(読み)ヨウ

デジタル大辞泉 「養」の意味・読み・例文・類語

よう【養】[漢字項目]

[音]ヨウヤウ)(呉)(漢) [訓]やしなう
学習漢字]4年
食物をとってからだをやしなう。また、体力をつけるもの。「養生養分栄養加養休養滋養静養摂養保養療養
食物を与えたりして世話をする。「養育養鶏養蚕養殖養老供養くよう孝養飼養培養扶養
精神的な糧を与えてりっぱに育てる。「養成涵養かんよう教養修養素養
他人の子を自分の子として育てる。「養家養子養女養母
[名のり]おさ・かい・きよ・すけ・のぶ・まもる・やす・よし

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精選版 日本国語大辞典 「養」の意味・読み・例文・類語

やしな・う やしなふ【養】

〘他ワ五(ハ四)〙
① 子どもをはぐくみ育てる。助け守って成長させる。うしろみする。
書紀(720)雄略六年三月(前田本訓)「嬰児を蜾蠃に賜て曰く、汝自ら養(ヤシナヘ)とのたまふ」
② 食事など生活の面倒をみる。扶養する。
※書紀(720)仁徳一六年七月・歌謡「水底ふ 臣の少女を たれ揶始儺播(ヤシナハ)む」
③ 動物を飼い育てる。飼育する。また、植物を培う。施肥する。
※大般涅槃経治安四年点(1024)七「種子を儲け畜(ヤシナヒ)
※梵舜本沙石集(1283)一〇本「居所をいみじくし、食物を美麗にして養へども、鹿は山をのみ思ふ心をとどめず」
④ 仕えて世話をする。かしずく。傅育(ふいく)する。
※今昔(1120頃か)一四「此の家主の女、宿たる若き僧の美麗なるを見て、〈略〉懃(ねむごろ)に労り養ふ」
⑤ 供養する。布施する。
※書紀(720)敏達一四年六月(前田本訓)「未曾有(めづらしきひと)と嘆(なけ)いて三の尼を頂礼(をか)む。新に精舎(みてら)を営(つく)りて、迎入て供養(いたはりヤシナフ)
⑥ 世の中を治め整えて、良い方向に導く。天子、主君が人民を保護して向上させる。
※書紀(720)敏達一二年是歳(前田本訓)「天皇の天下の政を治たまふ所以は、要ず、黍民(おおむたから)須くは護り養(ヤしなひ)たまへ」
⑦ からだや気力などを衰えないように保つ。また、ある状態を発達、向上させる。
※海道記(1223頃)序「窓の蛍も集ざれば目は暗が如し、何を見てか志を養ん」
⑧ 慰める。喜ばせる。
蜻蛉(974頃)下「蝉の声いとしげうなりにたるを、おぼつかなうて、まだ耳をやしなはぬ翁ありけり」
⑨ 飲食する。栄養をとる。
※道成寺縁起絵巻(室町末)上「道にてはくるしからぬ物にて候へばふくだやしなはせ給へ」
⑩ 他人の子を、自分の子として育てる。養子にする。
愚管抄(1220)五「邦綱北政所の御後見にて、この近衛殿の若君なる、やしなひて」
⑪ 幼児・病人など、自分で食事のできない者に、箸(はし)をとって食べさせる。
※塩山和泥合水集(1386)「大に飯を嚼みて嬰児を(ヤシナ)ふに似たり」
⑫ 治療や休養をして、病気や傷を治したり体力などを回復させる。養生する。
※今昔(1120頃か)一二「海人等、此を聞て、哀むで此を養ふに、日来を経て漸く力付て例の如く成ぬ」
読本南総里見八犬伝(1814‐42)九「退陣して、風寒疾病を養ひしに」
教育努力によって、習慣づける。訓育する。
潮騒(1954)〈三島由紀夫〉六「永い灯台生活がますます読書の習慣を養ったので」

やしない やしなひ【養】

〘名〙 (動詞「やしなう(養)」の連用形の名詞化)
① やしなうこと。育てること。はぐくむこと。うしろみ。養育。扶養。
正倉院文書‐万葉仮名文(奈良)「わが夜之奈比(ヤシナヒ)の代りには、おほまします南の町なる奴を受けよと」
② 「やしないご(養子)」の略。
※平家(13C前)六「院やがて御心得あって、ただもりとりてやしなひにせよ、とぞつけさせましましける」
③ 食事。また、食べ物。
※今昔(1120頃か)二九「昼の養せむとて藪の中に入るを」
④ 養分となるもの。
※甲陽軍鑑(17C初)品五「冬のかこひを能して、春養(ヤシナイ)をすれば、花の時りんをおほくもち候」
⑤ 生活していくための費用。一家を養うのに要する費用。
※相州文書‐八・天正七年(1579)五月二六日・北条氏印判状「御養四貫七百九文」
⑥ 子ども・老人などの扶養料。
※浄瑠璃・替唱歌糸の時雨(1782)下「彼の四九兵衛殿は無得心な人じゃぞや、又しても養(ヤシナ)ひ寄越(をこ)せと」
⑦ 巡礼などに与える報謝。布施。
※御伽草子・法妙童子(室町時代物語集所収)(室町末)「よにかなしきもうもくにやしなひたべと申されける」
⑧ 疲労・お産・病気などの後、治療や健康回復などをはかること。療養すること。
※病牀六尺(1902)〈正岡子規〉七五「其子供に、養ひの為に、親が灸を据ゑてやるといふ」
⑨ 舌に小さい瘡(かさ)のできていること。〔和訓栞(1777‐1862)〕

よう ヤウ【養】

〘名〙
① 養分。
※尋常小学読本(1887)〈文部省〉七「地中より植物の養となるべき液体を吸収して、これを幹葉におくるの用」
② 父母を扶養すること。孝養。
※小学読本(1874)〈榊原・那珂・稲垣〉四「我が養を尽さざる内に父母共に死んには其時悔ゆともかひなかるべし」 〔孟子‐離婁・下〕

ひ‐た・す【養】

〘他サ四〙 (「ひだす」ともいうか。日足すの意) 養い育てる。そだて養う。養育する。
※古事記(712)中「何(いか)に為(し)て日足(ひた)し奉(まつ)らむ」
※良寛歌(1835頃)「かひなでて負ひてひたして乳(ちふ)ふめて今日は枯野に送るなりけり」

おなり【養】

〘名〙
① まかないをすること。煮炊きすること。
※観智院本名義抄(1241)「養 オナリス」
② 台所。勝手元。流し元。〔大坂繁花風土記(1814)〕

よう‐・ず ヤウ‥【養】

〘他サ変〙 やしなう。養育する。
※曾我物語(南北朝頃)一「われらが、君をやうじたてまつるに、かたきこわくして、国中にかくれがたし」

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