一分(読み)イチブン

デジタル大辞泉 「一分」の意味・読み・例文・類語

いち‐ぶん【一分】

一身の面目。一人前の人間としての名誉。体面。「一分がすたる」
10に分けたものの一つ。転じて、ごくわずかな部分。
「衆生の中に―の仏性き者有りと云ふ」〈今昔・四・二八〉
自分ひとり。一身。
三人もろともにしたる事をも、己れが―の手柄立てを言ひまはり」〈仮・可笑記・一〉
同じものとしてみること。同様。
「我とは兄弟―に申しかはせしに」〈浮・一代男・二〉
[類語]名誉名聞めいぶん面目体面面子メンツ沽券こけん声価信用信望しん信頼信任人望定評評判暖簾のれん覚え名望声望徳望人気魅力受け名声美名雷名見栄みえ面皮世間体体裁肩身

いち‐ぶ【一分】

重さ・長さや割合などの単位。→
ごくわずかであることのたとえ。「一分すきも見せない」
一分金」「一分銀」の略。
律令制書記官である史生しじょう異称公廨稲くがいとうの残りを国府役人に給与するとき、史生の給与が一分であったことからいう。一分の官。
自分ひとり。いちぶん。
「私―にては、早速御返答申しがたし」〈浮・其磧諸国

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精選版 日本国語大辞典 「一分」の意味・読み・例文・類語

いち‐ぶ【一分・一歩】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( 重さの単位 ) ⇒ぶ(分)[ 三 ]
  3. ( 長さの単位 ) ⇒ぶ(分)[ 三 ]
  4. 一を一〇で割ったものの一つ。一割。十分の一。
    1. [初出の実例]「桝(ます)掛筋のあるは、壱分がた高うござる」(出典黄表紙・大悲千祿本(1785))
  5. ごくわずかであること。いちぶん。あとに打消の語を伴い、副詞的にも用いる。
    1. [初出の実例]「一歩(イチブ)非の打ちやうのない正文に」(出典:医師高間房一氏(1941)〈田畑修一郎〉三)
  6. いちぶきん(一分金)」の略。
    1. [初出の実例]「昼は十人の舞子集ける。一人金子一歩也」(出典:浮世草子・好色一代男(1682)四)
  7. いちぶぎん(一分銀)」の略。
    1. [初出の実例]「くゎいちうより白銀一分(ブ)とりいだし」(出典:滑稽本・魂胆夢輔譚(1844‐47)二・下)
  8. 一を一〇〇で割ったものの一つ。一割の十分の一。百分の一。一パーセント。「年一分の利子」「三割一分五厘の打率
  9. ( 六銖を一分とするところから ) 一を六で割ったものの一つ。六分の一。
    1. [初出の実例]「一、得分の事。三、長殿(をさどの)。二、端居(つまをり)。三座(さんざ)、一部(ブ)(はむ)」(出典:申楽談儀(1430)附載)
  10. 江戸吉原で揚げ代が金一分の遊女
    1. [初出の実例]「昼三(ちゅうさん)の右や左は壱分也」(出典:雑俳・川傍柳(1780‐83)三)
  11. 近世、遊里で遣り手や、太鼓持ちに与える祝儀の金。
    1. [初出の実例]「此時はこなから、明日は一ぶになる事ぞかし」(出典:浮世草子・好色盛衰記(1688)四)
  12. いちぶん(一分)
    1. [初出の実例]「私一ぶにては、早速に御返答は申し難し」(出典:浮世草子・諸国物語(17C後)一)
  13. 競馬で二〇〇メートルのこと。マイルレースの八分の一。一ハロン。

いち‐ぶん【一分】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 一〇に分けたものの一つ。十分の一。転じて、ごくわずかの意にも用いる。
    1. [初出の実例]「おのが一分とくぶんなし。なにによりてか、なんぢ一分あたらむ」(出典:宇津保物語(970‐999頃)俊蔭)
    2. 「さもあらば我身の罪の一分(イチブン)を減じ」(出典:読本・昔話稲妻表紙(1806)五)
  3. 一身。自身。自分ひとり。
    1. [初出の実例]「是を知らぬかと人に思はれん事を悲しみ、一ぶん済まひたる顔をして」(出典:仮名草子・竹斎(1621‐23)上)
  4. 一身の面目、責任。その人、ひとりの分際。→一分が廃(すた)る一分立(た)つ
    1. [初出の実例]「是皆身より出たる錆刀、一分に瑕がついたる上は」(出典:浮世草子・好色敗毒散(1703)五)
  5. 同様。一様。
    1. [初出の実例]「十六の年近習一ぶんにて、朝夕召つかはるる間」(出典:御伽草子・三人法師(古典文庫所収)(室町末))
  6. そのことに専念すること。一筋。
    1. [初出の実例]「こひをはなれてつとめ一ぶんのあひやうなるべし」(出典:評判記・けしずみ(1677))

いち‐ぶ【一分】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 古代、諸国の公廨(くがい)を配分する際に諸国の史生(ししょう)、国博士(くにはかせ)、国医師(くにいし)に割り当てられる率。配分法は国の等級により異なるが、これらの官はいずれの場合にも一分。→公廨
    1. [初出の実例]「凡国司処分公廨式者、〈略〉史生一分、其博士医師准史生例」(出典:続日本紀‐天平宝字元年(757)一〇月乙卯)
  3. ししょう(史生)」の別称
    1. [初出の実例]「一分召者任諸国史生之名也。史生謂之一分」(出典:職原鈔(1340)上)

いっ‐ぷん【一分】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( 重さの単位 ) ⇒ふん(分)
  3. いちぶ(一分・一歩)」の異称。
    1. [初出の実例]「是むす子一(いッ)ぷん捨てる気は無いか」(出典:雑俳・柳多留‐二(1767))
  4. 一時間の六〇分の一。六〇秒。
    1. [初出の実例]「ますます退屈に困りはてて、一分(イップン)一日の思ひをして」(出典:当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉一七)

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