(読み)ボ

デジタル大辞泉 「母」の意味・読み・例文・類語

ぼ【母】[漢字項目]

[音](慣) モ(呉) [訓]はは
学習漢字]2年
〈ボ〉
はは。「母子母性母体母胎母堂母乳異母義母慈母実母生母聖母祖母尊母悲母父母養母老母
父母の姉妹。「叔母伯母
母のような存在。「寮母
年老いた女。「漂母
(「」と通用)母親に代わって子供を育てる女。うば。おもり。「乳母にゅうぼ保母
物の出てくる所。育った所。もとになるもの。「母音ぼいん母型母校母港母国母船酵母字母酒母分母
〈モ〉はは。「悲母父母ぶも鬼子母神きしもじん
〈はは〉「母上母親
[難読]乳母うば・めのと祖母おおば御母おかあさん小母おば伯母おば叔母おば御祖母おばあさん母屋おもや雲母きらら水母くらげ母衣ほろ

はは【母】

親のうち、女性のほう。実母義母継母の総称。母親。おんなおや。⇔
物事を生み出す根源。「なる大地」「必要は発明の
[補説]平安時代中期以降近世のころまで「はわ」と発音・表記したが、のち、「はは」に戻った。
[類語](1母親女親おんなおやかあさんおっかあお袋母じゃ人母じゃ阿母あぼ慈母じぼママ(生みの母)生母せいぼ実母じつぼ(義理の母)義母継母けいぼまま母嫡母ちゃくぼ養母しゅうと・しゅうとめ(他人に自分の母をいう語)家母かぼ愚母ぐぼ(敬称)お母さんかあ母上ははうえ母君ははぎみ母御ははご母堂ぼどう尊母そんぼ北堂令堂令慈/(2母胎

おも【母】

はは。
韓衣からころむ裾に取り付き泣く子らを置きてそ来ぬや―なしにして」〈・四四〇一〉
乳母。ちおも。
「みどり子のためこそ―は求むといへ飲めや君が―求むらむ」〈・二九二五〉

はは【母】[書名]

《原題、〈ロシア〉Mat'ゴーリキー長編小説。1907年刊。労働運動を繰り広げる息子とその友人の影響を受けた母親が、階級意識に目覚めて革命運動に加わっていく過程を描く。

はわ〔はは〕【母】

はは

も【母】[漢字項目]


あも【母】

「はは」をいう上代語。おも。
「―にこそ聞こえずあらめ」〈雄略記・歌謡〉

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精選版 日本国語大辞典 「母」の意味・読み・例文・類語

はは【母】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 ( 「はわ」の時代も )
    1. 親のうちの女の方。生んだり、育てたりしてくれた女親。実母・養母・継母の総称。母親。おんなおや。めおや。
      1. [初出の実例]「此の間に、天つ位に、嗣坐(つぎます)べき次と為て皇太子(ひつぎのみこ)侍りつ。是に由りて其の婆婆(ハハ)と在(いま)す藤原夫人を皇后と定賜ふ」(出典:続日本紀‐天平元年(729)八月二四日・宣命)
      2. 「父はなほびとにて、ははなん藤原なりける」(出典:伊勢物語(10C前)一〇)
      3. 「はわにとへとおほせらる」(出典:古本説話集(1130頃か)五六)
      4. 「義母(ハハ)も義姉(あね)たちも」(出典:アパアトの女たちと僕と(1928)〈龍胆寺雄〉六)
    2. 物事を生み出すもととなるもの、また、人。
      1. [初出の実例]「其摩訶般若波羅蜜者、諸仏之母也」(出典:続日本紀‐宝亀五年(774)四月己卯)
      2. 「蓋し窮困は創造の母なり」(出典:西国立志編(1870‐71)〈中村正直訳〉五)
  2. [ 2 ] ( 原題[ロシア語] Mat' ) 長編小説。ゴーリキー作。一九〇六年英文で発表。翌年ロシア語版刊。無知と忍従に生きてきた一人の母親が、革命運動に情熱を傾ける息子を通じて、みずからも社会変革の意識にめざめていく過程を描き、小説上の社会主義リアリズムへの道を開いた。

母の語誌

( 1 )ハ行子音は、語頭ではp→Φ→h、語中ではp→Φ→wと音韻変化したとされる(Φは両唇摩擦音。Fとも書く)。これに従えば、「はは」は papa → ΦaΦa → Φawa → hawa となったはずで、実際、ハワの形が中世に広く行なわれたらしい。仮名で「はは」と書かれたものの読み方がハハなのかハワなのかは確かめようがないが、すでに一二世紀の初頭から[ 一 ]の挙例「古本説話集」など、「はわ」と書かれた例が散見されるから、川のことを「かは」と書いてカワと読むごとく、「はは」と書いてハワと読むことも少なくなかったと考えられる。キリシタン資料を見ると、「日葡辞書」では Fafa(ハハ)と Faua(ハワ)の両形が見出しにあるが、「天草本平家」などにおける実際の用例ではハワの方が圧倒的に多い。
( 2 )一七世紀初頭までは優勢だったハワが滅んで、現代のようにハハの形のみが用いられるようになったのには、次のようないくつかの原因が考えられる。( イ )他の親族名称、チチ・ヂヂ・ババからの類推が働いた。すなわち、これらの親族名称は、二音節語、同音反復、清濁のペアをなす、といった特徴があるから、ババから期待される形はハハである。( ロ )江戸時代には、日常の口頭語で母を意味する語としては、カカ(サマ)・オッカサンなどが次第に一般的となり、「はは」は子供が小さいときに耳で覚える語ではなく、大人になってから習得する語になっていった。( ハ )江戸時代でも、仮名表記する際には「はは」が一般的であり、この表記の影響による。


おも【母】

  1. 〘 名詞 〙
  2. はは。
    1. [初出の実例]「韓衣(からころむ)裾に取りつき泣く子らを置きてそ来ぬや意母(オモ)なしにして」(出典:万葉集(8C後)二〇・四四〇一)
  3. 乳母(うば)。乳を飲ませる者。ちおも。めのと。
    1. [初出の実例]「緑児の為こそ乳母(おも)は求むと言へ乳(ち)飲めや君が於毛(ヲモ)求むらむ」(出典:万葉集(8C後)一二・二九二五)

母の語誌

上代語であり、中古以降は「おもとじ」など複合語の構成要素にのみ見られる。東国では「おも」「おもちち」とともに「あも」「あもしし」「あもとじ」の形が見える。


かか【母・嚊・嬶】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 子が母親を敬い親しんで呼ぶ語。おとなが子の立場に立って使う場合もある。次第に敬意は失われた。
    1. [初出の実例]「哀にもいまだ乳を飲む蜑(あま)の子のかかのあたりやはなれざる覧」(出典:九州道の記(1587)四月二六日)
    2. 「お清よ、ととさまが見へたらかかに知らしゃやと」(出典:浄瑠璃・女殺油地獄(1721)上)
  3. 近世、下層階級で、妻をいう語。他に対して自分の妻をいったり、他家の主婦をさしたりする。
    1. [初出の実例]「五郎兵衛かか、かしわもちくれる」(出典:天正日記‐天正一八年(1590)七月二三日)

あも【母】

  1. 〘 名詞 〙 上代語。母。おも。
    1. [初出の実例]「道に闘(あ)ふや 尾代(をしろ)の子 阿母(アモ)にこそ 聞えずあらめ 国には 聞えてな」(出典:日本書紀(720)雄略二三年八月・歌謡)

母の語誌

( 1 )「書紀‐歌謡」の例のほかは「万葉集」では防人歌に見えるところから、「おも」の古形が東国方言に残ったと見られる。
( 2 )中央語「ちちはは」に対する「あもしし」あるいは「おもちち」は、母が先にくるところから、古代母系制の名残と見る説もある。


はわはは【母】

  1. 〘 名詞 〙はは(母)

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普及版 字通 「母」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 5画

[字音] ボ・モ
[字訓] はは・ばば・うば・もと

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 象形
女に両乳を加えた形。〔説文〕十二下に「牧(やしな)ふなり」と声の近い語によって訓し、「子を(いだ)く形に象る。一に曰く、子にするに象るなり」とするが、子をそえた字は(乳)である。金文に女子名を可母・魚母のようにいい、男子に白懋父(はくぼうほ)のようにいうのと同じく、尊称としての用法であろう。金文では母と「毋(なか)れ」とは、同じ字形を用いている。

[訓義]
1. はは、おんなおや。
2. ばば、老女。
3. うば、めのと。
4. もと、根源。
5. 拇(ぼ)と通じ、おやゆび。
6. 毋(ぶ)と通じ、なし、なかれ。

[古辞書の訓]
〔新字鏡〕母 波々(はは)/從母 波々加姉妹(ははが姉妹)/從 波々方姉妹(はは方姉妹)/外 母方乃波々(母方のはは) 〔和名抄〕母 波々(はは)。日本紀私記に云ふ、母、以路波(いろは) 〔名義抄〕母 イロハ・ハハ 〔字鏡集〕母 イロハ・ナシ・ウネ・ハハ・ミチ・ツクル

[熟語]
母韻・母艱・母儀・母兄・母后・母猴・母国・母財・母子・母氏・母師・母慈・母銭・母体・母地・母党・母堂・母徳・母範・母母
[下接語]
亜母・阿母・異母・雲母・王母・仮母・家母・鬼母・義母・継母・賢母・後母・酵母・国母・蚕母・字母・慈母・実母・酒母・従母・叔母・出母・庶母・諸母・丈母・食母・親母・水母・生母・聖母・銭母・祖母・尊母・大母・嫡母・同母・乳母・伯母・漂母・父母・傅母・文母・保母・木母・民母・孟母・養母・酪母・老母

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「母」の意味・わかりやすい解説

母(ゴーリキーの小説)
はは
Мать/Mat’

ロシア・ソ連の作家ゴーリキーの長編小説。社会主義リアリズムの典型的作品。最初英文で、1906年12月ニューヨークの『アップレトン・マガジン』誌に連載。ロシア語版は07~08年『ズナーニエ』(知識)文集に発表された。厳しい検閲によって削除された箇所を埋め、完全な形で出たのは17年の生活と知識社版が最初である。実際に1902年ソルモフカでメーデーの際逮捕されたピョートル・ザローモフ母子がモデル。工員パーベルが社会の不公正に反発し、社会主義サークルに参加し、帰宅がしばしば遅くなる。それを母親ペラゲーヤは初め心配する。やがて自宅がサークルの会場になり、盗み聞きするうちに息子たちの正しさを信じるようになる。経費を工員負担で沼地を埋め立てる計画がもちあがり、工員たちは工場側と対立。リーダーの息子は逮捕される。母親がかわりにビラ配りをする。息子の再逮捕後の法廷で母親は息子たちの正しさを訴え、そのため彼女も逮捕され、「真実の火は消えぬ」と叫ぶところで終わる。なお、これを大胆に脚色したプドフキン監督による映画化作品(1926)は、サイレント映画史上の名作として評価が高い。

[佐藤清郎]

『横田瑞穂訳『母』全二冊(岩波文庫)』『黒田辰男訳『母』全二巻(1976・新日本出版社)』


母(パール・バックの小説)
はは
The Mother

アメリカの女流作家パール・バックの中編小説。1934年刊。中国の農民の一人である母は、家族の世話、畑仕事、家畜のめんどうと一日中懸命に働く。ある日、ささいなことで亭主とけんか、亭主は蒸発してしまう。母は亭主の帰りを待つが、やがてあきらめて家事、育児に精を出す。ある日、土地代理人と過ちを犯すが、その件が母の生涯の心のしこりとなる。幼時から眼性が悪く、やがて盲目になり、山向こうの村の白痴に嫁いだ娘の死も眼疾のためかと心を痛める。作者は、不幸な一人の母を通して永遠の母性像を追求する。

[板津由基郷]

『深沢正策訳『母』(1956・創芸社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「母」の意味・わかりやすい解説

母 (はは)
Mat’

ゴーリキーの長編小説。1906年アメリカで第1部が,翌07年初めにイタリアのカプリ島で第2部が書かれた。最初は1906-07年にニューヨークの《アップルトン・マガジンAppleton Magazine》誌に英訳で発表され,ついで07-08年に検閲でかなりの削除を受けて本国ロシアの《ズナーニエ》文集に連載された。単行本(ロシア語)は1907年ベルリンで刊行された。1901年から02年にかけてニジニ・ノブゴロド(現,ゴーリキー)市とその近郊のソルモボで起きた労働運動に基づいて書かれた小説である。貧しい工場労働者パーベルが革命運動に加わることを恐れていた単純で信仰心のあつい文盲の母ニーロブナは,やがて息子の同志たちの誠実さや犠牲的な精神を理解すると,自らも進んで運動に参加する。レーニンは原稿の段階で読み,07年にロンドンで初めて会ったゴーリキーに,革命運動のためには〈きわめて時宜に適した本である〉と語った。ゴーリキー自身がしばしば語っているように,《母》は文学的には失敗作であったが,革命運動を初めて全体的に取り上げた〈時宜を得た〉作品として世界中の読者の心に訴え,記録的なベストセラーとなり,プロレタリア文学の範例として大きな影響を与えた。なお,32年ブレヒトにより劇化された。
執筆者:

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百科事典マイペディア 「母」の意味・わかりやすい解説

母【はは】

ゴーリキーの長編小説。《Mat'》。1907年作。1902年のストライキ事件に取材した作品で,メーデーのデモに参加して逮捕された青年労働者パーベルの母親ニーロブナが,革命的信念に目ざめていく過程を描く。レーニンに激賞され,長らく社会主義リアリズムの草分け的作品と評価された。1926年プドフキン監督によって映画化。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「母」の意味・わかりやすい解説


はは
Mat'

ソ連映画。 1926年作品。監督フセボロド・プドフキン。脚本ナターン・ザルヒ。ゴーリキーの著名な原作の映画化。プドフキンの長編劇映画第1作であり,これによって彼の名はエイゼンシュテインと並び国際的になった。モスクワ芸術座の俳優ベラ・バラノフスカヤが母親役を,同じくニコライ・バターロフが息子役を演じており,画面は音楽的な連結 (モンタージュ) を見せている。


はは
Mat'

ロシア,ソ連の作家 M.ゴーリキーの長編小説。 1907年発表。 02年のニジニー・ノブゴロドの労働者運動における実在の人物や事件に取材した小説で,D.フールマノフ,A.オストロフスキーらに大きな影響を与えた。

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デジタル大辞泉プラス 「母」の解説

1963年公開の日本映画。監督・原作・脚本:新藤兼人、撮影:黒田清巳。出演:乙羽信子、杉村春子、高橋幸治、加藤武、殿山泰司、頭師佳孝、横山靖子ほか。

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動植物名よみかた辞典 普及版 「母」の解説

母 (モ)

植物。沈水植物の総称

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【ブレヒト】より

…《三文オペラ》と同じくK.ワイルの作曲によって上演されたオペラ《マハゴニー市の興亡》(1929)の注にまずこの理論の輪郭が示される。ナチス登場の前夜には,教育劇《処置》やM.ゴーリキーの同名の小説を劇化した《母(おふくろ)》(1930ころ),《屠殺場の聖ヨハンナ》(1929‐31)のような政治的主題をテーマとした新形式の作品が書かれたが,いずれも観客自身に,提起された問題を考察し認識に達する過程を委ねているのが特色である。 33年2月27日の国会放火事件の翌日亡命したブレヒトは,同年暮にデンマークに落ち着くまでの間にも,バレエ劇《七つの大罪》や寓意劇《まる頭ととんがり頭》を執筆した。…

【日本映画】より

…あと二つは,〈蒲田調〉と呼ばれる作風の松竹映画と,これに対して〈日活調〉と呼ぶことのできる日活映画であり,ともに現代劇が中心になっている。 松竹の蒲田撮影所からは,《虞美人草》(1921)で人気スターになった栗島すみ子につづいて,川田芳子,五月信子らの人気女優が続出し,日本映画における〈スター・システム〉誕生の転機となったことで知られる栗島・川田・五月共演の《母》(1923。野村芳亭監督)を一つの頂点とするメロドラマが多くつくられた。…

【プドフキン】より

…25年,最初の監督作品としてパブロフの条件反射学説の科学ドキュメンタリー《頭脳の機能的構造》をつくる。つづいてゴーリキーの小説をもとに,ダイナミックなモンタージュで知られる《母》(1926),エイゼンシテインの《十月》と並ぶ革命10周年記念映画《聖ペテルブルグの最後》(1927),モンゴル民族の解放闘争を描いた《アジアの嵐》(1928)によってソビエトのみならず世界映画の先頭に立つ。《母》の製作中に〈モンタージュ〉の理論的体系化に着手し(のち1928年にこれを改訂したものが《映画監督と脚本論》としてベルリンで出版された),28年,まだトーキーを製作していなかったソビエトでエイゼンシテイン,アレクサンドロフと連名の〈トーキーに関する宣言〉を発表して,新しい映画形式の進むべき道は映像と音の対位法的処理にあることを示した。…

※「母」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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