デジタル大辞泉
「鹿」の意味・読み・例文・類語
か‐の‐しし【▽鹿/鹿▽肉】
《「しし」は猪や鹿など食肉用の野獣の総称》
1 鹿のこと。
「猪のしし―は知らず、いくさはただ平攻めに攻めて勝ったるぞ、心地はよき」〈平家・一一〉
2 鹿の肉。
「相ともに心等しき―の味噌のなければ食はじとぞ思ふ」〈仮・仁勢物語・上〉
かせ‐ぎ【▽鹿】
《角が桛木に似ているところから》シカの古名。
「一箇蒜を白き―に弾きかけ給ふ」〈景行紀〉
か【鹿】
シカの古名。
「妻恋に―鳴く山辺の秋萩は露霜寒み盛り過ぎ行く」〈万・一六〇〇〉
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
しか【鹿】
〘名〙
① (古く、「女鹿
(めか)」に対し雄じかを「夫鹿
(せか)」と呼び、それが変化したものという) シカ科に属する哺乳類の総称。体はほっそりとし、四肢が細長く、尾は短い。ふつう雄の
頭部には樹枝状の枝角があり、毎年基部から落ちる。
森林や
草原にすみ、木や草の葉・地衣などを食べる。ニホンジカ・トナカイ・ジャコウジカ・キョン・
キバノロ・
ノロなどの種類がある。日本では特にニホンジカをさしていう。かせぎ。かのしし。かかしし。《季・秋》
※
書紀(720)仁徳三八年七月(前田本訓)「其
(かの)苞苴は何の物そ。対へて言はく、
牡鹿(シカ)なり。問ひたまはく、何処
(いつこ)の鹿
(シカ)そ」
② (揚代が一六匁のとき、四四十六の「四四」を「しし(鹿)」にこじつけ、「鹿恋
(かこい)」の字を当てることがあるところから)
上方で
太夫・天神につぐ遊女の階級、「
囲(かこい)」の異称。
※
浮世草子・好色二代男(1684)五「我を見しらぬ鹿
(シカ)にこがれ」
③ 独活(うど)の生長して葉の伸び出たもの。鹿がこれを食うと角が落ちると俗にいう。
※歌謡・閑吟集(1518)「なをつまば、さはにねぜりや、みねにいたどり、しかのたちかくれ」
[語誌](1)①は
古代からの食用狩猟獣で、猪と共に肉を意味する「しし」の語で呼ばれた。猪と区別して「かのしし」と呼び、また「かせぎ」ともいう。これらに共通する「か」が、鹿を意味する基本的な語のようだが、「しか」と「か」の関係は明らかではない。
(2)
上代の
文献からしばしば登場するが、特に
和歌では秋の交尾期の牡の声が
情趣あるものとされ、「
万葉集」以来萩、紅葉等の
景物とも組み合わされて多く詠まれた。鹿猟の
一種「照射
(ともし)」も平安後期以降、夏の景物として和歌の
題材となった。なお、藤原氏の
氏神である春日社が、神の使いとして尊重したことも、鹿と日本文化とを関係深いものとした。
かせぎ【鹿】
〘名〙
※書紀(720)推古六年一〇月(岩崎本訓)「
越国白き鹿
(カセキ)一頭(ひとつ)を献れり」
※俳諧・毛吹草(1638)二「
中秋〈略〉鹿
かせき・すがる鳴」
(イ) シラミ。
(ロ) イノシシ。
か【鹿】
〘名〙
① 鹿(しか)の古称。
※万葉(8C後)一・八四「秋さらば今も見るごと妻恋ひに鹿(か)鳴かむ山そ高野原の上」
② 江戸時代、上方の遊女の階級の一つで、囲(かこい)の別称。
※浮世草子・傾城禁短気(1711)一「昔より身躰に応じ、松(せう)梅(ばい)鹿(カ)の位を分かち、分際相応にそれぞれの役々の女郎に縁を結び」
ろく【鹿】
〘名〙
① 鹿(しか)をいう。〔色葉字類抄(1177‐81)〕
② 鹿・猪などの獣肉。古くは、獣肉を食べることを忌んだが、寒の内に限って、体を暖め血行をよくする薬として鹿や猪の肉を食べる風習があった。
※雑俳・類字折句集(1762)「惣嫁同士貴様も鹿をくやったか」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報
世界大百科事典(旧版)内の鹿の言及
【シカ(鹿)】より
…中国では絶滅に近づいているが,ヨーロッパなどに野生化したものは増えつつある。【今泉 忠明】
【鹿と人間】
[日本]
鹿は日本列島には古くから多数生息したらしく,縄文時代の遺跡から,食用にした痕跡として骨や角が多く出土するほか,道具として加工されたものも少なくない。毛皮は衣服用となったと推察され,近世に至るまで山仕事,狩りに際していばらや切株から下半身を保護する袴として使用された。…
※「鹿」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」