〘名〙 (動詞「やしなう(養)」の連用形の名詞化)
① やしなうこと。育てること。はぐくむこと。うしろみ。養育。扶養。
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正倉院文書‐万葉仮名文(奈良)「わが夜之奈比
(ヤシナヒ)の代りには、おほまします南の町なる奴を受けよと」
※平家(13C前)六「院やがて御心得あって、ただもりとりてやしなひにせよ、とぞつけさせましましける」
③ 食事。また、食べ物。
※今昔(1120頃か)二九「昼の養せむとて藪の中に入るを」
④ 養分となるもの。
※甲陽軍鑑(17C初)品五「冬のかこひを能して、春養(ヤシナイ)をすれば、花の時りんをおほくもち候」
⑤ 生活していくための費用。一家を養うのに要する費用。
※相州文書‐八・天正七年(1579)五月二六日・北条氏印判状「御養四貫七百九文」
⑥ 子ども・老人などの扶養料。
※浄瑠璃・替唱歌糸の時雨(1782)下「彼の四九兵衛殿は無得心な人じゃぞや、又しても養(ヤシナ)ひ寄越(をこ)せと」
⑦ 巡礼などに与える報謝。布施。
※御伽草子・法妙童子(室町時代物語集所収)(室町末)「よにかなしきもうもくにやしなひたべと申されける」
⑧ 疲労・お産・病気などの後、治療や健康回復などをはかること。療養すること。
※病牀六尺(1902)〈正岡子規〉七五「其子供に、養ひの為に、親が灸を据ゑてやるといふ」
⑨ 舌に小さい瘡(かさ)のできていること。〔和訓栞(1777‐1862)〕