(読み)イキ

デジタル大辞泉 「息」の意味・読み・例文・類語

いき【息】

口・鼻から空気を吸ったり吐いたりすること。また、吸う空気や吐く空気。「大きくをする」「が荒い」
二人以上で何かをする場合の、相互の気持ちのかねあい。調子呼吸。「二人のがぴったりだ」
芸事要領・こつ。「名人を盗む」
ゆげ。蒸気
「飯も焚きたての―の立つやつで」〈藤村破戒
音声学で、声帯振動を伴わない呼気。ごくまれには吸気も含む。
いのち。
「あずの上に駒をつなぎてあやほかど人妻児ろを―に我がする」〈・三五三九〉
[下接語]青息吐息大息風の息片息さか死に息め息吐息寝息鼻息一息太息虫の息
[類語]呼吸気息息の根寝息息吹息衝き息遣い息差し

そく【息】[漢字項目]

[音]ソク(呉) [訓]いき やすむ いこう やむ
学習漢字]3年
〈ソク〉
いき。いきをする。「気息絶息喘息ぜんそく大息嘆息窒息
生きる。生活する。「消息生息棲息せいそく
休む。いこう。「安息休息脇息きょうそく
やむ。しずめる。「息災終息
こども。むすこ。「息女愛息愚息子息令息
利子。「利息
〈いき〉「寝息鼻息青息吐息
[名のり]おき・き・やす

そく【息】

むすこ。子息。
「君のとこの―もはやく洋学をまなばせなせえ」〈魯文安愚楽鍋

おき【息】

いき。「おきそ息嘯)」など複合語要素としてのみ用いられる。

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精選版 日本国語大辞典 「息」の意味・読み・例文・類語

いき【息】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 口や鼻を通して吐いたり吸ったりする気体。呼気と吸気。特に、呼気をさす場合が多い。
    1. [初出の実例]「其の戴(ささ)げたる角、枯樹の末(えだ)に類(に)たり。〈略〉呼吸(いぶ)く気息(イキ)朝霧に似たり」(出典:日本書紀(720)雄略即位前(図書寮本訓))
  3. 空気を吐いたり吸ったりすること。呼吸。
    1. [初出の実例]「伊企(イキ)だにも 未だ休めず 年月も 未だあらねば」(出典:万葉集(8C後)五・七九四)
  4. 音声学で、声帯の振動を伴わない呼気。
  5. 勢い。けはい。
    1. [初出の実例]「亦、汝霊(くしひ)に異(あやし)き威(かしこさ)有り、子等復た倫(ひと)に超(すぐ)れたる気(イキ)有ることを明かさむと欲ふ」(出典:日本書紀(720)神代下(鴨脚本訓))
  6. 命。いきのお。
    1. [初出の実例]「あずのうへに駒をつなぎて危ほかど人妻児ろを伊吉(イキ)にわがする」(出典:万葉集(8C後)一四・三五三九)
  7. 二人以上で何かをする際の相互の気持のかねあい。調子。呼吸。→息が合う
    1. [初出の実例]「二十二日の間、ただの一日もその両方の呼吸(イキ)のしっくりしなかった不愉快さ」(出典:春泥(1928)〈久保田万太郎〉冬至)
  8. 技芸の深い要領。こつ。→息を盗む
  9. 茶などのかおり。におい。
    1. [初出の実例]「のみ口の方上になるに依て、茶のいきも上へあがり」(出典:利休客之次第(1587))
  10. ゆげ。蒸気。
    1. [初出の実例]「燻と云は、薬を煎じて其あつきいきを以て蒸す様な事があるぞ」(出典:史記抄(1477)一四)
  11. 人からの圧力や影響。→息が掛かる
  12. ( 比喩的に ) 風や火の勢いなどが強くなったりする作用。
    1. [初出の実例]「または折々は風の呼息(イキ)、吹くとしもなく辻巻きて」(出典:有明集(1908)〈蒲原有明〉坂路)

そく【息】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 生きること。生存。また、生むこと。繁殖すること。
  3. 子供。特に、むすこ。子息。息男。
    1. [初出の実例]「今日内府息達着袴」(出典:小右記‐長元四年(1031)二月二八日)
    2. 「むろまちとのより、いまて川殿御そくの御しやくのもとり御申にて、さまのかみを申さるる」(出典:御湯殿上日記‐長享元年(1487)八月二九日)
    3. [その他の文献]〔戦国策‐趙策・孝成王〕
  4. 利息。利子。
    1. [初出の実例]「司別給公廨銭惣一千貫、交関取息永充公用失其本」(出典:続日本紀‐天平一六年(743)四月丙辰)
    2. 「是をもて米を買、農家に借す。息をとること世人より甚減ずる故にや」(出典:近世畸人伝(1790)一)
    3. [その他の文献]〔史記‐孟嘗君伝〕
  5. やすむこと。休息。
    1. [初出の実例]「為院衆等飯、姑在院与衆作息」(出典:空華日用工夫略集‐至徳元年(1384)九月九日)

いきみ【息】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「いきむ(息)」の連用形名詞化 ) 息(いき)むこと。また、特に、陣痛をいう。
    1. [初出の実例]「Ikimi(イキミ)ガ クル〈訳〉陣痛が襲うこと」(出典:和英語林集成(初版)(1867))

おき【息】

  1. 〘 名詞 〙いき(息)」のこと。
    1. [初出の実例]「おき 気又息をよめり」(出典:和訓栞(1777‐1862))

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普及版 字通 「息」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 10画

[字音] ソク
[字訓] いき・いこう・やむ・そだつ

[説文解字]
[金文]

[字形] 会意
自(じ)+心。自は鼻の象形字。鼻息で呼吸することは、生命のあかしである。〔説文〕十下に「喘(あへ)ぐなり」とするのは、気息の意。〔荘子、大宗師〕に「眞人の息(いき)するや踵(かかと)を以てし、衆人の息するや喉(のど)を以てす」とあり気息の法は養生の道とされた。生息・滋息(ふえる)の意に用いる。また〔戦国策、趙四〕に「老臣の賤息」という語があって、子息をいう。

[訓義]
1. いき、いきする。
2. いこう、やすむ、やむ、ねぎらう。
3. そだつ、のびる、ひろがる。
4. こども。
5. とまる、きえる、ほろびる、すてる。
6. 終助詞、思と同じように用いる。

[古辞書の訓]
〔名義抄〕息 イコフ・イキ・ヤスム・ヤム・イキドホル・ムナシ・ヲフ・キユ・イタハル・オコス・オコル・ムヤス・アヤマル・オソル・カヘル・トドム・トドマル・ナゲク・オモフ・ヤスシ・ネヤ(コナリ)・ウル・ウフ/息 アリサマ

[声系]
〔説文〕に息声として・熄など四字を収める。止息の意をもつものがある。

[語系]
息・熄sikは同声。熄に畜火・減火の両義がある。息に止息・滋息の意があるのと同じ。

[熟語]
息意・息胤・息陰・息影・息偃・息宴・息燕・息穏・息禍・息駕・息機・息休・息・息肩・息言・息交・息・息災・息止・息除・息女・息壌・息心・息人・息銭・息喘・息土・息馬・息婦・息兵・息望・息脈・息民・息滅・息悒・息養・息利・息慮
[下接語]
安息・晏息・宴息・偃息・燕息・慨息・気息・帰息・休息・居息・脅息・愚息・姑息・子息・止息・滋息・終息・瞬息・消息・生息・栖息・棲息・絶息・喘息・息・大息・太息・退息・嘆息・窒息・長息・吐息・寧息・息・鼻息・息・閉息・遊息・利息・留息・令息

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改訂新版 世界大百科事典 「息」の意味・わかりやすい解説

息 (いき)

呼吸によって生ずる空気の運動のことであり,気息,気ともいわれるが,同時に宇宙に遍満する大気(または風)と連関するとともに人間の存在を支える生命力とも考えられた。したがってその意義も,生理的実体をさす段階から形而上的な霊気をさす段階にいたるまで多様な展開をみせた。ギリシア語プシュケー(魂,霊魂)はもと気息を意味した。またプネウマpneumaももと気息,風,空気を意味したが,のちには存在の原理とされるにいたった。古代インドでは,プラーナprāṇaが息,気息または呼気を意味したが,それは同時に人間存在の構成要素の一つである風(大気)をも意味し,やがて個人我の根拠とされた。中国ではが人間の気息および生命力の根源を意味するとされたが,のちにその概念は五行説や陰陽説と結びついて宇宙構成の原理として説明されるようになった。日本では息(いき)は〈生き〉と同根の語とされ,神(イザナギノミコト)の呼気が風神の生命を誕生せしめたなどの例はそのことを証している。
呼吸
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栄養・生化学辞典 「息」の解説

 空気を吸い込みはくこと.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

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