(読み)シキ

デジタル大辞泉 「識」の意味・読み・例文・類語

しき【識】[漢字項目]

[音]シキ(呉) シ(呉)(漢) [訓]しる しるす
学習漢字]5年
〈シキ〉
物事を区別して知る。見分ける。また、その心の働き・能力。「識者識別意識学識鑑識眼識見識常識知識認識良識
知り合い。「旧識相識面識
しるす。しるし。「識語標識
〈シ〉
しるす。しるし。「識語
金属や石に平面より高く刻んだ文字。陽文。「款識かんし
[名のり]さと・つね・のり

しき【識】

物事の道理を知ること。また、見識があること。「不識」
知り合っていること。見知っていること。面識。「一面のもない」
書き記すこと。また、その文字など。「著者
《〈梵〉vijñānaの訳》仏語。
五蘊ごうんの一。心作用を統括する心の働き。意識。
十二因縁の一。前世の所業を因として現在の母胎に生じる最初の一念。

し【識】[漢字項目]

しき

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精選版 日本国語大辞典 「識」の意味・読み・例文・類語

しき【識】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 物事の道理を知ること。道理を分別すること。また、見識をもっていること。
    1. [初出の実例]「山河大地等、これ有無にあらざれば、大小にあらず、得不得にあらず、識不識にあらず」(出典:正法眼蔵(1231‐53)身心学道)
    2. [その他の文献]〔顔延之‐五君詠詩〕
  3. 知り合っていること。面識があること。顔見知りであること。
    1. [初出の実例]「夫(か)の有名の『ハルベルト・スペンセル』とも曾て半面の識が有るが」(出典:浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉二)
    2. [その他の文献]〔春秋左伝‐襄公二九年〕
  4. 鐘や鼎(かなえ)などに、文字を陽刻すること。器物や書物などに、題字を書きしるすこと。また、その文字や題字。転じて、書の題簽(だいせん)をいう。〔史記‐封禅書〕
  5. ( [梵語] vijñāna の訳語。対象を識別、認識するもの ) 仏語。
    1. (イ) 十二因縁の一つ。前世の煩悩(ぼんのう)の所業を種因として生じ、現在の母胎に託する刹那の意識。五蘊(ごうん)からなるが、そのうち識が最もすぐれているところからいう。〔秘蔵宝鑰(830頃)〕
    2. (ロ) 六境に対する眼識・耳識・鼻識・舌識・身識・意識の六識、あるいは八識など精神作用の主体としての心をさす。〔勝鬘経義疏(611)〕

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普及版 字通 「識」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 19画

(旧字)
19画

[字音] シキ・ショク・シ
[字訓] しるす・しる・かんがえ

[説文解字]
[金文]

[字形] 形声
声符は(しよく)。は戈(ほこ)に呪飾を加えた形で、標識とする意がある。〔説文〕三上に「常なり」、また「一に曰く、知るなり」という。常は太常、織文のある旗の意で、いわゆる旗(きし)。は〔説文〕に説解を欠く字であるが、戈に赤い呪飾を加えるので、(織)などもに従う字である。標識の意から、知る、知識などの意となる。

[訓義]
1. しるし、しるしとする、しるす。
2. しる、わかる、さとる、おぼえる、みとめる。
3. かんがえ、知識、見識、ものしり。
4. しりあう、しりあい。
5. と通じ、はたじるし。
6. 銅器などの銘文、款識。識は陽文。
7. 字はまた志・誌に作る。

[古辞書の訓]
名義抄 サトル・シル・アツム・ココロ・タマシヒ・モノシル

[語系]
tjikは同声。thjikも声近く、は戈に赤い呪飾を加えた形。みな著明にする意がある。志・誌tjiも声近く、記識の意で通用する。

[熟語]
識域識閾・識遠・識会識鑒・識記・識局・識近・識具識遇識詣・識芸識見識検・識悟・識語・識才・識察識字識悉・識者・識熟・識神・識性・識想識測・識達・識断・識知・識治・識丁・識度識認・識破・識抜・識別・識命・識面・識略識慮・識量・識力・識文
[下接語]
意識・淵識・淹識・遠識・寡識・学識・款識・鑑識・含識・眼識・紀識・記識・旧識・強識・謹識・愚識・見識・才識・志識・小識・常識・心識・深識・図識・性識・誠識・絶識・先識・浅識・相識・多識・卓識・達識・知識・智識・通識・認識・博識・抜識・表識・標識・弁識・妙識・明識・面識・黙識・有識・良識・陋識

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「識」の意味・わかりやすい解説


しき

仏教用語。サンスクリット語でビジュニャーナvijñāna、パーリ語でビンニャーナviññāa。心(チッタcitta)、意(マナスmanas)と同義。ただし説一切有部(せついっさいうぶ)では現在の意識を識といい、一瞬間前に過ぎ去った意識を意という。識は、五蘊(ごうん)・十二処(じゅうにしょ)・十八界(じゅうはっかい)・五位七十五法などの存在の諸範疇(はんちゅう)のいずれにも含まれる基本的な精神的存在で、仏教の基本的概念の一つ。インドの哲学諸派の多くは不変不滅の実体としての自我(霊魂。アートマンātman)の存在を主張し、自我を認識と行為の主体、したがって行為の果報と輪廻(りんね)の享受者であるとする。仏教は自我の存在を否定する。仏教において認識・行為・輪廻の主体となるのは識であるが、これは不変不滅の実体ではなくて、各瞬間に生滅変化しながら一生の間一つの流れ(刹那滅相続(せつなめっそうぞく))として継続する意識である。有情(うじょう)(意識ある生き物)が解脱(げだつ)しない限り、その死に際して、識は次の世の識を生じて転生し、新たな有情の主体となる。認識作用としては、識は概念的認識を主とするが、もちろん諸種の知覚にも参与する。

[梶山雄一]

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百科事典マイペディア 「識」の意味・わかりやすい解説

識【しき】

仏教の術語。サンスクリットのビジュニャーナの漢訳。認識の主体および作用を意味する。眼(げん)・耳(に)・鼻・舌・身・意の六識があり,それぞれの色・声(しょう)・香・味・所触(しょそく)・法の六境(客体)を見・聞・嗅(きゅう)・味・触・知として認識する。初めの五識は外界の事物に対し,第六識は内面的認識である。大乗仏教では自我を意識する末那識(まなしき)と阿頼耶(あらや)識(第八識)を加える。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「識」の意味・わかりやすい解説


しき
vijñāna

仏教用語。外界の対象を識別し,認識する心の作用をいう。あるいは心を作用という面から名づけて識という。 (→ )

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【意識】より

…古代インドには,霊的,生命的なものを言い表す言葉の一つとして〈意manas〉(英語ではmindと訳される)という語があったし,また原始仏教では,現象界の分類(五蘊(ごうん)説)やその生成の説明(十二縁起説)に関して〈識vijñāna〉という語が用いられ,それによって了別の働きや個性化の原理が意味されていた。大乗仏教の時代には,十二縁起のうちの〈識〉によっていっさいを説明しようとする唯識思想(唯識説)が現れ,その中で,五官にかかわる五識を統一する第六識が〈意識〉と呼ばれていた。…

【ガウダパーダ】より

…彼に帰せられる《マーンドゥーキヤ・カーリカーMāṇḍūkya‐Kārikā》(別名《ガウダパーディーヤ・カーリカー》)には,覚醒時に経験する現象界は,夢で経験する世界と同じく虚妄であり,真実は不二advaitaであり,個我とアートマンは不異であると,不二一元論が初めて明らかに述べられている。後の章になるほど仏教的色彩が濃く,特に最終章では,世界は識vijñānaの顕現したものであると,仏教瑜伽行派の〈唯識無境〉〈識の転変〉説に酷似した説が見られる。《サーンキヤ・カーリカー》の注釈書《ガウダパーダ・バーシヤ》の著者は,同名異人と考えられる。…

【五蘊】より

…サンスクリットでは,パンチャ・スカンダpañca‐skandhaという。生命的存在である〈有情(うじよう)〉を構成する五つの要素すなわち,色(しき),受(じゆ),想(そう),行(ぎよう),識(しき)の五つをいう。このうち(ルーパrūpa)には,肉体を構成する五つの感覚器官(五根)と,それら感覚器官の五つの対象(五境)と,および行為の潜在的な残気(無表色(むひようしき))とが含まれる。…

【仏教】より

… 同じ内容を組織的に説いたのが,前述の〈四諦〉である(諦は真実,真理の意)。教理上の説明を加えると,(1)苦諦(くたい) 人生には生老病死の四苦のほか,愛(いと)しい人に別れ,怨み憎しみある者に出会い,求めるものは得られず,この身は無常な諸要素(五蘊(ごうん)――肉体(色)と感覚(受),表象(想),意思(行),認識(識)の諸心理作用)の集合にすぎない,という合計8種の苦悩がある。(2)集諦(じつたい) この苦を集め起こすもの,つまり苦の原因としては,煩悩と総称される心のけがれ(むさぼり,にくしみ,無知など)がある。…

※「識」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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