頼む(読み)タノム

デジタル大辞泉 「頼む」の意味・読み・例文・類語

たの・む【頼む/×恃む/×憑む】

[動マ五(四)]
相手に、こちらが希望するようにしてくれることを伝えて願う。依頼する。「用事を―・む」「口外しないよう―・む」「代筆を―・む」
たよりになるものとしてあてにする。力としてたよる。「大黒柱と―・む人」「数を―・んで強行する」
用事や処置を他にゆだねる。まかせて、すっかりしてもらう。「子供を―・んで夫婦で出かける」「あとを―・む」
何かをしてもらうために呼ぶ。また、注文する。「医者を―・む」「タクシーを―・む」「出前を―・む」
他家に行って案内を請う。「たのみましょう」「たのもう」などの形で、感動詞的に用いる。
「『―・む』と案内を乞う」〈漱石草枕
信用する。信頼する。
東人あづまうどこそ言ひつることは―・まるれ」〈徒然・一四一〉
[可能]たのめる
[動マ下二]頼りに思わせる。あてにさせる。
「待つ人はさはりありて、―・めぬ人は来たり」〈徒然・一八九〉
[類語](1請う求める願う仰ぐ依頼する要請する懇請する懇望する懇願する請託するお願いする要求要望請求注文迫る所望ちょうする催告せがむせびるねだる強要強請ゆすり請い求めリクエストアンコール/(3託するしょくするゆだねる任せる預ける委託する依託する委嘱する依嘱する嘱託する・やってもらう/(4言い付ける注文する発注するオーダーする用命予約申し込み特注別誂え外注受注

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「頼む」の意味・読み・例文・類語

たの・む【頼・恃・憑】

  1. [ 1 ] 〘 他動詞 マ行五(四) 〙
    1. たよりにする。あてにする。また、信頼する。信用する。
      1. [初出の実例]「駿河の海磯辺(おしへ)に生ふる浜つづら汝(いまし)を多能美(タノミ)母に違(たが)ひぬ」(出典万葉集(8C後)一四・三三五九)
      2. 「船に乗りては、楫取(かぢとり)の申す事をこそ、高き山とたのめ」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
    2. 信仰する。帰依(きえ)する。
      1. [初出の実例]「住吉の神をたのみはじめたてまつりて」(出典:源氏物語(1001‐14頃)明石)
    3. たよるものとして身をゆだねる。主人としてたよる。
      1. [初出の実例]「たのむ人の喜びのほどを心もとなく待ち歎かるるに」(出典:更級日記(1059頃))
    4. 他にゆだねる。依頼する。委託する。
      1. [初出の実例]「かかる事の侍るを、こなたに寄らせ給へとたのみ聞ゆる」(出典:堤中納言物語(11C中‐13C頃)逢坂越えぬ権中納言)
    5. 特に懇願する。願う。
      1. [初出の実例]「白玉さん、頼みやんすにえ」(出典:歌舞伎・助六廓夜桜(1779))
    6. よその家を訪問した時、案内を請(こ)うことば。「頼みましょう」が一般に用いられたが、武士などは、「たのもう」の形で用いることが多く、感動詞的な用法
      1. [初出の実例]「物申。頼ませう。爰許(ここもと)では無いさうな。もそっとおくへ持て参う」(出典:虎寛本狂言・餠酒(室町末‐近世初))
      2. 「『たのみませふ』と表に子細らしき声(こは)つき」(出典:浮世草子・傾城禁短気(1711)四)
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 マ行下二段活用 〙 頼みに思わせる。あてにさせる。
    1. [初出の実例]「遠江(とほつあふみ)引佐(いなさ)細江澪標(みをつくし)(あれ)を多能米(タノメ)て浅ましものを」(出典:万葉集(8C後)一四・三四二九)

頼むの語誌

( [ 一 ]について ) ( 1 )上代・中古においては、「人ヲ頼む」の形をとって、「信頼し、我が身を託す・期待する」といった意味で用いられることが主であり、「依頼する」の意で用いられた可能性のある用例は、極めてまれである。
( 2 )中世になると、ヲ格にくる名詞が、「人」から「事柄」へと徐々に交替していき、「依頼する」という意が一般的になってきたと考えられる。
( 3 )中世には、「人ヲ頼む」という用法も残しており、「あなたを信頼します」ということで、上向きの丁寧な依頼を行なうために用いられた。その後、江戸中期以降、「頼りにする」の意が失われていくにつれ、「丁寧な依頼」としての用法は、「お頼み申します」のような定型化した挨拶表現にのみ残り、代わって、「願う」が用いられるようになっていった。( [ 二 ]について ) [ 一 ]の使役表現として派生したもので、男が女に約束する例が多い。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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