テレビジョン(ロック・グループ)(読み)てれびじょん(英語表記)Television

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

テレビジョン(ロック・グループ)
てれびじょん
Television

ニューヨークパンクを代表するロック・グループの一つ。ニュー・ジャージー州出身のトーマス・ミラーThomas Miller(1949―2023)は幼少時よりギターに親しみ、サウス・カロライナ州のアースキン大学を中退してニューヨークに向かう。ミラーは自分の平凡な名前を、フランスの詩人ベルレーヌの英語読みからトム・バーレインTom Verlaine(ボーカル、ギター)と改め、高校時代の友人であったビリー・フィッカBilly Ficca(1949― 、ドラムス)、リチャード・ヘルRichard Hell(1949― 、ベース)とともにネオン・ボーイズを結成する。

 ネオン・ボーイズは短い活動の後に解散するが、リチャード・ロイドRichard Lloyd(1951― 、ギター)と出会ったバーレインは再度グループ結成を決意。フィッカとヘルを呼び寄せテレビジョンを結成する。1974年ニューヨークでライブ活動を開始したテレビジョンは、当時のバーレインの恋人で、ニューヨークのアート・シーンの著名人であったパティ・スミスの紹介もあって、いつしかニューヨークのパンク・シーンで名の知られるグループとなっていった。

 ブライアン・イーノにみいだされたテレビジョンは、彼のプロデュースによってデモテープをレコーディングするが、自らの音楽性に固執するバーレインはリリースを拒否。また大手レコード会社も契約を申し込むが、彼らは承諾することなく独自の音楽性を磨き上げていく。1975年にはヘルとバーレインとの意見の衝突により、ヘルがテレビジョンを脱退、後にリチャード・ヘル&ボイドイズを結成する。ヘルの後任にはブロンディのベーシストであったフレッド・スミスFred Smith(1948―1994)が加入し、1976年にようやく、バーレインが敬愛していたグループであるドアーズがかつて所属していたレーベルエレクトラと契約を結ぶことになる。

 ファースト・アルバム『マーキー・ムーン』(1977)は、バーレインの文学的な歌詞と神経質なボーカル、繊細でとぎすまされたギター・サウンドとドラマティックな曲の展開が批評家からの絶賛を浴びた。アメリカでのセールスは芳しくなかったが、イギリスでは高い評価を受け全英ツアーも成功させている。しかしセカンド・アルバム『アドベンチャー』(1978)をリリースした後、バンドは突然の解散を発表する。

 その後、バーレインはソロ・アルバムを数枚発表するなどして、1992年(平成4)にはテレビジョンを一時的に再結成し『テレビジョン』(1992)をリリース、来日も果たした。いずれも商業的な成功には至っていないが、バーレインの硬質だが官能的なギター・サウンドがパンク以降のロックに与えた影響は大きく、その存在感は1960年代のドアーズを彷彿(ほうふつ)させる。

[増田 聡]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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