リード(Sir Herbert Read)(読み)りーど(英語表記)Sir Herbert Read

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

リード(Sir Herbert Read)
りーど
Sir Herbert Read
(1893―1968)

イギリスの詩人、批評家。批評活動は社会、美術、文学など諸分野にわたり、イギリス・ロマン主義研究および美術史の業績でも知られる。ヨークシャー農家に生まれ、郷土の生活は後の戦争体験とともに決定的役割を果たした。リーズ大学に学び、エジンバラケンブリッジなどの大学で美術講座を担当、1953年ナイトを受爵。『詩集』(1926)、唯一の小説『グリーン・チャイルド』(1935)、自叙伝『無垢(むく)と経験の記録』(1940)はいずれも幼年期体験の結晶。戦争体験を反映する詩『ある戦争の終わり』(1933)は、国家と個人、運命と神を論じる注目すべき作品。そのなかの一節、「最終的な神の恩寵(おんちょう)が、一羽の鳩(はと)が/天から降りてきて心を目覚ませるまでは疑う」が彼の根本思想で、自ら「私は政治的にはアナキスト、宗教的には無神論者、文学的にはロマン主義者」と宣言した。美術評論には高名な『芸術意味』(1931)、『今日の芸術』(1933)、『インダストリアル・デザイン』(1934)、『芸術による教育』(1943)のほか、『モダン・アート哲学』(1952)、『イコンイデア』(1955)、『彫刻の芸術』(1956)、『芸術形式の起源』(1965)などがある。

[河村錠一郎]

『相良幸一著『ハーバート・リード研究』(1971・研究社出版)』『北条文緒訳『ハーバート・リード自伝――対蹠的な経験』(1970・法政大学出版局)』『滝口修造訳『芸術の意味』(1958・みすず書房)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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