鮮やか(読み)あざやか

精選版 日本国語大辞典 「鮮やか」の意味・読み・例文・類語

あざ‐やか【鮮やか】

〘形動〙 (「やか」は接尾語)
① ほかのものよりよく目に立つさま。はっきり見えるさま。鮮明な印象を与えるさま。
※枕(10C終)二七七「高麗縁(かうらいばし)の〈略〉縁(へり)の紋いとあざやかに黒う白う見えたるを」
源氏(1001‐14頃)空蝉「目すこし腫(は)れたる心ちして、鼻などもあざやかなる所なうねびれて、にほはしき所も見えず」
② 目に立って美しいさま。いきいきして美しいさま。
書紀(720)雄略二三年八月(前田本訓)「但し朝野(みやこひな)の衣冠、未だ鮮麗(アサヤカ)にすることを得ず」
※枕(10C終)二三「濃き紫の固紋(かたもん)指貫、白き御衣(おんぞ)ども、うへには濃き綾(あや)のいとあざやかなるをいだして」
③ 新しくて気持がよいさま。新鮮であるさま。いきのいいさま。
※宇津保(970‐999頃)あて宮「少将、あさのよそひあざやかにて、たいめんし給へり」
※枕(10C終)三六「いとつややかなる板の端近う、あざやかなる畳一ひら、うち敷きて」
容姿などが、すっきりと水際立って立派なさま。
※源氏(1001‐14頃)藤裏葉「いづれとなくをかしきかたちどもなれど、なほ人にすぐれてあざやかに清らなるものから」
⑤ 性質、言動などが、きっぱりしているさま。はきはきしているさま。
※源氏(1001‐14頃)柏木「うちひそみつつぞ見給ふ。御さま、例は心強うあざやかに、誇りかなる御けしき、なごりなく、人わろし」
※浮世草子・西鶴織留(1694)一「長口上あざやかに」
⑥ 際立って見事であるさま。非の打ちどころがない様子。
愚管抄(1220)三「ままこにておやのかたきなれば、道理もあざやかなり」
動作技術がさえていて、非常にたくみなさま。
歌舞伎・傾城浜真砂(1839)三幕「『痣はあるし平(ひらた)い顔ぢゃが、それでも大の色事師でござります』〈略〉『それと云ふが、これが鮮(アザヤ)かからの事ぢゃ』ト三絃(さみせん)弾く真似をする」
[語誌](1)アザは「あざけり」「あざむき」と同根で、心情に関わりなく強烈にあらわれることをいうか。
(2)語幹を同じくする「あざらか」が魚肉などの鮮度をいうのに対して、「あざやか」は美的形容をもっぱらとしていたが、中世にヤカとラカの区別がうすれるにつれて、「あざらか」が消滅して、「あざやか」が新鮮なの意味でも用いられるようになる。
あざやか‐さ
〘名〙

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「鮮やか」の意味・読み・例文・類語

あざ‐やか【鮮やか】

[形動][文][ナリ]《「あざ」は新鮮の意》
ものの色彩・形などがはっきりしていて、目立つさま。「鮮やかな若葉の緑」「印象鮮やかな短編小説」
技術・動作などがきわだって巧みであるさま。「鮮やかな包丁さばき」
容姿などがきわだって美しいさま。
「いと―に男々しきさまして」〈・真木柱〉
鮮度が高いさま。生き生きとしたさま。
「童子、かの浦に行きて―なるなよし八隻はちしゃくを買ひ取りて」〈今昔・一二・二七〉
[派生]あざやかさ[名]
[類語](1鮮明くっきり綺麗はっきりありありまざまざしか明らかきわやか定かさやか明瞭めいりょう分明顕著顕然歴然歴歴瞭然りょうぜん亮然りょうぜん判然画然かくぜん截然せつぜん見るから明快平明簡明明晰明白明明白白端的めっきり浮き彫りクリア鮮明明確明解自明彷彿鮮烈一目瞭然手に取るようたなごころを指すまがう方ない隠れもない火を見るよりも明らか目に見える言わずと知れたまぎれもない/(3身綺麗綺麗美しい美美びびしいきらやか美麗華麗華美鮮麗流麗壮麗清麗優美美的麗しい見目好い見目麗しい端正端麗秀麗佳麗艶美艶麗あでやか妖麗豊麗妖美見好い小綺麗美妙典麗ビューティフルピトレスクピクチャレスクラブリービューティープリティー楚楚そそ清楚せいそ瀟洒しょうしゃあか抜けこざっぱり洒落しゃれ小洒落こじゃれスマートシックドレッシー純美玲瓏れいろう着映えきらびやか洒落しゃれ薄皮のけたよう

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