利口(読み)りこう

精選版 日本国語大辞典 「利口」の意味・読み・例文・類語

り‐こう【利口・利巧カウ・悧巧カウ

〘名〙 (形動)
① (━する) 弁舌がたくみなこと。また、そのさま。口先がうまくて実のないことの意にも用いられる。巧言。利舌。
※続日本紀‐延暦七年(788)六月丙戌「名足耳目所渉、多記於心、加以利口剖断無滞」
今昔(1120頃か)二八「異殿上人、実に和君行きて利口に云ひ聞せよ、と云ひ契て、散ぬ」 〔書経‐周官〕
② (━する) 滑稽なことをいうこと。軽口をいうこと。また、そのさま。冗談。しゃれ。
※宇治拾遺(1221頃)序「少々は空物語もあり、利口なる事もあり、様々やうやうなり」
③ 心のはたらきのすばやくさといこと。賢明なこと。特に、気がきいて身の処し方がたくみなこと。世智にたけていること。また、そのさま。利発怜悧(れいり)。また、抜け目がない、わるがしこいの意で、悪意・皮肉の意を含めていうこともある。
日葡辞書(1603‐04)「Ricôna(リコウナ)モノ」
浄瑠璃・女殺油地獄(1721)上「それそれ問ふには落ず語るに落ると、利口そうにそれが信心の観音参りか」 〔嵆康‐太師箴〕
④ 特に、子どもについて聞きわけがよくておとなしいさま。また、その子。接頭語「お」をつけ、さらに接尾語「さん」「ちゃん」をつけて用い、「おりこう」「おりこうちゃん」ということもある。
人情本・孝女二葉錦(1829)初「ヲヲよふいやったホンニなう。お菊ばうは利口(リコウ)だぞよ」
値段が割安で、買い得であること。値段が安くて手頃なこと。また、一見損のようでありながら、実質的には得になるようなこと。
談義本・養漢裸百貫(1796)五「今度利口(リカウ)黒檀がある故買て置たい」
⑥ 小さくて便利なさま。〔俚言集覧(1797頃)〕
※俳諧・新増犬筑波集(1643)油糟土佐までも下こそすれ京の者 りこうな駒にのりてもどれり」

きき‐ぐち【利口】

〘名〙 達者な口をきくこと。口先のうまいこと。弁が立つこと。巧言。
※歌舞伎・天満宮菜種御供(1777)二「成程、さう利口(キキグチ)にいへば言訳は立つやうに聞ゆれど」

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デジタル大辞泉 「利口」の意味・読み・例文・類語

り‐こう〔‐コウ|‐カウ〕【利口/×悧口/利巧/×悧巧】

[名・形動]
頭がよいこと。賢いこと。また、そのさま。利発。「―な犬」「―そうな人」「―ぶる」⇔馬鹿ばか
要領よく抜け目のないこと。また、そのさま。「―に立ちまわる」
(多く「お利口」の形で)子供などがおとなしく聞きわけのよいこと。また、そのさま。「お―にしている」「お―さん」
巧みにものを言うこと。口先のうまいこと。また、そのさま。
興言―は放遊境を得るの時談話虚言を成し」〈著聞集・一六〉
軽口を言うこと。冗談。
「『またお上人様の―仰せらるる』『いや―ではない。有様ありやうぢゃ』」〈虎明狂・若市〉
[派生]りこうさ[名]
[類語](1利発怜悧れいり聡明そうめい発明慧敏けいびん明敏才気煥発かんぱつ穎悟えいご利根賢明賢いさと鋭敏機敏俊敏鋭い目聡い賢しい過敏敏感炯眼けいがん慧敏英明英邁犀利さいりシャープ耳聡い耳が早い早耳地獄耳目が早い先見の明予覚飛耳長目気が利く嗅ぐ嗅ぎ付ける嗅ぎ出す嗅ぎ当てる嗅ぎ取る嗅ぎ分ける虫の知らせ虫が知らせる第六感予感直感ひらめき察知インスピレーションぴんとぴんと来る鼻が利く感じ取る気が付く/(2さかしい小賢こざかしいうまいクレバー抜け目がない

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普及版 字通 「利口」の読み・字形・画数・意味

【利口】りこう

口達者。〔論語、陽貨〕子曰く、紫の朱を奪ふことを惡(にく)む。聲の樂を亂すことを惡む。利口の家を(くつが)へす(こと)を惡む。

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