(読み)ロ

デジタル大辞泉 「炉」の意味・読み・例文・類語

ろ【炉】

床や土間の一部を四角に切り、火を燃やして暖をとったり、煮炊きしたりする所。囲炉裏いろり。「を切る」 冬》
暖炉。ストーブ
「僕はずから―を擁して眠らんのみ」〈織田訳・花柳春話
金属などを加熱・溶解・反応させるための装置。溶鉱炉原子炉など。
ボイラーなどで、燃料を燃焼する部分。
[類語]いろり暖房ヒーターセントラルヒーティングスチームスチームヒーターオンドル炬燵こたつ暖炉ペチカストーブ火鉢手あぶり湯たんぽ懐炉熱器具

ろ【炉〔爐〕】[漢字項目]

常用漢字] [音](漢)
火や香などをたく設備・器具。「炉辺火炉懐炉香炉焜炉こんろ地炉暖炉風炉ふろ
金属を加熱する装置。「炉心高炉原子炉反射炉溶鉱炉
[難読]焙炉ほいろ

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普及版 字通 「炉」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 8画

(旧字)爐
20画

(異体字)鑪
24画

[字音]
[字訓] いろり・ひばち

[字形] 形声
旧字は爐に作り、盧(ろ)声。いろりは民家では重要な地位を占めるものであるが、中国では古くは竈がその地位を占めた。炉は古い文献にみえず、〔正字通〕に引く〔歳時雑記〕に「京師、十、酒を沃(そそ)ぎ臠(にくれん)を爐中に炙(や)き、圍坐して飮み啗(く)らふ。之れを爐(だんろ)と謂ふ」とみえる。〔燕京歳時記〕に、十月に炉開きをし、いしわたを敷いた炉を設けるという。

[訓義]
1. いろり。
2. ひばち、手あぶり、足あぶり、香炉。
3. 字はまた鑪(ろ)に作る。

[古辞書の訓]
〔新字鏡〕爐 鑪の字なり、火呂。、加々利(かがり)〔名義抄〕爐 ツカル・ヤク/爐 ヒトリ/火爐 ヒタキ 〔立〕爐 カキリ・ヤク・ホノホ・ヒタキ・カカリシ・カカリビナリ

[語系]
爐・盧・・瀘・laは同声。盧に黒色の意があり、〔書、文侯之命〕「盧弓一」は黒い弓、金文に「弓(ろきゆう)」とみえるものである。

[熟語]
炉煙・炉架・炉火・炉灰・炉気・炉薫・炉香・炉燼・炉竈・炉台・炉炭・炉篆・炉頭・炉餠・炉辺・炉冶・炉籠
[下接語]
鴨炉・火炉・懐炉・旧炉・金炉・紅炉・香炉・高炉・炉・焜炉・手炉・守炉・炉・足炉・丹炉・炭炉・暖炉・煖炉・地炉・茶炉・鼎炉・当炉・飯炉・風炉・焙炉・薬炉・鎔炉・擁炉

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改訂新版 世界大百科事典 「炉」の意味・わかりやすい解説

炉 (ろ)

農家の囲炉裏から発想された茶室の設備。8通りの形式がある。成立の順にいえば,隅炉,向切,台目切,出炉であり,これら順勝手すなわち客が点前者(亭主)の右側に位置するのに対し,左側に客がくる逆勝手もきわめてわずかであるが実在する。このような茶室が構想されるのは,茶室の立地条件(室外の展望など)によって,やむをえず逆勝手の炉を切るのであって,通常の形式(順勝手,本勝手)が可能であるにもかかわらず,逆勝手の炉を切ることは許されない。

 炉にはこのように八炉の形式が存在するが,茶室の基本型は,4畳半の出炉である(裏千家又隠(ゆういん))。出炉とは,道具畳より炉が外(客寄り)に出ていることによる。この形式では点前者が,斜め向きではあるが客の方に対座に近い姿勢(風炉(ふろ)では完全に横向きとなる)をとれることで,茶の湯が志向している,茶を点て客をもてなすという態勢に合致しているのである。

 茶の湯は台子(だいす)に風炉釜をのせる形式が先にあって,中国舶載の優れた器物を展観することを主眼としていたのに対し,村田珠光が囲炉裏(火炉裏)に着想を得て,畳の面より釜を低くする茶室の炉を考案した。これが喫茶の和様化の第一歩となったのである。この場合,風炉のある位置をそのまま掘り下げた隅炉が,形式の上で最も風炉の点前に近い。つまり点前者は風炉に対座したその姿勢で,単に釜が畳面より低くなっただけにすぎない(山崎妙喜庵の待庵)。この向かって左隅の炉を右側に移すと,向切になり水指が風炉と逆転するから,点前にも変化が生じて面白味もあるし,火気が客に近くなって,暖を与える効果も出る。

 次に台子を重くしながらも,わび茶への脱却を明確にする意味をこめて,台目の茶室が構想され,とくに〈台目の出炉〉において,小間茶室の典型が打ち出された(織部好み,三畳台目席)。台目とは,台子の幅の1尺5寸を6尺3寸の畳から欠いた短い畳をいい,台目柱は台子の4本の柱を集約して象徴させている。その点前も台子のそれに準拠している。台子に風炉釜をのせる形式が,儀式的であり器物を主とするのに対し,炉は客をもてなすための点前に力点がある。隅炉,向切,台目切,出炉が,いずれも4畳半以下の小間に限られた炉の形式であることが重要で,それぞれが異なった点前をもつのに対し,同じ茶室でもそこの炉をふさいで風炉を置けば,すべて同じ風炉の一つの点前になってしまうのである。

 茶の湯が小間の炉を重んじるのは,わび茶の真の姿であるからである。裏千家11世玄々斎は,炉が1尺4寸四方の定寸であるのに対し,囲炉裏の原点に帰って,1尺8寸四方の大炉を復原的に考案して,炉の本来の風情を表現した。この場合,炉中の四方壁面(炉壇)をねずみ色に塗ったのであるが,通常は聚楽土を左官が室内の壁を塗るように塗っていく。この炉壇を専門に塗る左官を炉壇師として区別したりもする。今日の茶の湯では炉の季節を11月の開炉から4月末日まで,冬季のものに固定している。略式の炉として,石,鉄,銅でつくった炉があり,また炉縁をつけた持運びのできる置炉がある。
茶室
執筆者:



炉 (ろ)

人類が火を用いた事実を裏づける最も古い証拠は,北京原人が発見された中国の周口店遺跡から出たもので,約40万年前にさかのぼるが,火を一定の場所でたいて,食物を調理し,暖をとったり,照明の役割を果たした炉跡の確実な例は,約11万年前から3万5000年前,旧石器時代中期のネアンデルタール人によって残されている。たとえば,シリアのドゥアラDouara洞窟からは,石灰岩の礫(れき)をめぐらした,縦7m,横5m,周囲が20mもある巨大な炉跡が発見され,そこから石器や炭,焼けた骨が出土している。

 日本でも,炉跡の確実な例は,先土器時代にさかのぼり,たとえば,静岡県の休場(やすみば)遺跡からは,細石器を伴って,河原石で囲った炉跡が2ヵ所発見され,そこから採集された木炭を資料とした炭素14法測定年代によると,約1万4000年前という年代が出ている。また,先土器時代の遺跡からは,焼けた礫が集まった礫群と呼ばれる遺構がしばしば発見されているが,これも炉として機能していたことも考えられている。縄文時代に入ると,竪穴住居が構築され定住化が進むが,縄文時代の早期段階は竪穴住居に炉をもたないことが多く,屋外に炉穴と呼ばれる炉が多数つくられている。前期に入ると,住居内に炉をもつことが一般的となり,さまざまな形態をもつ炉がつくられるようになる。とくに中期は炉の発達が著しく,床を掘りくぼめただけの地床炉のほかに,深鉢形土器を埋め込んだ埋甕炉(うめがめろ),河原石をめぐらした石囲炉,土器と石囲を組み合わせた石囲埋甕炉や,炉が二つの構造からなる複式炉と呼ばれる特異な炉などがつくられ,竪穴住居内の炉が生活のうえで重要な役割を果たしたことをうかがわせている。このように発達した屋内炉も弥生時代以降は簡素化し,地床炉が一般的となり,古墳時代後期までその伝統を保つが,そのころ出現をみた,煮炊きを目的としてつくられたかまど)にとってかわられた。
囲炉裏(いろり)
執筆者:


炉 (ろ)

セラミックス分野では炉と窯の区別は明りょうではないが,炉にはfurnaceをあて,窯にはkilnをあてている。また,窯炉のように区別を避けた表現もある。一般に,伝統的セラミックス(陶磁器,ガラスセメント耐火物など)の分野では好んで〈窯〉を用い,新しいセラミックス(エレクトロニクスセラミックス,ニューセラミックスなど)の分野では〈炉〉を用いる傾向が強い。いずれにしても耐火物で作った高温発生装置で,焼成,溶融,焼結,乾燥などの反応を行うために用いる。加熱源としては固体燃料(木材,石炭,コークスなど),液体燃料(石油,重油など),気体燃料(プロパンガス,水素,都市ガスなど)と電気がある。さらに電気を用いる場合はアーク炉,抵抗炉,誘導炉,赤外線炉などに分類できる。操業方式で分類すると不連続炉と連続炉になる。最近の傾向として,セラミックス繊維を用いた高性能断熱材が開発されたため,熱容量が小さい,すなわち急速昇温が可能で軽量な炉が増えてきている。

執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「炉」の意味・わかりやすい解説

炉(屋内)

屋内の一定部分の床を方形に切り、暖をとったり、物を煮炊きする場所や設備をいう。一般に民間においては土間あるいは板の間の物を煮炊きする囲炉裏(いろり)を、茶の湯では釜(かま)をかけるために茶室の特定の場所に切られた囲炉裏をいう。民家の炉は、カッテとかダイドコロなどとよばれる板の間に設けられる上(うわ)囲炉裏と、土間の一隅を掘りくぼめた下(した)囲炉裏がある。上の炉は、山地、台地など燃料の薪(まき)が入手しやすい地方に、下の炉は、薪が入手困難で藁(わら)を燃料とする低湿地にある。上の炉の大きさは五尺四方とか四尺に六尺などで、石を組み粘土で固めるが、築き方は地方によって異なる。炉の火は暖房、煮炊きだけでなく、古くは照明の火でもあったので、炉端は食事をするほか、一家だんらん、接待、夜なべなどもっとも広く利用された場所である。土間からみて正面が主人の座で、「よこざ」「かみざ」などといい、横の入口寄りが「きゃくざ」「よりつき」などという客の座、流しに近いところが「かかざ」「おんなざ」という主婦の座、土間に近い横座の正面が「きじり」という下男下女の座であった。炉には竹竿(たけざお)あるいは鉄製の自在鉤(かぎ)を下げ鍋(なべ)をつるして煮炊きするが、鉄輪(かなわ)を使用する地方、併用する地方もある。炉をいくつも設けた大家や、炉の上に火棚をつるす家、フミコミイロリといって土間寄りの一辺をあけ土足のままあたれるものもある。炉や自在鉤は火の神信仰の対象とされ、燃料や使用法などに禁忌があり不浄を避けている。

[内田賢作]


炉(窯炉)

窯炉

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「炉」の意味・わかりやすい解説



furnace

物を加熱したり溶融したりする目的でつくられた装置。高温焼成に用いられるものを窯というが,炉と窯の区別は必ずしも厳密になされているわけではなく,一般に窯炉あるいは工業窯炉とも呼ばれる。製鉄をはじめ金属の精錬・加工,都市ガス,コークスの製造,スチーム発生,陶磁器の焼成,セメント製造など,多くの工業分野で広く用いられており,目的とする加熱温度の高低によって炉をつくる耐熱材料の種類や加熱方式はさまざまである。大別すると,物の内部に化学的変化を起させることを目的とした反応炉,物理的変化を起させる熱処理炉,殺菌を目的とした滅菌炉,焼却炉,金属加工の前処理を行う灼熱炉・予備加熱炉,合金などの融製や鋳物用の地金を溶かすときに用いられる融解炉などがある。加熱の方式には,燃料を用いる燃焼加熱式と燃料を用いない物理的加熱式とがあり,それぞれ加熱手段によって,前者にはコークス炉,ガス炉,重油炉,石炭炉,原子炉など,後者には電気炉 (抵抗炉,高周波炉,低周波炉など) ,アーク炉,電子ビーム炉,プラズマ炉,アーク・イメージ炉,太陽炉などと呼ばれるものがある。また,真空炉,不活性ガス炉,減圧炉,大気炉など,加熱物体を包む媒体による分類もある。


茶道で用いる炉。茶室に造る炉は外のり寸法約 42.5cm (1尺4寸) 四方,炉壇の深さは約 45cm (1尺5寸) で,塗炉,石炉,鉄炉,銅炉などがある。また炉の切り方の形式には入り炉 (隅炉など) ,出炉 (でろ) がある。炭火を使用し,使わないときは木の炉ぶたをする。夏,秋には風炉 (ふろ) を用いる。


いろり。屋内の床を切って箱形とし,火をたくわえて暖をとったり,湯を沸したり煮炊きをする場所。農村の採暖,煮炊き用の炉は普通 1m四方で,天井から自在かぎを吊下げることが多い。

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百科事典マイペディア 「炉」の意味・わかりやすい解説

炉【ろ】

煉瓦などの耐火物で築かれ,原料・材料の溶融や化学反応などを行わせる装置を窯炉と総称し,窯(かま)と炉に分けるが,両者の区別は厳密でなく,ふつう主として冶金などに用いるものを炉と呼ぶ。形式別に溶解炉,間接加熱炉,直接加熱炉,立て形反応炉,流動層炉などに分け,それぞれに用途に応じた多くの種類がある。熱源はコークス,ガス,重油,電気など。→
→関連項目ヘスティア

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知恵蔵 「炉」の解説

ロリータ、またはロリコンを省略して漢字にしたもの。「炉」に落ち着くまでは「露」が使われていたこともあったが、ロシア女性を「露女」と記すこともあり、区別するためか使われなくなった。少女に対する性的嗜好というよりは、パッケージ化された2次元の、裸体も含めた少女の出版物や電子写真集という意味合いが大きい。「~の炉ください」などと使われる。

(川口正貴 ライター / 2009年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

防府市歴史用語集 「炉」の解説

火をたいたところです。炉といっても、暖房や調理のためのものであったり、ガラスや金属をとかすためのものだったりと様々です。

出典 ほうふWeb歴史館防府市歴史用語集について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【煙突】より

…燃焼ガスの密度をρ,大気の密度をρ0,煙突の高さをH,重力加速度をgとすると,ガスの流動抵抗を無視すれば,煙突の底部には(ρ0-ρ)gHの圧力差ができる。自然通風式の燃焼炉では,この煙突の通風力を利用して,外からの空気を燃焼炉に吸い込む。最近の大型の燃焼装置は煙突の通風力を利用しないですむだけの強制通風力すなわち送風機をもっているので,煙突の主目的は燃焼排ガスの拡散希釈に移っている。…

【台所】より


[日本の台所]
 現在は食物を調理する部屋,すなわち厨房(ちゆうぼう)を指すが,古くは,炉などの調理設備のある空間や建物の全体を,台所と呼ぶことが多かった。江戸時代の大名邸宅の台所は,大規模な別棟の建物で,厨房のほかに多くの家政用の部屋を含んでいた。…

【竪穴住居】より


【ヨーロッパ】
 後期旧石器時代オーリニャック文化にあたるチェコスロバキアのドルニ・ベストニツェ遺跡では,大小の竪穴住居が見つかり,大は15m×9mの楕円形で,共同家屋と考えられている。小は径6mの円形で,傾斜面にあるため,高い方の地面を削り,低い方は粘土と石で弧状に盛り上げており,中央に炉がある。周縁に5本の主柱を立てて小枝で支え,上にマンモスの骨や皮,木材,草などで造った屋根をのせていたと考えられる。…

【暖炉】より

…壁に造りつけられた採暖のための炉。ヨーロッパで一般化するのは近世以降のことである。…

【塩】より

…瀬戸内などの地域では,奈良時代に鉄製の塩釜の記録がみえ,また塩浜を思わせる記事が知られていることから,いち早く土器製塩法を脱し,原初的な塩田採鹹法と結んだ大型容器による煮沸煎熬が開始されたと考えられる。 土器製塩遺跡の構造は,香川県直島町喜兵衛島遺跡を例にとると,遺跡のほぼ中央に炉があり,その回りに作業面が広がり,ついでその外方に莫大な使用ずみの製塩土器,灰,炭などの捨て場が形成される。炉は石組みのもの,石敷きのもの,灰土で壁をつくるものなどあり,大は福井県大飯町船岡遺跡の長径約5m,短径約1.8mの石敷炉,小は香川県坂出市ナカンダ浜の長径約1.0m,短径約0.7mの灰土炉などがある。…

【茶室】より

…しかし茶屋は依然として存続し,茶会の施設として併用された。 当時の茶屋の具体的な構成はつまびらかでないが,〈竈土(くど)〉を設備していたことから,畳を敷き詰め炉を切っていた茶室とは異なる自由な雰囲気が想像される。茶屋は庭間の休息所といった性格のもので,そこでは茶の湯もくつろいだ趣向で行われた。…

※「炉」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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