デジタル大辞泉 「推定」の意味・読み・例文・類語
すい‐てい【推定】
1 ある事実を手がかりにして、おしはかって決めること。「出火の原因を
2 法律で、ある事実または法律関係が明瞭でない場合に、一応一定の状態にあるものとして判断を下すこと。
3 統計調査で、ある集団の性質を調べる場合に、その集団から抽出した標本を分析することによって集団全体の性質を判断すること。
[類語]推察・推量・推測・察し・斟酌・推断・推認・了察・明察・賢察・高察・拝察・忖度・
翻訳|presumption
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
ある事実(前提事実)から他の事実(推定事実)を推測(推認)することをいう。法律用語としての推定には2種類ある。一つは〈事実上の推定〉といって,裁判官が自由な心証により経験則を用いて,ある前提事実から他の推定事実を推認する場合である。たとえば認知請求訴訟で,原告の母であるA女が懐胎可能期間中にB男と関係したことが証明された場合に,それによって妊娠したであろうと推認する場合である。さらにその子とB男との血液型の背馳がなく,A女が日ごろから素行がよかったという事実が加わると,B男との関係による懐胎の蓋然(がいぜん)性が高くなる。このように高度の蓋然性がある場合に,〈一応の推定〉という言葉が使用されることもある。公害訴訟で,病気の原因物質が分かり,その経路が企業の門前まで到達したことが証明されて,その企業が汚染源であると推定されたが,これなども一応の推定の例である。しかし一応の推定は他の事実を証明することによってくずれる場合がある。たとえば,先の例で,A女がB男のほかにC男とも関係していたことが証明され,A女の子とC男との血液型の背馳がなかったとすれば,子の父がB男であるかどうか疑わしくなってくる。このように,前提事実と両立する他の事実の証明によって,推定事実を動揺させることを間接反証という。
これに対し〈法律上の推定〉は,法律が公益上または立証軽減の必要から,前提事実が証明された場合に法規の要件を認定するよう義務づけている場合である。たとえば,A女がB男と婚姻中に懐胎した場合には,その子が当然B男の子であると推定される(民法772条1項)。その結果,B男が自分の子でないとして嫡出否認の訴えを起こした場合,B男は,単にC男とも関係があったと証明しただけでは足りず,B男の子でないことを完全に証明(本証)しなければならないので,証明責任が転換されたことになる。法律上の推定にはそのほか,占有の始めと終りを証明することによって,その間占有が継続したものと推定する規定(186条2項)があるが,間断なく占有を継続してきたという立証はきわめて困難なので,これを軽減するためにある。このように占有継続という事実を推定する場合を事実推定といい,不動産を占有している者が所有者のごとくふるまっても適法と推定される規定(188条)のような権利推定もある。
推定と似ているが異なるものに擬制がある。たとえば民法31条は失踪宣告を受けた者を死亡したものとみなすと規定しているが,生きていることを証明しただけでは失踪宣告の効果は消えず,宣告自体を取り消さなければならない。
刑事訴訟に〈疑わしきは罰せず〉という法諺があるが,これは〈疑わしい場合は無罪と推定する〉と同義であり,無罪の推定ともいわれている。刑事訴訟法336条が〈被告事件について犯罪の証明がないときは,判決で無罪の言渡をしなければならない〉と規定している点,憲法31条が〈何人も,法律の手続によらなければ……刑罰を科せられない〉と定めている点などは,この考えのあらわれであるといわれている。
執筆者:竜㟢 喜助
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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