等閑(読み)ナオザリ

デジタル大辞泉 「等閑」の意味・読み・例文・類語

なおざり〔なほざり〕【等閑】

[形動][文][ナリ]
いいかげんにしておくさま。本気でないさま。また、放置するさま。おろそか。「等閑な練習態度」「子供しつけ等閑にする」
ほどほどで、あっさりしているさま。
「よき人は、ひとへに好けるさまにも見えず、興ずるさまも―なり」〈徒然・一三七〉
[用法]なおざり・ないがしろ――「学業をなおざり(ないがしろ)にする」のように、いいかげんにする意では相通じて用いられる。◇「なおざり」は、手を抜いていいかげんにするさまや、すべきことをしないさまをいう。「なおざりに聞き流す」「なおざりにできない問題」◇「ないがしろ」は大切にすべきものを粗略に扱う、また無視するさまをいう。「親をないがしろにする」のように用いる。◇類似の語に「ゆるがせ」「おざなり」がある。「ゆるがせ」は「なおざり」と同じく、手を抜いておろそかにするさま。「一刻もゆるがせにできない」のように用いる。「おざなり」は、その場だけの間に合わせですませるさま。「おざなりな答弁
[類語]おろそかゆるがせ仮初め安易甘い手ぬるい生ぬるい甘っちょろいいいかげん手軽てがる安直適当杜撰ずさん放漫漫然閑却等閑とうかんお座なり粗末でたらめぞんざい投げ遣りちゃらんぽらん易きに付くなまじなまじっかなまなかなまじい生煮え微温的生半可行きあたりばったり不十分不完全不徹底不行き届き半端中途半端宙ぶらりん

とう‐かん【等閑】

物事を軽くみて、いいかげんに扱うこと。なおざり。
注意を―にしようわけはないので」〈鏡花婦系図
[類語]安易甘い手ぬるい生ぬるい甘っちょろいいいかげん手軽てがる安直適当杜撰ずさん放漫漫然閑却なおざりお座なりおろそかゆるがせ粗末でたらめぞんざい投げ遣りちゃらんぽらん易きに付く

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精選版 日本国語大辞典 「等閑」の意味・読み・例文・類語

とう‐かん【等閑】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 物事をいいかげんな気持ですること。気にもとめないで放っておくこと。なおざりにすること。おろそか。ゆるがせ。
    1. [初出の実例]「故殿御願両部曼荼羅并御本尊等、中宮御願極楽浄土、皆安置件堂、不可被等閑、努力努力」(出典:廬山寺文書‐天祿三年(972)五月三日・天台座主良源遺告)
    2. 「等閑にすることなく、常に心に留めて忘れざらんことを欲するのみ」(出典:学問のすゝめ(1872‐76)〈福沢諭吉〉一七)
    3. [その他の文献]〔張謂‐湖上対酒行〕
  3. ( 「とうかんない」の意で用いたものか ) 間柄がなおざりでないこと。ごく親しくして心を許しあっていること。心やすいこと。別懇懇親
    1. [初出の実例]「抑(そもそも)此集においては、他見をゆるすべからず。〈略〉繊芥のへだてなく、等閑の儀あさからざらむには、間(まま)これをゆるすべし」(出典古今著聞集(1254)跋)

なおざりなほざり【等閑】

  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙 深く心にとめないさま。本気でないさま。いいかげん。通りいっぺん。かりそめ。
    1. [初出の実例]「なをさりに秋の山べを越えくれば織らぬ錦をきぬ人ぞなき〈よみ人しらず〉」(出典:後撰和歌集(951‐953頃)秋下・四〇三)
    2. 「なをざりのすさびにつけても、つらしとおぼえられ奉りけむ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)葵)

等閑の補助注記

中古では「源氏」に多く見え、用法としては主に男性の女性に対する性情行動への評価として現われている。

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普及版 字通 「等閑」の読み・字形・画数・意味

【等閑】とうかん

なおざり。無事。唐・白居易琵琶行〕詩 今年笑し復た年 秋春風等閑に度(わた)る

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