アダムズ(読み)あだむず(英語表記)Richard Adams

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

アダムズ(Richard Adams)
あだむず
Richard Adams
(1920―2016)

イギリスの作家。バークシャー南西部の都市ニューベリーに生まれ、オックスフォード大学のウスター・カレッジで修士の学位を取得した。第二次世界大戦に従軍し、戦後は25年以上にわたって公務員を務めた。最初の作品『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』(1972)がすぐれた児童文学作品として高い評価を受け、カーネギー賞とガーディアン賞を受賞し、1978年にはアニメ映画化された。これは、一族全滅の危機を予感した1羽の若い兎(うさぎ)の予知能力を信じた少数の兎たちが、群れを離れて安住の地にたどりつくまでの、冒険に満ちた遍歴の旅の物語である。キップリングやウォルター・デ・ラ・メアの諸作から強い影響を受けたこの動物擬人化ファンタジーは、兎たちの社会を綿密かつ適確に描き、迫真性のある冒険の連続によって現代人の「生き方」を考察している。
 アダムズは、巨大な熊の出現によって、熊を神とする信仰をもつ種族が、既存の豊かな文化を破壊して新しい支配体制をつくるが、結局は人間性のある文化が復活する長編小説『シャーディック』(1974)で、前作同様に叙事詩的なファンタジーを展開し、その特徴は『疫病犬と呼ばれて』(1977)にも引き継がれている。しかし、この作品の舞台となっている時代は20世紀で、動物実験用の疫病犬が逃げ出し、それが巻き起こす人間社会のさまざまな反応を語っている。これらの作品は、テーマが一見明瞭なために、寓意(ぐうい)の文学を思わせるが、人間についての深い洞察が、多くの問題を読者に投げかける。
 大人の小説『ブランコの少女』(1980)や、イングランドの自然を美しい文と精密な絵によって紹介している『四季の自然』(1975)、『昼と夜の自然』(1978)なども翻訳されている。[神宮輝夫]
『中村妙子訳『疫病犬と呼ばれて』上下(1979・評論社) ▽神宮輝夫訳『シャーディック』上下(1980、1982・評論社) ▽井辻朱美訳『コルサンの岩山』(1982・新書館) ▽井辻朱美訳『鉄のオオカミ』(1982・新書館) ▽神宮輝夫訳『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』上下、新装版(1989・評論社) ▽百々佑利子訳『ブランコの少女』上下(1989・評論社) ▽デイヴィッド・A・ゴダード絵、リチャード・アダムズ著、岡部牧夫訳『四季の自然』(1978・評論社) ▽デイヴィッド・A・ゴダード絵、リチャード・アダムズ著、岡部牧夫訳『昼と夜の自然』(1980・評論社) ▽アラン・オルドリッジ絵、リチャード・アダムズ著、田中未知訳『女王陛下の船乗り猫』(1986・角川書店) ▽エドワード・ブリッシェン編、神宮輝夫訳『とげのあるパラダイス』(1982・偕成社) ▽三宅興子著『イギリス児童文学論』(1993・翰林書房)』

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