折角(読み)せっかく

精選版 日本国語大辞典「折角」の解説

せっ‐かく【折角】

[1] 〘名〙
① 角(つの)を折ること。〔易林‐坤卦・豊〕
② 物のかどを折ること。
③ プリズムなどにより光の角度を変えること。
※米欧回覧実記(1877)〈久米邦武〉一「三稜の玻瓈鏡にて、日光の折角により、七色の彩暈をなすことなどを示せり」
④ (昔、中国で、朱雲が五鹿の人充宗と易を論じて勝ち、時の人が評して、朱雲の強力、よく鹿の角を折ったとしゃれたという「漢書‐朱雲伝」に見える故事から) 高慢の鼻をへし折ること。慢心を打ちくだくこと。
※三代実録‐仁和二年(886)五月二八日「天皇喚両人。令経義。氏主執礼。種継挙伝。難撃往復。遂無折角」 〔周邦彦‐汴都賦〕
⑤ 力を尽くすこと。骨を折ること。
※保元(1220頃か)上「九国の者どもしたがへに付て、大小の合戦数をしらず。中にも折角の合戦、廿余ケ度なり」
⑥ (形動) 困難、難儀にあうさま。また、その困難、難儀。
※古文真宝笑雲抄(1525)一〇「これみな孔子の節角に逢れたことども也」
⑦ 大事なこと。気をつけなければならないこと。
※風姿花伝(1400‐02頃)七「三日の中に、殊にせっかくの日と覚しからん時」
[2] 〘副〙
① (後漢の郭泰が外出中に雨にあい、頭巾のかどが折れてしまったが、郭泰は人々に慕われていた人気の高い人物だったので、みながわざわざ頭のかどを折ってそのまねをした、という「後漢書‐郭泰伝」に見える故事から) 努力して動作をするさまを表わす語。苦心して。骨を折って。つとめて。わざわざ。とりわけ。
※実隆公記‐享祿四年(1531)閏五月二三~二八日紙背(宗碩書状)「無興の様候間、いかやうにもと折角養性仕候」
② その動作の結果生じた状態をのがすのは惜しいという話者の気持を表わす語。
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)前「折角(セッカク)内に仕事をして居る者をば、釣出しに来てなりません」
③ (「せっかくの」の形で、体言を修飾して) それが十分な効果を発揮しなくては惜しいという気持を表わす語。
※歌舞伎・お染久松色読販(1813)序幕「折角のお心ざしだ、お貰ひ申て置ませうかへ」
④ 十分に気をつけるよう望む気持を表わす語。
※咄本・当世手打笑(1681)二「御はれ物平愈(へいゆう)なされ候哉。せっかく快気をえらるべく候」

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デジタル大辞泉「折角」の解説

せっ‐かく【折角】

[副]
いろいろの困難を排して事をするさま。無理をして。苦労して。わざわざ。「折角来てくれたんだから、ゆっくりしていきなさい」「折角のみやげを汽車の中に置き忘れた」
(「折角の」の形で、体言に続けて)滅多に得られない、恵まれた状況を大切に思う気持ちを表す。「折角の休日だから、どこにも出かけたくない」「折角の好機を逃がしてしまった」
全力を傾けて事をするさま。つとめて。せいぜい。手紙文などで用いる。「先生のお言葉を忘れずに、折角勉学に励む覚悟です」
[名]
《朱雲が五鹿に住む充宗と易を論じて勝ち、時の人が朱雲よく鹿の角を折ると評したという「漢書」朱雲伝の故事から》骨を折ること。力を尽くすこと。
「大小の合戦数を知らず。中にも―の合戦二十余か度なり」〈古活字本保元・上〉
困難や難儀。
「難儀―に遭ふ」〈日葡
[用法]せっかく・わざわざ――「せっかく(わざわざ)おいでいただいたのに、留守をして申し訳ありません」のように相通じて用いられる。◇「せっかく」には「せっかくの好を無駄にする」「せっかくだが断る」のような名詞的用法もある。また、ある行為が行われたのに期待した結果の得られないことを惜しむ気持ちを表して、「せっかく努力したのに不合格だった」「せっかく用意したのだから、食べていけばよいのに」などと使う。ほかに「せっかくご努力願いたい」のような、やや古い言い方がある。◇「わざわざ」は「わざわざ迎えに行く」「わざわざ持って来る」など、ついでではなく、そのことだけのために動作を行う意を表す。

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故事成語を知る辞典「折角」の解説

折角

もともとは、意味のないことをわざわざすることのたとえ。転じて、わざわざしたのにむだになってしまいそうなことをいう。

[使用例] 折角久しぶりに逢ったんだから、一ぱいやって行かないか。僕の方は今日は夕方はあいているんだ[円地文子食卓のない家|1979]

[由来] 「後漢書かくたい伝」に見える逸話から。二世紀の中国、後漢王朝の時代。郭泰という学者は、人々からとても慕われていました。あるとき、彼は、旅の途中で雨に降られて、かぶっていた頭巾の角が一つ、つぶれてしまいました。すると、人々はわざわざ意味もなく「巾の一角を折り」、郭泰のまねをしては喜んだ、ということです。

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