夥しい(読み)オビタダシイ

デジタル大辞泉 「夥しい」の意味・読み・例文・類語

おびただし・い【×夥しい】

[形][文]おびただ・し[シク]《近世中期まで「おびたたし」》
数や量が非常に多い。ものすごい。「―・い人出
(「…することおびただしい」の形で)程度がはなはだしい。ひどい。激しい。多く悪い意味に使う。「だらしのないこと―・い」
非常に盛んである。
乱声らんじゃう鼓、物の、ひとたびに打ち吹き、弾き合はせたり。―・しくめでたし」〈宇津保・吹上下〉
[派生]おびただしげ[形動]おびただしさ[名]
[類語]甚だしいいっぱいたくさん多い多く数数かずかず多数数多すうた無数多量大量大勢おおぜいあまた多多いくらもいくらでもざらにごろごろどっさりたっぷり十二分に豊富にふんだんに腐るほどごまんとわんさとしこたまたんまりうんとたんと仰山ぎょうさんなみなみ十分しっかりがっつり大挙多勢多人数大人数衆人莫大膨大巨万豊か潤沢無尽蔵山ほど盛り沢山がっぽりがっぽがっぽ多め幾多過多最多多作多め数知れない数知れぬ数え切れない十指に余る枚挙にいとまがない掃いて捨てるほど

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「夥しい」の意味・読み・例文・類語

おびただし・い【夥】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙
    [ 文語形 ]おびたた〘 形容詞シク活用 〙 程度、数量が度をこえてはなはだしいさまを表わす。
  2. [ 一 ] 物事の程度がはなはだしい。ものすごい。
    1. 非常に盛んである。にぎやかに繁昌している。立派である。
      1. [初出の実例]「乱声(らんじゃう)・鼓・物のね一度(ひとたび)うち吹き、弾き合はせたり。をびたたしくめでたし」(出典:宇津保物語(970‐999頃)吹上下)
      2. 「あまたに売りえて、おびたたしき徳人になりぬれば」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)一三)
    2. (建物などの)規模が大きい。たいへん大がかりで、ものものしい。
      1. [初出の実例]「あまりに内裏のおびたたしきを見て、秦舞陽(しんぷやう)わなわなとふるひければ」(出典:平家物語(13C前)五)
    3. 物音や声が激しい。騒がしい。にぎやかだ。
      1. [初出の実例]「はと一度に笑ひし声こそ、いとおびたたしかりしか」(出典:大鏡(12C前)四)
      2. 「俄(にはか)に児(ちご)の愕(おび)たたしく泣けるに」(出典:今昔物語集(1120頃か)二七)
    4. 勢いが激しくて、恐ろしいほどである。
      1. [初出の実例]「あなおそろしの鎮西の八郎殿の弓勢(ゆんぜい)や〈略〉いかなる鎧(よろひ)を着て此の門へはむかひ候はむずるぞ。あなおびたたし」(出典:金刀比羅本保元(1220頃か)中)
    5. (一般に)程度が普通でない。(病気苦痛などの程度が)ひどい。
      1. [初出の実例]「其の苦痛夥しく見えき」(出典:栂尾明恵上人伝記(1232‐50頃)上)
    6. 大げさすぎる。はなはだしすぎてよくない。
      1. [初出の実例]「あさり護摩(ごま)こそおびたたしく侍(さぶ)らへ」(出典:讚岐典侍(1108頃)上)
  3. [ 二 ] 数量が非常に多い。
    1. [初出の実例]「奈良の大衆おびたたしく蜂起す」(出典:平家物語(13C前)五)

夥しいの派生語

おびただし‐げ
  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙

夥しいの派生語

おびただし‐さ
  1. 〘 名詞 〙

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

今日のキーワード

世界の電気自動車市場

米テスラと低価格EVでシェアを広げる中国大手、比亜迪(BYD)が激しいトップ争いを繰り広げている。英調査会社グローバルデータによると、2023年の世界販売台数は約978万7千台。ガソリン車などを含む...

世界の電気自動車市場の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android