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ちゅう

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説


ちゅう

儒教の根本道徳の一つ。また日本の封建時代の道徳観念の中軸をなし,一般に「忠孝」として用いられる。忠とは,元来,中と心の2字を結合してつくられた文字で,内省してみずからを欺かず良心の命じるままに従うこと,すなわち,真心を意味した。中国の戦国時代,恩顧と献身という君臣間の秩序,結合を確立する必要があった時代に発展した。日本では,武士の主従関係が確立し,従者の主君への義務を忠と呼ぶようになってから,忠道徳が強調された。封建時代における忠は直接的個人的関係における義務であった。明治維新により封建制度が廃絶され国民国家が成立すると忠は新たな意味づけをされて国民の義務とされた。国民道徳論は日本国民は皇室を宗家とする一大家族であるという家族国家観に立って家族道徳と国民道徳とは一致するとして忠孝一本を主張し,天皇に対する忠孝が国民の義務であるとした。

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デジタル大辞泉の解説

ちゅう【忠】

まごころをこめて、よくつとめを果たすこと。「を尽くしていさめる」
君主または国家に対して、まごころを尽くすこと。忠義。忠誠。「ならんと欲すれば孝ならず」
弾正台(だんじょうだい)判官(じょう)。大少の別がある。

ちゅう【忠】[漢字項目]

[音]チュウ(呉)(漢) [訓]じょう
学習漢字]6年
真心。誠意を尽くすこと。まじめ。「忠言忠告忠実
主君や国家にひたすら尽くすこと。「忠義忠勤忠君忠孝忠臣尽忠誠忠不忠
[名のり]あつ・あつし・きよし・すなお・ただ・ただし・ただす・つら・なり・のり
[難読]忠実(まめ)

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世界大百科事典 第2版の解説

ちゅう【忠】

忠という文字は,まごころ,まことを意味し,まごころをもって相手を思いやることをさしていたが,儒教が成立した時代の中国で,君臣の関係を説く際に忠が強調されたために,臣が君に仕える道を忠といい,親子の間の孝と並べて人間関係の基本とされるようになった。中国の文化を受容して形をととのえた日本の古代社会では,当然,忠の道徳が教えられ,臣は忠をもって君に仕え,君は国を憂えて世を治めるべきものと説かれた。古代の末に姿をあらわす武士の社会では,主君のに対する従者の忠が重んぜられ,中世の軍記物には,主君のために身命を惜しまない武士の行動が美談として描かれ,忠臣は二君に仕えずという絶対的な忠が強調された。

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大辞林 第三版の解説

ちゅう【忠】

真心をこめて物事をすること。まごころ。
真心をこめて国家や主君に仕えること。臣下としての本分を全うすること。忠義。忠誠。忠節。
律令制で、弾正台の判官じよう。大少の区別がある。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説


ちゅう

中国倫理思想の一概念。字義からいうと、中なる心、真心。かならずしも君臣間の道徳に限らない。「人の為に謀(はか)って忠ならざりしか」(『論語』学而篇(がくじへん))。孔子の道は「忠恕(ちゅうじょ)」で一貫していたという(里仁(りじん)篇)。真心と思いやり。もっとも臣が君に対して真心で仕えることも忠。「下(しも)と為(な)りては克(よ)く忠」(『書経』伊訓)。だいたい初期の儒教倫理では、父子は天合(てんごう)(先天的関係)、君臣は義合(ぎごう)(合わせ物、離れ物)であった。孔子、孟子(もうし)とも、親への孝の前には、国家への忠誠など無視してよいと考える。忠が臣下の道徳として固定し始めるのは戦国末の荀子(じゅんし)あたり(『荀子』臣道篇)である。秦(しん)・漢の大帝国が成立してから忠の比重はいよいよ大きくなる。後漢(ごかん)の儒者馬融(ばゆう)は、『孝経』になぞらえて『忠経』を著した。『晋書(しんじょ)』以降の歴代の史書は、「忠義伝」の項目を立てて、忠臣を顕彰する。しかし明(みん)の教育勅語「六諭(りくゆ)」でも依然、孝が忠に優先する。[本田 濟]

日本

忠の概念は、日本には漢語・漢学を通じて早くから移入され、『日本書紀』、宣命(せんみょう)以来、史書、物語、仏書などに多くみいだすことができる。もともと忠とは、心のうちなる真心のことであり、自分自身にもいうが、他人に向けたものをいうことが多い。日本の忠には、その他者志向の性質がとりわけ強い。江戸時代の儒者伊藤仁斎(じんさい)は「人の事を謀ること、おのが事を謀るごとく、一毫(いちごう)の尽くさざる無き、まさに是(こ)れ忠」(『語孟字義(ごもうじぎ)』)として、忠とはどこまでも徹底して人を思いやり、人に尽くすことだという。思いやりの純粋さに忠をとらえるのである。ところで、その忠が志向する他者はおおむね社会的上下関係(君臣関係)の上位者とされることが多く、この場合、家族的上下関係(親子関係)における孝と対立する。この「君への忠」の強調(忠君思想)も、とくに武家の思想やその反映を受けた近世思想には強く流れている。もとより忠孝は一体だと説かれるが、しかし社会集団かそれとも家族かという際には、忠・忠義を中心とすることが多く、家族=孝を重んずる中国とは対照的である。この傾向は、幕末には水戸学や志士の忠孝・天皇忠誠などに変形して、やがて明治以降の日本社会の一つの原理ともなった。[黒住 真]
『赤塚忠・福永光司・金谷治・山井湧編『中国文化叢書2 思想概論』(1968・大修館書店) ▽和辻哲郎著『日本倫理思想史』上下(1952・岩波書店) ▽丸山真男著『忠誠と反逆』(『近代日本思想史講座』所収・1960・筑摩書房)』

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世界大百科事典内のの言及

【孝】より

…《孝経》においては,天子から庶人にいたるまでの各階層それぞれの〈孝〉のありかたが説かれるとともに,〈孝〉は天地人の三才をつらぬく宇宙的原理にまで高められている。 〈孝〉は〈忠〉とあわせて〈忠孝〉とよばれることが多いが,本来〈忠〉に対して〈孝〉はより本源的であり,〈忠〉は〈孝〉から派生するものと考えられた。〈孝を以て君に事えれば則ち忠〉とか,〈忠臣を求むるには必ず孝子の門においてす〉とかいわれたのはそのためである。…

※「忠」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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