精選版 日本国語大辞典「一分」の解説
いち‐ぶん【一分】
〘名〙
① 一〇に分けたものの一つ。十分の一。転じて、ごくわずかの意にも用いる。
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「おのが一分とくぶんなし。なにによりてか、なんぢ一分あたらむ」
※読本・昔話稲妻表紙(1806)五「さもあらば我身の罪の一分(イチブン)を減じ」
② 一身。自身。自分ひとり。
※仮名草子・竹斎(1621‐23)上「是を知らぬかと人に思はれん事を悲しみ、一ぶん済まひたる顔をして」
※浮世草子・好色敗毒散(1703)五「是皆身より出たる錆刀、一分に瑕がついたる上は」
④ 同様。一様。
※御伽草子・三人法師(古典文庫所収)(室町末)「十六の年近習一ぶんにて、朝夕召つかはるる間」
⑤ そのことに専念すること。一筋。
※評判記・けしずみ(1677)「こひをはなれてつとめ一ぶんのあひやうなるべし」
いち‐ぶ【一分】
〘名〙
① 古代、諸国の公廨(くがい)を配分する際に諸国の史生(ししょう)、国博士(くにはかせ)、国医師(くにいし)に割り当てられる率。配分法は国の等級により異なるが、これらの官はいずれの場合にも一分。→公廨。
※続日本紀‐天平宝字元年(757)一〇月乙卯「凡国司処二分公廨一式者、〈略〉史生一分、其博士医師准二史生例一」
② 「ししょう(史生)」の別称。
※職原鈔(1340)上「一分召者任二諸国史生一之名也。史生謂二之一分一」
いっ‐ぷん【一分】
〘名〙
① (重さの単位) ⇒ふん(分)①
② 「いちぶ(一分・一歩)」の異称。
※雑俳・柳多留‐二(1767)「是むす子一(いッ)ぷん捨てる気は無いか」
③ 一時間の六〇分の一。六〇秒。
※当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉一七「ますます退屈に困りはてて、一分(イップン)一日の思ひをして」
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