日本大百科全書(ニッポニカ) 「坂本(熊本県)」の意味・わかりやすい解説
坂本(熊本県)
さかもと
熊本県南部、八代(やつしろ)郡にあった旧村名(坂本村(むら))。現在は八代市の南西部を占める。旧坂本村は1961年(昭和36)下松求麻(しもまつくま)、上松求麻、百済木(くだらぎ)の3村が合併して成立。2005年(平成17)八代市に合併。旧坂本村の北半域は中生代、南半域は古生代の岩石からなり、全域、山地(九州山地北部)をなす。ほぼ中央を北に流れる球磨(くま)川の両岸には、JR肥薩(ひさつ)線、国道219号が走っている。林野率は90%を超えるが、農業(米、イグサ、果樹など)をあわせた第一次産業の就業者率は10%強にすぎない。これに対し、30%近くを占める第二次産業就業者率は、かつて産業の中核をなした九州初の洋紙製造工場(1988年閉鎖)の立地によるだけでなく、隣接の八代臨海工業地域への通勤によって維持されている。また、この地域の球磨川の豊かな水量は、荒瀬ダムによる藤本発電所(1.8万キロワット、1954年完成)、油谷ダム(あぶらだにだむ)による大平発電所(50万キロワット、1975年完成)の建設を導き、電源供給地でもある(荒瀬ダムは2010年3月に発電を停止、2018年撤去工事完了)。農林業と深いかかわりをもつ「雨乞(ご)い行事」「成木責め(なりきぜめ)」などの伝統的な民俗行事が残っている。
[山口守人]