(読み)あおい

精選版 日本国語大辞典 「葵」の意味・読み・例文・類語

あおい あふひ【葵】

[1] 〘名〙
② 「ふゆあおい(冬葵)」の古名。平安初期に、種子食用薬用とするために栽培した。
万葉(8C後)一六・三八三四「梨棗(なしなつめ)(きみ)に粟嗣ぎ延(は)ふ田葛(くず)の後も逢はむと葵(あふひ)花咲く」
③ 植物「ふたばあおい(二葉葵)」の俗称。平安時代から賀茂神社の葵祭の神事に用いられ、また、徳川家の家紋ともなっている。
※後撰(951‐953頃)夏・一六一「ゆきかへるやそうぢ人の玉かづらかけてぞたのむ葵てふ名を〈よみ人しらず〉」
④ 植物「たちあおい(立葵)」の俗称。近世から盛んに栽培され、現在「あおい」といえば、観賞用のこの植物をさす。《季・夏》〔文明本節用集(室町中)〕
⑤ 植物「かんあおい(寒葵)」の俗称。
⑥ 植物「てんじくあおい(天竺葵)」の俗称。
⑦ 襲(かさね)の色目の名。表は薄青、裏は薄紫。陰暦四月に着用する。〔桃花蘂葉(1480)〕
⑧ 葵の葉を図案化した模様。
※能因本枕(10C終)三〇二「もんは、あふひ、かたばみ」
⑨ (「青いもの」の略か) 蕎麦(そば)をいう女房詞
※大上臈御名之事(16C前か)「そば、あをい」
⑩ 紋所の名。
(イ) フタバアオイの葉を図案化したもの。賀茂神社の神紋に由来し、種々変形がある。
武徳大成記(1686)二四(古事類苑・姓名七)「家伝の葵の紋を用て、某に相応也と奏せらる」
(ロ) 徳川家の紋所の葵巴(あおいどもえ)。転じて江戸幕府。
随筆槐記‐享保九年(1724)九月七日「春の御儀式、節会等の事すめば、早葵の御神事の事に付て、人の尋来らんほどの事は、例を引て返答せんと思て」
⑫ 金銭をいう、遊女のことば。
※随筆・武野俗談(1757)六「葵とは、ぜにの事」
[2]
[一] 「源氏物語」の第九帖の名。光源氏二二歳から二三歳まで。源氏の正妻葵上(あおいのうえ)は、嫉妬に狂う源氏の愛人六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)の生霊(いきりょう)にとりつかれて、夕霧を産んだのち命を落とす。謡曲浄瑠璃題材とされる。
[二] 静岡市の行政区の一つ。静岡城・県庁のある中心市街地から大井川の源流域までを占める。平成一七年(二〇〇五)成立。

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デジタル大辞泉 「葵」の意味・読み・例文・類語

あおい〔あふひ〕【×葵】



㋐アオイ科のフヨウ属・トロロアオイ属などに含まれる植物の総称。タチアオイモミジアオイトロロアオイゼニアオイフユアオイなど。 夏》
㋑アオイ科の双子葉植物の総称。温帯から熱帯にかけて分布し、230属4300種ほどある。フヨウムクゲなど。
フユアオイの別名。
㋓ウマノスズクサ科のフタバアオイのこと。
紋所の名。フタバアオイを図案化したもので、種類が多い。
《徳川氏の紋が「葵巴あおいどもえ」であったところから》江戸幕府の象徴。
かさねの色目の名。表は薄青、裏は薄紫。陰暦4月に用いた。
蕎麦そばをいう女房詞
源氏物語第9巻の巻名。光源氏21歳から22歳。葵の上六条御息所みやすどころとの車争い夕霧の誕生、御息所の生き霊にとりつかれた葵の上の急逝、源氏と紫の上との結婚を描く。

き【葵】[漢字項目]

人名用漢字] [音]キ(漢) [訓]あおい
〈キ〉植物の名。アオイ。「紅蜀葵こうしょっき
〈あおい〉「立葵天竺葵てんじくあおい二葉葵ふたばあおい
[名のり]まもる
[難読]向日葵ひまわり蒲葵びろう山葵わさび

あおい〔あふひ〕【葵】

静岡市の区名。駿府公園(駿府城)周辺の官公庁街から、南アルプス大井川源流部まで、同市の大半を占める。

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動植物名よみかた辞典 普及版 「葵」の解説

葵 (アオイ)

植物。ウマノスズクサ科の多年草,園芸植物,薬用植物。フタバアオイの別称

葵 (アオイ・マキグサ)

植物。アオイ科の越年草,園芸植物,薬用植物。タチアオイの別称

葵 (アオイ)

植物。アオイ科の多年草,薬用植物。フユアオイの別称

葵 (アオイ)

植物。銭葵の別称

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