(読み)つぼね

精選版 日本国語大辞典 「局」の意味・読み・例文・類語

つぼね【局】

〘名〙
① 大きな建物の中で、臨時に簡単な仕切りをつけてしつらえた部屋。貴人などが社寺に参籠、通夜するおりの仏堂内の仕切りなどもいう。
※平中(965頃)七「この男のつぼねのまへに、女ども、立ちさまよひけり」
② 宮中や貴人の邸宅などで、主としてそこに仕える女性の住む私室として、仕切りへだてた部屋。曹司(ぞうし)
※伊勢物語(10C前)三一「むかし、宮の内にて、あるごたちのつぼねの前をわたりけるに」
③ ②を与えられている女房・女官
紫式部日記(1010頃か)消息文「ふとおしはかりに、いみじうなん才(ざえ)があると殿上人などにいひちらして、日本紀の御つほねとぞつけたりける」
上流階級の女性を尊んでいう語。多く女性の名前の下にそえて用いる。
※上杉家文書‐享祿三年(1530)一一月二五日・神余昌綱書状「就御服御拝領御礼御申、〈略〉其外上臈御局已下御返事下申候」
⑤ 御殿女中。長局。
※雑俳・柳多留‐一一(1776)「手水組では無いかなと局いひ」
局女郎(つぼねじょろう)の部屋。
仮名草子東海道名所記(1659‐61頃)一「はな歌をうたひ席駄をひきづり、局(ツボネ)の口にたち」
浮世草子好色二代男(1684)五「つぼねの金彌にのかせて、両人入て跡をさし籠」

きょく【局】

[1] 〘名〙
① いくつかに分けられた部分。くぎり。しきり。小分け。〔礼記‐曲礼上〕
② 家の中の、しきって隔ててあるところ。部屋。つぼね。〔色葉字類抄(1177‐81)〕
③ 役所などの、事務の一区分。また、それを担当する部署。〔二十巻本和名抄(934頃)〕
近世紀聞(1875‐81)〈染崎延房〉八「朝廷急に議政局を設け制度法令悉く其局(キョク)より出すべし」 〔陳琳‐為袁紹檄予州文〕
郵便局、電話局、放送局などの略称。
※田舎教師(1909)〈田山花袋〉五〇「局を休んで手伝に来て呉れた荻生さんとが」
⑤ 囲碁、将棋、双六などに用いる盤。また、(その盤を使ってする)囲碁、将棋、双六などの勝負。
※醍醐寺本遊仙窟康永三年点(1344)「取双六局(はむ 別訓 キョク)」 〔班固‐弈旨〕
⑥ さしあたっての場合、仕事、事柄。当面する事柄、仕事、状況。
※平和克復の詔書‐大正九年(1920)一月一〇日「今斯の紛擾の局を収め、安寧を将来に規るは」
[2] 〘接尾〙 囲碁、将棋、双六などの勝負を数えるのに用いる。
※格五新譜(1844‐54頃か)布勢巻「対手第二局 桂馬の定勢なり」 〔南史‐蕭恵基伝〕

きょく‐・す【局】

〘自サ変〙
② 一部に限られる。かたよる。
※学制に関する意見箚子‐安政四年(1857)閏五月一五日「聖賢と申は、多能にして能を頼まず、能に伐(ほこ)らず、技芸を修めて技芸に局せず」

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デジタル大辞泉 「局」の意味・読み・例文・類語

きょく【局】[漢字項目]

[音]キョク(漢) [訓]つぼね
学習漢字]3年
〈キョク〉
小さく仕切る。仕切られた部分。「局限局所局地局部限局
役所などの業務分担の区分。「局員局長医局開局支局当局部局薬局
きょくと通用)曲がりちぢまる。「局蹐きょくせき
碁盤や将棋盤。また、その一勝負。「局面一局棋局結局終局対局
情勢。「危局時局政局戦局大局難局破局
〈つぼね〉「長局
[名のり]ちか
[難読]美人局つつもたせ

きょく【局】

[名]
官庁などで、業務分担の大きな区分。また、それを扱う部署。部・課などの上にある。
郵便局」「放送局」などの略。
当面の事件・仕事・職務。「そのに当たる」
囲碁・将棋などの盤。また、その盤を使ってする勝負。「に向かう」
[接尾]助数詞。囲碁・将棋などで、対局数を数えるのに用いる。「碁を三打つ」「名人戦第五
[類語](1セクション

つぼね【局】

宮中や貴人の邸宅で、そこに仕える女性の居室として仕切った部屋。また、大きな建物の中を臨時に仕切ってつくった部屋。曹司ぞうし
「ある御達の―の前を渡りけるに」〈伊勢・三一〉

1を与えられている女房・女官。
「日本紀の御―とぞつけたりける」〈紫式部日記
将軍家などに仕える地位のある女性を敬っていう語。「お万の」「春日
下級女郎がいる部屋。
「都に近き女郎の風俗も変はりて、はし―に物言ふ声の高く」〈浮・一代男・五〉
局女郎つぼねじょろう」の略。
格子、―といふこともなく」〈浮・一代男・三〉

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改訂新版 世界大百科事典 「局」の意味・わかりやすい解説

局 (つぼね)

殿舎の中の仕切られた部屋を意味し,とくに宮中や貴人に仕える女房の私室をいい,転じて局の持主を指す称となった。位階を冠して一位局,二位局などと称し,あるいは官職を冠して大納言局,中納言局などというのは上﨟の女房で,按察使局(あぜちのつぼね),小督局(こごうのつぼね)などはこれに次ぐ。また中世以降宮中の重要な地位となった勾当内侍(こうとうのないし)は,その候所が紫宸殿から清涼殿に通ずる長橋の傍にあったので,長橋局とよばれた。近くは明治天皇の生母中山慶子,大正天皇の生母柳原愛子が二位局とか一位局と称され,武家でも将軍の居所に仕えた女房は局を称し,将軍徳川家光の乳母斎藤氏が朝廷から春日局の称をたまわったのは有名である。さらに局女郎など遊女の居所も局と称した。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「局」の意味・わかりやすい解説


つぼね

宮殿内の屏風几帳 (きちょう) などで区画されて設けられた部屋,転じてそこに居住を許された女房などをいう。局の称は,『令義解 (りょうのぎげ) 』に「太政官内総有三局 (少納言局,左弁官局,右弁官局) 」を初見とし,以来,江戸時代まで,宮廷に奉仕する女官や幕府の大奥の女中などの称として用いられた。

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百科事典マイペディア 「局」の意味・わかりやすい解説

局【つぼね】

女官の部屋。名の由来は壺のように間仕切りがあるため。並んでいる場合は長局,局町とも。転じてその住人である女官。近世では下級の女郎(局女郎)の異称。
→関連項目女房

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