[1] 〘名〙
① 全体が一つのものになっていること。一つにまとまっていて、分離できないもの。
(イ) 一つの身体。同じからだ。同一体。
※俳諧・奥の
細道(1693‐94頃)室の
八島「此神は木の花さくや姫の神と申て、富士一躰也」
※栄花(1028‐92頃)玉のうてな「
衆生の三道、
彌陀の万徳と、もとより空寂にして、一体無礙
(むげ)なりといひき」
※東寺百合文書‐へ・文保元年(1317)七月晦日・僧定縁起請文「彼母与件狼藉人一躰同心之間」 〔
儀礼‐喪服子夏伝〕
② (「体」は
助数詞) 仏像、彫刻の像などの一つ。仏や神そのものにも用いる。
※百座法談(1110)六月一九日「日ごとに阿彌陀仏一躰を供養せさせ給ふ」
※言塵集(1406)一「詞花集は〈略〉あまり一躰ばかりにをもむけられたる故にや」
※集義和書(1676頃)一「伊川の
器量・朱子の志、みな聖人の一体あり」
④ (「に」を伴って副詞のように用いられることもある) 全体。全般。一般。おしなべて。
※半残宛芭蕉書簡‐貞享二年(1685)正月二八日「夜話四睡、是又珍抄、一躰おとなしく候」
※
雪中梅(1886)〈
末広鉄腸〉下「どうも
近来は新聞紙が一体に面白くないでは御座いませんか」
[2] 〘副〙 ((一)④の意から) ある
事柄を全般的、概括的に考えていうときに用いる。そもそも。
(イ) ある結論づけをするような場合。だいたい。もともと。一般的にいって。
※芋粥(1916)〈
芥川龍之介〉「一体
(イッタイ)旧記の著者などと云ふ者は、平凡な人間や話に、余り興味を持たなかったらしい」
(ロ) 特に疑問の気持を強めていう場合。また、相手に詰問する場合。結論的になんだか全くわからないという気持が含まれる。ぜんたい。いったいぜんたい。
※雑俳・机の塵(1843)「鳥羽画の如し・いったい飯はどこへ喰ふ」