(読み)キョウ

デジタル大辞泉 「凶」の意味・読み・例文・類語

きょう【凶】[漢字項目]

常用漢字] [音]キョウ(漢)
作物が実らない。「凶作凶年豊凶
運が悪い。不吉。「凶事凶兆凶報凶夢吉凶大凶
(「」と通用)人の殺傷など、ひどい悪事をすること。また、悪者。「凶悪凶器凶行凶状凶刃凶弾凶暴元凶

きょう【凶/×兇】

縁起や運が悪いこと。不吉。「―と出るかきちと出るか」⇔
悪。悪人
あたを斬り、―を滅す」〈続紀・神護景雲〉
[類語]不吉不祥不運非運悲運衰運不遇アンラッキーまがまがしい凶事凶兆厄日不祝儀夢騒がし縁起でもない

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精選版 日本国語大辞典 「凶」の意味・読み・例文・類語

きょう【凶・兇】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 不吉であること。縁起が悪いこと。不祥(ふしょう)。⇔吉(きつ)吉(きち)
    1. [初出の実例]「『吉日に悪をなすに必ず凶なり。悪日に善を行ふに、必ず吉なり』といへり。吉凶は人によりて、日によらず」(出典:徒然草(1331頃)九一)
    2. [その他の文献]〔詩経‐小雅・十月之交〕
  3. 運が悪いこと。わざわいを受けること。不運。災難
  4. ( 形動 ) 心がよこしまであること。邪悪であるさま。また、そのような人。
    1. [初出の実例]「逆賊仲麻呂近出臣族。極凶肆逆。若斯之甚」(出典:続日本紀‐天平神護元年(765)四月丙子)
  5. ある期間、飲食、外出などを避け、身心を清らかに保っていること。物忌み。
    1. [初出の実例]「凶は、一夜ばかりと思ふまじきものぞ」(出典:狭衣物語(1069‐77頃か)一)
  6. 農作物などがみのらないこと。凶作。不作。饑饉(ききん)。〔孟子‐梁恵王・上〕

きょ【凶】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「きょう(凶)」の変化した語 ) よくないこと。不吉(ふきつ)
    1. [初出の実例]「御鬮(おみくじ)を取って見たところ、二十五番の凶(キョ)が出たゆゑ」(出典:歌舞伎・吉様参由縁音信(小堀政談)(1869)三幕)

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普及版 字通 「凶」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 4画

[字音] キョウ
[字訓] わるい・まがごと

[説文解字]

[字形] 象形
凵(かん)は胸郭の形。その中央に文身としての×形を加える。枉死者の屍にこの文身を施すことによって、その霊を鎮め、災厄を祓うことができるとされた。すなわち凶礼を示す字である。身分ある人の胸には朱でえがく絵身を加えて、(文)という。は人の正面形の胸に絵身を加えた形で、卜文・金文の字は、文身として∨や心字形を加えるものが多い。婦人のときには乳房をモチーフとするので、爽・・爾の×や百はその形である。凶を〔説文〕七上に「惡なり。地たれて、其の中に陷するに象るなり」と人の陥没する意とするが、凶が凶事における胸部の文身を示す形であることは、兇・匈・胸など、その系列の字形から考えても、明らかなことである。

[訓義]
1. わるい、まがごと、わざわい。
2. 不吉のこと、罪あること、けがれあること。
3. もとる、よこしま。
4. 不順なること、倒逆なること。

[古辞書の訓]
名義抄〕凶 アシ・ウレフ・ウレヘ 〔字鏡集〕凶 ウレフ・アシ・トガ

[部首]
〔説文〕〔玉〕ともに、この部に兇の一字を属する。〔玉〕に凶を「短折なり、惡なり、咎なり」、また「兇は懼(おそ)るる聲なり」とするが、凶は凶礼を示す文身、兇はその全身形である。

[声系]
〔説文〕に凶声として匈・の三字を収める。匈は凶に側身形を加えたもので、胸の部分を示す。兇は全身形でその状態を示す。(そう)は兇の下にさらに夊(すい)を加えたもので、凶声の字ではない。

[語系]
凶・兇xiongは同声。ともに凶事・凶懼を意味する。また(荒)xuangは凶作・荒穢をいい、凶懼を惶huangという。みな一系の語である。

[熟語]
凶穢・凶悪・凶衣・凶威・凶音・凶・凶殃・凶害・凶黠・凶猾・凶悍・凶旱・凶患・凶頑・凶危・凶軌・凶帰・凶飢・凶・凶器・凶虐・凶逆・凶咎・凶渠・凶凶・凶・凶矜・凶饉・凶具・凶愚・凶・凶歉・凶験・凶言・凶功・凶行・凶狡・凶荒・凶・凶寇・凶酷・凶詐・凶災・凶歳・凶作・凶札・凶残・凶侈・凶恣・凶事・凶日・凶邪・凶手・凶豎・凶醜・凶穣・凶心・凶身・凶信・凶人・凶声・凶賊・凶短・凶兆・凶徒・凶怒・凶党・凶盗・凶・凶・凶徳・凶毒・凶年・凶拝・凶悖・凶敗・凶犯・凶訃・凶服・凶問・凶聞・凶変・凶豊・凶謀・凶勃・凶慢・凶夢・凶妄・凶門・凶勇・凶妖・凶慾・凶乱・凶類・凶礼・凶戻
[下接語]
奸凶・姦凶・吉凶・救凶・禦凶・群凶・元凶・囂凶・讒凶・大凶・転凶・愍凶・憫凶・豊凶・妖凶

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