籠(かご)(読み)かご

日本大百科全書(ニッポニカ) 「籠(かご)」の意味・わかりやすい解説

籠(かご)
かご

タケトウアケビヤナギフジイタヤシナノキ針金、合成樹脂などを材料としてつくる、編み目のある容器のこと。これに類するものとして「ざる」がある。ざるは目がつんだもので、米あげざる、食器あげざるのように水切りなどに用いることが多い。その形も一般的には籠と比べ小形である。

 わが国にみられる籠製品は、縄文弥生(やよい)時代の出土例があり、正倉院にも精巧な伝世品がある。

 籠として日本では古くから竹製のものが広く用いられ、種類としてはマダケ、モウソウダケ、ハチクメダケなどがみられる。タケが材料としてよく使用されるのは、生育が早く、しかも身近に豊富にあり、弾力性に富み、美しく、狂いが少なく、細工しやすいためである。竹材の豊富な日本は、籠をはじめとする竹製品の多い国である。

 竹籠を製作するには、まず縦割りした竹を準備しなければならない。それに鉈(なた)を当て小割りする。その小割りした竹を鉈で皮竹と実竹に分ける。竹の厚さによって何枚にも分けるが、つねに2等分させながら作業を行う(竹へぎという)。この工程ではとりわけ節(ふし)をこすのに技術を要する。そのあと、底編み、腰立て、胴編み、縁仕上げを行う。底編み、胴編みの編み方には四つ目編み、六つ目編み、網代(あじろ)編み、ざる目編みなどがみられる。腰立てでは、底編みした竹を曲げながら立ち上がらせる。次の胴編みでは、腰立てした立竹をそのまま底編みと同じように編む場合と、別に用意した割り竹を横回しにして編むことがある。縁仕上げには胴編みした立竹でまとめる場合(共縁仕上げ)と、別に用意した内外2枚の縁竹をつける場合(当て縁仕上げ)がある。後者の仕上げには、野田口仕上げ、巻口仕上げ、蛇腹巻仕上げなどがみられる。

 籠は用途によって種々のものがある。その大部分は日常生活のなかで使われてきた。食生活のなかでは夏に用いられる飯の腐敗を防ぐ飯籠、魚を入れる魚籠、弁当箱などがみられる。住生活では、衣類を収納するつづら、ぼてこ、挟箱(はさみばこ)がみられ、これらは籠の表面に紙を貼(は)り柿渋(かきしぶ)や漆を塗ったもので、嫁入り道具の一つとなっていた。また火鉢に炭を入れるための炭斗(すみとり)もある。

 生業用具としても籠は用いられる。農耕用として田畑の刈り取った草を入れる草刈り籠、種籾(たねもみ)を入れ田畑に播(ま)く際に使用する種籠、苗代から田に苗を運ぶ苗運び籠などがある。茶業用として釜(かま)で茶を蒸すのに用いる茶蒸し籠(ざる)、漁労用として、川につけて魚を入れ込む仕掛けのモドリ、投網(とあみ)を入れる投網籠、延縄(はえなわ)を1本ずつもつれないように入れる縄籠、魚を入れる魚籃(びく)、養蚕用として、桑葉を入れる桑摘み籠、収穫した繭を入れる繭籠、畜産用として、田畑で使う牛の口にはめる口籠、ニワトリを庭に集めておくための伏せ籠、染織用として績(う)んだ藤(ふじ)、麻などを入れるのに用いる籠に紙を貼ったオゴケ(オボケ)などがある。運輸、交易具としては、草などを運ぶ背負い籠、天秤棒(てんびんぼう)の前後につける皿籠、腰にさげる腰付け籠、青果物を入れる青物籠、手紙・書類を入れる籠に紙を貼り漆や柿渋を塗った文箱(ふばこ)・書類入れ、防火の際に水を運ぶ紙バケツなどがある。以上のような籠類のうち簡単なものは農閑期に各家でつくられることもあるが、多くは専門の竹細工職人によって製作されてきた。職人には店を構えるものと、土地土地を回って製作するものがある。昨今、家庭用品をはじめとして廉価な工業製品にとってかわられ、竹籠をつくる職人は年々減少しつつある。

 籠は生活用具のほかに、美術工芸品として愛好されることもある。とりわけ茶の湯の方面では、花入れ、茶箱、炭斗などにみられ、各時代の茶人の好んだ型、編み方が伝えられている。今日、工芸部門をもつ美術展では籠製品が陳列されている。さまざまのくふうされた複雑な編み目がみられ、また伝統的な型を出たオブジェも出品されている。

[芳井敬郎]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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