デジタル大辞泉
「気色ばむ」の意味・読み・例文・類語
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
けしき‐ば・む【気色ばむ】
① 自然界の
事物が生動のけはいを帯びる。
発現のきざしがみえる。
※
源氏(1001‐14頃)葵「菊のけしきばめる枝に濃きあをにびの紙なる文つけて」
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「六月六日この子むまるべくなりぬ。けしきばみて悩めば、女きも心を惑はして」
③
気持が外に表われる。心のうちをほのめかす。意中がそぶりにあらわれる。
※宇津保(970‐999頃)嵯峨院「『なほかく思ふ事なんある』とばかりだに、いかでこの君に知らせ奉らん。時々けしきばめる事はあれど、知りて知らず顔なるにやあらむは」
④ 気どる。改まった様子をする。すます。もったいぶる。
※
蜻蛉(974頃)中「『のちに』と言ひし人ものぼりてあれば、それに猶しもあらぬやうにあれば、いたくけしきばみたてり」
⑤ むっとして怒った表情になる。ふんがいする。色をなす。
※蜻蛉(974頃)中「人のけしきばみ、くせぐせしきをなん、あやしと思ふ」
⑥ 興奮する。興奮して勢い込む。
※
煙管(1933)〈
新田潤〉「こんなときには、
老いこんだ
与作も何か気色
(ケシキ)ばんで、壮んな
時分の馭者台に坐った時のやうにどこかきりっとして見えた」
[
補注]
連用形の
ウ音便「けしきばう」が「けしきぼう」と読まれて「ぼう」「ぼふ」などと表記された例もある。
きしょく‐ば・む【気色ばむ】
〘自マ四〙 (「ばむ」は接尾語) 得意げに意気ごむ。気負いこんだ顔つきをする。けしきばむ。きそくばむ。
※
太平記(14C後)一七「仰たる太刀を押し直し、東寺の方を屹と見て、気色
(キショク)はうたる有様は」
きそく‐ば・む【気色ばむ】
※神田本太平記(14C後)二四「きそくばうて、腰をかいさぐり見れば」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報