与える(読み)アタエル

デジタル大辞泉 「与える」の意味・読み・例文・類語

あた・える〔あたへる〕【与える】

[動ア下一][文]あた・ふ[ハ下二]
自分の所有物を他の人に渡して、その人の物とする。現在ではやや改まった言い方で、恩恵的な意味で目下の者に授ける場合に多く用いる。「子供におやつを―・える」「賞を―・える」
相手のためになるものを提供する。「援助を―・える」「注意を―・える」
ある人の判断で人に何かをさせる。
㋐相手に何かができるようにしてやる。配慮して利用することを認める。「発言の自由を―・える」「口実を―・える」
㋑割り当てる。課する。「宿題を―・える」「役割を―・える」
影響を及ぼす。
㋐相手に、ある気持ち・感じなどをもたせる。「感銘を―・える」「いい印象を―・える」「苦痛を―・える」
㋑こうむらせる。「損害を―・える」
[補説]室町時代以降はヤ行にも活用した。→与ゆ
[類語](1)(2つかわす取らせる授ける贈る施す恵むくれる授与する賜与する付与する譲与する贈与する供与する提供する供給する給付する支給する給するあげる差し上げる供する恵与する尊敬賜る下さる下される/(3㋑)あてがう課する割り当てる振り当てる割り振る振り分ける賦するやる/(4及ぼすもたらすよこす招く持ちきた来す引き起こす生む将来する招来する誘発する惹起じゃっきする生ずる生み出す作り出す創出する創造する

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「与える」の意味・読み・例文・類語

あた・えるあたへる【与】

  1. 〘 他動詞 ア行下一(ハ下一) 〙
    [ 文語形 ]あた・ふ 〘 他動詞 ハ行下二段活用 〙
  2. 自分の所有物を他人に渡して、その人の物とする。現在では、上の者から下の者へ授ける場合にいう。やる。さずける。
    1. [初出の実例]「比丘尼の為に食を過(アタヘ)て、自ら食を取りて食をせむことを除け」(出典:斯道文庫本願経四分律平安初期点(810頃))
  3. 影響、効果などを相手に及ぼす。こうむらせる。
    1. [初出の実例]「僧い其か罪を証正して、伏することあるを得むときに、方に与(アタフ)須し」(出典:四分律行事鈔平安初期点(850頃))
    2. 「幼き者に左右(さう)なく恥辱をあたへられけるこそ遺恨の次第なれ」(出典:平家物語(13C前)一)
  4. 物事代償として金や物を供給する。あてがう。
    1. [初出の実例]「門徒に人まへにふちかねをあたへるよし、仏法は一銭半銭は未来へ引入れのためなり」(出典:南蛮寺物語(1638頃))
  5. 仕事、課題などを課する。「問題を与える」
    1. [初出の実例]「選挙くらい大きな役目を与えられている制度は少ない」(出典:憲法講話(1967)〈宮沢俊義〉七)
  6. 指示、許可、結論などを出す。
    1. [初出の実例]「きのふ、実は承諾を与へたのぢゃが、あいつ、おほ喜び、さ」(出典:断橋(1911)〈岩野泡鳴〉一)
  7. 時間、設備、条件などを利用できるような状態にする。利用することを許す。「弁明の機会を与える」
    1. [初出の実例]「丹青会はかうしてこの大作に彽徊(ていくゎい)する多くの観覧者に便利を与(アタ)へた」(出典:三四郎(1908)〈夏目漱石〉一三)
  8. ( 「与えられた…」の形で ) 数学論理学で、定義づけられた、既知の、所与の、の意で用いられる。「与えられた三角形(円)」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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