ニュートリノ(英語表記)neutrino

翻訳|neutrino

デジタル大辞泉 「ニュートリノ」の意味・読み・例文・類語

ニュートリノ(neutrino)

素粒子の一。レプトンに属し、電荷が零、スピン半整数(1/2)。弱い相互作用に関与し、電子μ粒子τ粒子と対になって現れる3種類のニュートリノ(電子ニュートリノμニュートリノτニュートリノ)が存在することがわかっている。質量の有無が長く論じられてきたが、近年のスーパーカミオカンデの実験などで、質量があることが証明された。記号νニュー 中性微子。→レプトン
[類語]粒子分子原子原子核原子団アトムイオン素粒子電子陰電子陽電子陽子中間子中性子光子エレクトロンプロトンニュートロン

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精選版 日本国語大辞典 「ニュートリノ」の意味・読み・例文・類語

ニュートリノ

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] neutrino ) =ちゅうせいびし(中性微子)
    1. [初出の実例]「電気的に中性で且つ固有質量の極めて小さい中性微子(ニュートリノ)なるものの存在が仮定せられ」(出典:自然科学的世界像(1938)〈石原純〉一)

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百科事典マイペディア 「ニュートリノ」の意味・わかりやすい解説

ニュートリノ

中性微子とも。素粒子の一つ。レプトンに属し,電気的に中性,質量は1998年にその存在が確認された。スピン1/2。1930年W.パウリβ崩壊の際エネルギーとスピンの保存法則を維持するため理論的に予言,フェルミがこれに基づいてβ崩壊の理論をたてた(1934年)。物質との相互作用がきわめて小さいため観測困難で,1953年F.レインズとC.L.コーワンが原子炉から出る(反)ニュートリノを陽子に衝突させて中性子と陽電子に変え,その存在を実証した。β崩壊のほかπ中間子,K中間子,μ粒子等の崩壊の際にも発生するが,1962年β崩壊の際生じるもの(電子ニュートリノ,記号ν(/e))とπ中間子の崩壊の際生じるもの(μニュートリノ,ν(/μ))は別種であることが確認された。さらに現在はν(/τ)(τ粒子に対応)も発見されている。→宇宙線素粒子
→関連項目K中間子小柴昌俊スーパーカミオカンデ素粒子原子核研究所中性子陽子

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知恵蔵 「ニュートリノ」の解説

ニュートリノ

物質を構成する最小の単位である素粒子の一つ。電気的に中性(ニュートラル)であることから、イタリアの物理学者フェルミによって名付けられた。
素粒子には、大きく分けると、原子核の陽子や中性子を構成する粒子の仲間である「クォーク」、電子の仲間である「レプトン」、及び「ゲージ粒子」の三つのグループ及びヒッグス粒子がある。レプトンのうち、電気を持たない粒子がニュートリノで、電子型、ミュー型、タウ型の3種類がある。レプトンには他に、電子、タウ粒子ミュー粒子がある。
1931年、ユダヤ系物理学者のパウリが理論的にニュートリノの存在を予言し、仮想的な素粒子として知られるようになったが、他の物質と相互作用がほとんどないため観測するのが難しく、質量の有無も長い間不明で、標準理論においては質量はゼロとして扱われてきた。
56年、アメリカの物理学者ライネスらによって原子炉から発生するニュートリノが捉えられた。アメリカの物理学者デービスは、68年までに太陽から放出されるニュートリノを確認したが、その後の観測により、ニュートリノは理論値の約3分の1しか発見されず、「太陽ニュートリノ問題」と呼ばれる物理学上の大問題となった。
87年2月、ニュートリノ観測装置カミオカンデ(岐阜県飛騨市神岡鉱山内)が超新星から飛んできたニュートリノ11個を世界で初めて捉えた。このニュートリノは、16万光年かなたの大マゼラン星雲で起きた超新星爆発SN1987Aによって生じたもので、この功績により小柴昌俊とデービスは2002年、ノーベル物理学賞を受賞した。
95年、カミオカンデ(タンク容積3000トン)を大幅に増強したスーパーカミオカンデ(同5万トン)が完成。翌96年から観測が始まり、98年に「ニュートリノ振動」を捉える。ニュートリノ振動とは、ニュートリノがある距離を飛行する間に別の種類のニュートリノに変化する現象で、変化の前後で2種類のニュートリノの質量が異なる場合にのみ起こることから、ニュートリノに質量があることの証拠となる。観測では、スーパーカミオカンデの上空でできた大気ニュートリノと、地球の裏側でできて地球を貫通してきた大気ニュートリノを比較したところ、地球の裏側から来るミュー型ニュートリノが上空からの半分であることが判明した。これは、地球を通る間にミュー型ニュートリノが、スーパーカミオカンデで観測できないタウ型に変化したこと、すなわちニュートリノ振動の証左である。
標準理論に修正を迫るこの発見の功績により、2015年、梶田隆章にノーベル物理学賞が授与された。

(葛西奈津子 フリーランスライター/2015年)


ニュートリノ

物質をつくる基本粒子レプトンの仲間。電気的に中性で、ほかの粒子と反応しにくい。宇宙に遍く1立方センチ当たり300個ほどあるらしい。中性微子の名も。弱い力の現象で、どのレプトンと対をなして現れるかにより、電子型、ミュー(μ)型、タウ(τ)型がある。電子型の存在は1930年代初め、W.パウリがベータ(β)崩壊でエネルギー保存則が破れてみえることから予言、56年にF.ライネスらが検出した。残る2つも確認済み。質量はないか極めて小さいとされ、標準理論はゼロとしているが、70年代から太陽ニュートリノ観測が「質量あり」を示唆、98年、東大宇宙線研究所などの日米グループがスーパーカミオカンデの大気ニュートリノ観測でも、質量があれば起こる異型間変身(ニュートリノ振動)を見た。

(尾関章 朝日新聞記者 / 2007年)

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化学辞典 第2版 「ニュートリノ」の解説

ニュートリノ
ニュートリノ
neutrino

中性微子ともいう.記号ν.レプトンに属する素粒子.質量 ≈ 0,荷電 = 0,スピン = 1/2.現在3種類あることが知られており,電子ニュートリノ νe,ミューニュートリノ νμタウニュートリノ ντ と表され,それぞれに反粒子が存在する.ニュートリノは1930年に,原子核β崩壊の際のエネルギー保存則を満足させるために,W. Pauliによって提案された.その後中性子が発見され,その陽子と電子への崩壊の説明に用いられて,存在が確立された.ニュートリノはほかの粒子との相互作用が小さいので,観測が難しいが,現在では観測方法も進歩し,3種類のニュートリノの存在も確立している.現在のところ,化学との直接的接点はないが,ミュオニウムやポジトロニウムが化学反応の研究に役割りを果たしはじめているので,今後,重要性が増すと考えられている.[別用語参照]スーパーカミオカンデミュオニウムの化学

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改訂新版 世界大百科事典 「ニュートリノ」の意味・わかりやすい解説

ニュートリノ
neutrino

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世界大百科事典(旧版)内のニュートリノの言及

【素粒子】より

…このように物理学が対象とした万物が原子からなり,その原子がすべてこの3種類の小さな粒子(陽子,中性子,電子)でできているとすれば,これらの小さな粒子こそ,もっとも基本的なものであり,このためこれらの粒子は自然を構成する素元的な粒子という意味で〈素粒子〉と呼ばれるに至ったのである。第2次世界大戦前までに,この3種類の粒子のほかにも,光子(フォトン),中性微子(ニュートリノ),電子の反粒子である陽電子などが素粒子の仲間に加えられ,素粒子の種類も増えていったのであるが,素粒子の存在が明らかになったことでミクロの世界の探究は一段落し,素粒子がミクロの世界の主役となった。 第2次大戦後は宇宙線研究の進歩や加速器の発達もあって続々と新しい素粒子が発見され,現在ではその数は何百にも達している。…

【中性微子】より

…ニュートリノともいう。レプトンの一種。…

※「ニュートリノ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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