精選版 日本国語大辞典「等」の解説
ら【等】
〘接尾〙
① 名詞に付いて、語調をととのえる。
※書紀(720)応神一三年三月・歌謡「香ぐはし 花橘(はなたちばな) 下枝(しづえ)羅(ラ)は 人皆取り 上枝(ほつえ)は 鳥居枯(ゐが)らし」
② 名詞に付いて、それと限定されない意を表わす。
(イ) 事物をおおよそに示す。
※万葉(8C後)一六・三八八四「彌彦神の麓に今日良(ラ)もか鹿の伏すらむかはごろも着て角つきながら」
※平中(965頃)一「この男のともだちどもあつまり来て、言ひなぐさめなどしければ、酒ら飲ませけるに」
(ロ) 主として人を表わす語また指示代名詞に付いて、複数であること、その他にも同類があることを示す。
※万葉(8C後)一・四〇「あみの浦に船乗りすらむをとめ等(ら)が玉裳の裾に潮満つらむか」
※平家(13C前)一「秦の趙高、漢の王莽、〈略〉是等は皆旧主先皇の政にもしたがはず」
(ハ) 人を表わす名詞や代名詞に付いて、謙遜また蔑視の意を表わす。自分に対する謙遜の気持は時代を下るとともに強くなり、相手や他人に対する用法は、古代では愛称、中世頃からは軽蔑した気持を表わす。
※古事記(712)中・歌謡「斯(か)もがと 我(わ)が見し子良(ラ) 斯くもがと 吾(あ)が見し子に うたたけだに 向かひ居(を)るかも い副(そ)ひ居るかも」
※万葉(8C後)三・三三七「憶良等(ら)は今は罷らむ子泣くらむそれその母も吾(わ)を待つらむそ」
③ 指示代名詞またはその語根に付いて、事物をおおよそに指す。不定で「いづら、いくら」は上代からあって「どのあたり、どれくらい」の意を表わしていると見られる。また、場所・方角で「ここら、そこら」「これら」「こちら、あちら」などがあり、近世には「ここいら、そこいら」など「いら」となったものもある。
※古事記(712)中・歌謡「横臼(よくす)に 醸(か)みし大御酒(おほみき) 甘(うま)良(ラ)に 聞こし以ち食(を)せ まろが親(ち)」
※万葉(8C後)二〇・四三六〇「浜に出でて 海原見れば 白浪の 八重折るが上に 海人小舟(あまをぶね) はら良(ラ)に浮きて」
とう【等】
[1] 〘名〙 物事の格付けをさしていう。しな。わかち。
※歌舞伎・月梅薫朧夜(花井お梅)(1888)一幕「死刑に処する罪人でさへ、その情状を酌量して等を減ずるのが今日の趣意ぢゃ」 〔礼記‐学記〕
[2] 〘接尾〙
① 物事を列挙する際、その一部だけを示して他を省略するのに用いる。など。たぐい。
※平家(13C前)二「堂衆に語らふ悪党と云は、諸国の竊盗、強盗、山賊、海賊等(トウ)〈高良本ルビ〉也」 〔漢書‐韓信伝〕
② 階級や順位を数えるのに用いる。
※令義解(718)官位「大納言 勲一等」
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