞ思ふ」〈仮・仁勢物語・上〉

かせ‐ぎ【鹿】

《角が桛木かせぎに似ているところから》シカの古名。
一箇蒜ひとつのひるを白き―に弾きかけ給ふ」〈景行紀〉

か【鹿】

シカの古名。
「妻恋に―鳴く山辺の秋萩は露霜寒み盛り過ぎ行く」〈・一六〇〇〉

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精選版 日本国語大辞典 「鹿」の意味・読み・例文・類語

しか【鹿】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( 古く、「女鹿(めか)」に対し雄じかを「夫鹿(せか)」と呼び、それが変化したものという ) シカ科に属する哺乳類の総称。体はほっそりとし、四肢が細長く、尾は短い。ふつう雄の頭部には樹枝状の枝角があり、毎年基部から落ちる。森林や草原にすみ、木や草の葉・地衣などを食べる。ニホンジカ・トナカイ・ジャコウジカ・キョン・キバノロ・ノロなどの種類がある。日本では特にニホンジカをさしていう。かせぎ。かのしし。かかしし。《 季語・秋 》
    1. [初出の実例]「其(かの)苞苴は何の物そ。対へて言はく、牡鹿(シカ)なり。問ひたまはく、何処(いつこ)の鹿(シカ)そ」(出典:日本書紀(720)仁徳三八年七月(前田本訓))
  3. ( 揚代が一六匁のとき、四四十六の「四四」を「しし(鹿)」にこじつけ、「鹿恋(かこい)」の字を当てることがあるところから ) 上方で太夫・天神につぐ遊女の階級、「囲(かこい)」の異称。
    1. [初出の実例]「我を見しらぬ鹿(シカ)にこがれ」(出典:浮世草子・好色二代男(1684)五)
  4. 独活(うど)の生長して葉の伸び出たもの。鹿がこれを食うと角が落ちると俗にいう。
    1. [初出の実例]「なをつまば、さはにねぜりや、みねにいたどり、しかのたちかくれ」(出典:歌謡・閑吟集(1518))

鹿の語誌

( 1 )古代からの食用狩猟獣で、猪と共に肉を意味する「しし」の語で呼ばれた。猪と区別して「かのしし」と呼び、また「かせぎ」ともいう。これらに共通する「か」が、鹿を意味する基本的な語のようだが、「しか」と「か」の関係は明らかではない。
( 2 )上代文献からしばしば登場するが、特に和歌では秋の交尾期の牡の声が情趣あるものとされ、「万葉集」以来萩、紅葉等の景物とも組み合わされて多く詠まれた。鹿猟の一種「照射(ともし)」も平安後期以降、夏の景物として和歌の題材となった。なお、藤原氏の氏神である春日社が、神の使いとして尊重したことも、鹿と日本文化とを関係深いものとした。


か【鹿】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 鹿(しか)の古称。
    1. [初出の実例]「秋さらば今も見るごと妻恋ひに鹿(か)鳴かむ山そ高野原の上」(出典:万葉集(8C後)一・八四)
  3. 江戸時代、上方の遊女の階級の一つで、囲(かこい)の別称。
    1. [初出の実例]「昔より身躰に応じ、松(せう)(ばい)鹿(カ)の位を分かち、分際相応にそれぞれの役々の女郎に縁を結び」(出典:浮世草子・傾城禁短気(1711)一)

かせぎ【鹿】

  1. 〘 名詞 〙
  2. しか(鹿)」の古名。《 季語・秋 》
    1. [初出の実例]「越国白き鹿(カセキ)一頭(ひとつ)を献れり」(出典:日本書紀(720)推古六年一〇月(岩崎本訓))
    2. 「中秋〈略〉鹿 かせき・すがる鳴」(出典:俳諧・毛吹草(1638)二)
  3. 人形浄瑠璃社会の隠語
    1. (イ) シラミ。
    2. (ロ) イノシシ。

ろく【鹿】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 鹿(しか)をいう。〔色葉字類抄(1177‐81)〕
  3. 鹿・猪などの獣肉。古くは、獣肉を食べることを忌んだが、寒の内に限って、体を暖め血行をよくする薬として鹿や猪の肉を食べる風習があった。
    1. [初出の実例]「惣嫁同士貴様も鹿をくやったか」(出典:雑俳・類字折句集(1762))

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「鹿」の読み・字形・画数・意味

鹿
常用漢字 11画

[字音] ロク
[字訓] しか

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 象形
鹿の形。〔説文〕十上に「獸なり。頭角四足の形に象る。鳥鹿の足は相ひ比す。比に從ふ」(段注本)とするが、比は鹿足の形で、相比する意ではない。卜文に鹿頭刻辞があり、また彝器(いき)に鹿頭・鹿文を文様として用いるものがある。〔詩、大雅、霊台〕は周の神都辟雍(へきよう)のさまを歌うものであるが、神鹿の遊ぶことが歌われている。祿(禄)・麓(ろく)と音が通じ、その意にも用いる。

[訓義]
1. しか。
2. 帝位にたとえる。
3. 禄と通じ、さいわい。
4. 麓と通じ、ふもと。

[古辞書の訓]
和名抄〕鹿 賀(か)〔名義抄〕鹿 カ 〔字鏡集〕鹿 カセキ・モロ・カノシシ・サル・サイハヒ・シカ・カ

[部首]
〔説文〕に)・麒・麋(び)・(きん)・麗・(ゆう)など二十五字、重文六を属し、〔玉〕になお二十五字を加える。

[声系]
〔説文〕に鹿声として・麓・漉など四字を収める。・麓・漉はまたみな(ろく)声の字にも作り、鹿・の声が通じる。これらの字に、鹿の義に用いるものがない。

[語系]
鹿・祿lokは同声。「鹿を逐う」とは、もと天禄を追い争う意であろう。

[熟語]
鹿園鹿苑・鹿角鹿戯・鹿裘・鹿巾鹿沙鹿柴・鹿寨・鹿砦・鹿・鹿車・鹿・鹿場・鹿中・鹿馬・鹿皮・鹿尾・鹿布・鹿鳴・鹿櫨・鹿盧・鹿鹿
[下接語]
鹿・鹿・群鹿・麑鹿・山鹿・失鹿・馴鹿・神鹿・逐鹿・馬鹿・白鹿・伴鹿・麋鹿・伏鹿・奔鹿・野鹿・遊鹿・鹿・老鹿

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

動植物名よみかた辞典 普及版 「鹿」の解説

鹿 (シカ・カセギ)

動物。哺乳類

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の鹿の言及

【シカ(鹿)】より

…中国では絶滅に近づいているが,ヨーロッパなどに野生化したものは増えつつある。【今泉 忠明】
【鹿と人間】

[日本]
 鹿は日本列島には古くから多数生息したらしく,縄文時代の遺跡から,食用にした痕跡として骨や角が多く出土するほか,道具として加工されたものも少なくない。毛皮は衣服用となったと推察され,近世に至るまで山仕事,狩りに際していばらや切株から下半身を保護する袴として使用された。…

※「鹿」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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