騒ぐ(読み)サワグ

デジタル大辞泉 「騒ぐ」の意味・読み・例文・類語

さわ・ぐ【騒ぐ】

[動ガ五(四)]《上代は「さわく」》

㋐やかましい声や音を立てる。「子供が―・ぐ」
㋑ざわざわと音を立てる。「白波が―・ぐ」
多くの人が一緒になって反対したり、要求不平を訴えて叫んだりして、不穏な事態が起きる。騒動になる。「判定をめぐって観衆が―・ぐ」
酒宴などでにぎやかに遊ぶ。「芸者をあげて―・ぐ」
落ち着きを失って冷静さに欠けた言動をみせる。あわてる。うろたえる。「今さら―・いでもどうしようもない」
不安や驚きなどのため気持ちが高ぶったり乱れたりする。「なんとなく胸が―・ぐ」「血が―・ぐ」
(多く「さわがれる」の形で)人々がさかんにもてはやす。評判にする。「環境問題が―・がれる」「マスコミが―・ぐ」「アイドルとして―・がれた俳優
忙しく立ち働く。
「そを取ると―・く御民も家忘れ」〈・五〇〉
[可能]さわげる
[類語](1がやがやわいわいわあわあきゃあきゃあぎゃあぎゃあざわざわはしゃぐぞめわめざわめくざわつくさざめくさんざめくざわざわするどよめく叫ぶ怒鳴る張り上げる喚き散らす喚き立てるがなるがなり立てる/(4慌てるうろたえる取り乱す狼狽ろうばいするじたばたする立ち騒ぐ騒ぎ立てるまごつく面食らう周章周章狼狽慌てふためく右往左往度を失う泡を食う一泡吹かせるあたふた

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「騒ぐ」の意味・読み・例文・類語

さわ・ぐ【騒】

  1. 〘 自動詞 ガ五(四) 〙 ( 上代は「さわく」 )
    1. (イ) やかましい声や音をたてる。ざわめく。
      1. [初出の実例]「み吉野の象(きさ)山の際(ま)の木末(こぬれ)にはここだも散和口(サワク)鳥の声かも」(出典:万葉集(8C後)六・九二四)
      2. 「松たてる森の木葉を吹風に〈紹永〉 さはくからすぞちりちりに行〈専順〉」(出典:美濃千句(1472)六)
    2. (ロ) やかましい音や声をたてて動きまわる。騒々しくする。
      1. [初出の実例]「時に麋鹿(おほしか)・猨(さる)・猪(ゐ)、莫莫紛紛(ありのまかひ)に、山谷に盈てり。焱(ほのも)ごと起(た)ち蠅(はへ)のごと散(サハク)」(出典:日本書紀(720)允恭一四年九月(図書寮本訓))
      2. 「俄に騒(サワ)ぐ幕の内。かけ出る義岑に、取付き縋る台(うてな)も倶に」(出典:浄瑠璃神霊矢口渡(1770)一)
    3. (ハ) 風、波、草木などがざわざわと音をたてて動く。
      1. [初出の実例]「浜清く 白波左和伎(サワキ)」(出典:万葉集(8C後)一九・四一八七)
      2. 「君が世の千年の松の深みどりさはがぬみづに影はみえつつ〈藤原長能〉」(出典:新勅撰和歌集(1235)賀・四五〇)
  2. 忙しく動きまわる。忙しく立ち働く。奔走する。
    1. [初出の実例]「もののふの 八十(やそ)宇治河に 玉藻なす 浮かべ流せれ 其を取ると 散和久(サワク)御民も 家忘れ」(出典:万葉集(8C後)一・五〇)
    2. 「食物など持運び騒(さわぎ)ける交(まぎ)れに」(出典:今昔物語集(1120頃か)二五)
  3. 多くの人々が不平不満などを訴えて事が起きる。騒動が起きる。
    1. [初出の実例]「東(あつま)の夷(えみし)(さは)に叛(そむ)きて、辺境(ほとり)(サハキ)(とよ)む」(出典:日本書紀(720)景行四〇年六月(北野本南北朝期訓))
  4. やかましく苦情を言う。うるさく不平を言う。
    1. [初出の実例]「宮はそのころまかで給ぬればれいのひまもやとうかがひありき給をことにて、おほいとのにはさはがれ給」(出典:源氏物語(1001‐14頃)紅葉賀)
  5. 驚きおそれて混乱する。あわてふためく。うろたえる。
    1. [初出の実例]「近江の朝(みかと)、大皇弟(ひつきのみこ)東国に入りたまふことを聞きて、其の群臣、悉に愕(おとろ)きて、京(みさと)の内、震動(サワ)く」(出典:日本書紀(720)天武元年六月(北野本訓))
  6. 心が動揺する。不安、驚きなどで気持が乱れる。落ち着かない。また、思い悩む。
    1. [初出の実例]「心動(サワキ)て摂めがたし」(出典:大智度論天安二年点(858)六九)
  7. ある事柄や人のことを多くの人々があれこれ言う。評判する。あれこれと噂する。また、人々がもてはやす。
    1. [初出の実例]「いと久しうありて、このさはがれし女の兄(せうと)どもなどなむ、人のわざしに山に登りたりける」(出典:大和物語(947‐957頃)一六八)
  8. 酒宴などで、にぎやかに遊ぶ。歌舞音曲ではやしたてる。うかれ興ずる。
    1. [初出の実例]「おもひ切たる色あそびして、世を心のままにさはくべしと」(出典:浮世草子・好色盛衰記(1688)三)

騒ぐの語誌

( 1 )(イ)挙例「万葉集‐九二四」の表記に見られるように、上代では第三音節は清音であった。しかし、「名義抄」には「周章 サハク(平平上濁)」〔観智院本〕、「躁動(略)サワク(平平上濁)」〔図書寮本〕とあり、平安時代中期には第三音節が濁音化していたと思われる。
( 2 )擬声語「さわ」の動詞化した語で、上代語では単独の「さわ」の用例はないが、「古事記」や「日本書紀」に「さわさわ」の語形で見られる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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