分散(化学)(読み)ぶんさん

百科事典マイペディアの解説

分散(化学)【ぶんさん】

一つの相をなす物質(分散媒)の中に他の物質(分散相)が微粒子状に散在する現象。この物質系全体を分散系という。食塩水や砂糖水のように分散相がイオンまたは分子である分散系が真の溶液であり,分散相がこれより大きいが顕微鏡で認められない程度のものがコロイド分散系,粒子がさらに大きいものが乳濁液および懸濁液である。
→関連項目コロイド

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

分散(化学)
ぶんさん
dispersion

化学の分野では、相互に相混じらない二つの物質の一つが、微粒子の状態で他の物質中に一様に存在することをいう。この場合、微粒子を分散質、連続相となっている物質を分散媒という。分散媒が大気あるいは水の場合、安定な分散系となるためには分散質の粒径が1マイクロメートル以下にならないといけない。1マイクロメートル~1ナノメートルの粒径の粒子によってつくられる分散系は、コロイド分散系とよばれる。分散質が金や銀のように水との親和性が比較的弱い場合に、これを疎水ゾルという。これに対し、分散質が界面活性剤ミセル、あるいはタンパク質のように水との親和性が強いときには、これを親水ゾルという。これらの分散質は限外顕微鏡で観察すると不規則運動を行っていることがわかる。これは、花粉の不規則運動を研究したイギリスの植物学者である発見者の名前にちなんでブラウン運動とよばれている。ブラウン運動の原因は、かなりあとになって、分散媒である水分子が、分散質に衝突する仕方が統計的にみて均一でなく、ある揺らぎをもっているためであると説明された。この揺らぎは温度が高くなるほど大きくなる。
 分散粒子の表面は電気的に中性でなく、一般に正または負の電荷を帯びている。これは分散質自身の解離による場合もあるし、または分散媒中の電解質イオンが分散質の表面に吸着しておこることもある。このようにしてできた帯電粒子の近くには、反対符号のイオンが近くに引き寄せられ、電気二重層がつくられる。これは分散系の安定性に重要な役割を演じている。
 自然界における分散系の例として、たとえば血液中の血球や、大気中に浮遊する微粒子などがあげられ、いずれも人間の健康に深い関係をもっている。
 工業上では、固体あるいは液体を微粒子として分散媒中に分散させ、安定な系をつくることがしばしばおこる。たとえば塗料や印刷インキでは、着色剤である固体の顔料を、油または合成樹脂中に均一に分散させなければならない。このときには、顔料の微粒子化ならびに表面改質のための技術が必要である。また、化粧品であるコールドクリームや乳液は、油中水滴型あるいは水中油滴型のエマルジョンであるが、これは長期間安定でなければならない。このためには乳化剤としての界面活性剤をどう選ぶかがもっとも重要になる。[早野茂夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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