宣ふ(読み)ノタマウ

デジタル大辞泉 「宣ふ」の意味・読み・例文・類語

のたま・う〔のたまふ〕【宣ふ/×曰ふ】

[動ハ四]《動詞「の(宣)る」に「たま(給)う」の付いた「のりたまう」の音変化で、本来は、上位下位に告げ知らせるの意》
言う」の尊敬語。おっしゃる。
「何くれと、いとあはれに多く―・ひて」〈かげろふ・中〉
尊者に対し、かしこまりあらたまった会話で自己側の動作として用いる)自分の部下身内に言って聞かせる。申し聞かせます。
「立ちぬる月にも、おもとの御こと(娘ニ)―・ひ語らはむとて」〈宇津保・俊蔭〉
[補説]現代語では、尊敬語としてではなく、からかい半分のふざけた言い方として、「いかにも、もっともらしく言う」「大きな態度で言う」などの意に用いることがある。「そんなわかりきったことはのたまうな」「おそく帰宅して、食事はないかなどとのたまう」
[類語]言う話すしゃべる語る述べる発言する口を利く口に出す口にする吐く漏らす口走る抜かすほざくうそぶく言い出すしゃべくる物言う伝える告げる物語る打ち明ける明かす説明する述懐する告白する口外こうがいする他言たごんする言い掛ける言い始める言い話し込む話しかける口に上る口の端に掛かる口を開く口を切る申し述べる(尊敬)おっしゃる仰せられる謙譲申し上げる申す言上ごんじょうする

のたも・う〔のたまふ〕【宣ふ/×曰ふ】

[動ハ四]のたまう

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「宣ふ」の意味・読み・例文・類語

の‐たま・う‥たまふ【宣・曰】

  1. 〘 他動詞 ハ行四段活用 〙 ( 動詞「のる(宣)」に四段活用動詞「たまう(賜)」の付いた「のりたまう」の変化したもの ) 上位から下位へいう、告げ知らせるの意を表わすのが原義で、そこから、上位者の「言う」動作を敬っていう場合と、単に、言ってやる、申し聞かせるの意の場合との二面が生じたものと考えられる。のたぶ。のとうぶ。
  2. 「言う」「告げる」の尊敬語で、その動作主を敬う。おっしゃる。言っておやりになる。また、お言いつけになる。
    1. [初出の実例]「王、卿を召せと令(ノタマフ)」(出典:天理本金剛般若経集験記平安初期点(850頃))
  3. 上位者の言を仲介して他に言う。申し聞かせる。
    1. [初出の実例]「女に内侍の給、『仰せごとにかぐや姫のうち優におはす也、よく見て参るべき由の給はせつるになん参りつる』と言へば」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
  4. 尊者に対するかしこまり改まった表現(会話・消息・勅撰集詞書など)において自己または自己側の者の「言う」に用い、第三者に対し「言ってやります」「申し聞かせます」の意を表わす。言う相手が低められることによって、へりくだった言い方になる。
    1. [初出の実例]「立ちぬる月にも、おもとの御ことのたまひかたらはむとて罷りたりしかば」(出典:宇津保物語(970‐999頃)俊蔭)
  5. ( 特に現代語では敬語としてでなく ) 「言う」をからかい半分のふざけた言い方としていうのに用いる。のたまわす。
    1. [初出の実例]「アアモウ解ッた解ッた、何にも宣(ノタマ)ふナ」(出典:浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉一)

宣ふの語誌

( 1 )上代にも「のたばく(宣━)」の形はあるので「のたまう」の存在も考えられるが、万葉仮名書きの確例は見られない。中古では、「のたまわす」「おおせらる」などが最高の敬度であるのに対し、「のたまう」はそれにつぐ敬度を持ち、「せ(させ)たまう」に対する「たまう」程度の尊敬語として広く用いられた。
( 2 )の意は、文脈によって、「多武峰少将物語」の「いとあさましきわざかな。御はらからの君たちも、おのれをこそ、のたまはめ」のような「わるくおっしゃる」「恨んでおっしゃる」の意や、「宇津保‐俊蔭」の「ただこの人のみおもほえ給へば、ちぢにちぢに思ひくだくれど、のたまふべき人しなければ」のような「相談をおかけになる」の意になる場合もある。


の‐たもう‥たま・ふ【宣・曰】

  1. 〘 他動詞 ハ行四段活用 〙のたまう(宣)

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