基(中国、唐の僧)(読み)き

日本大百科全書(ニッポニカ) 「基(中国、唐の僧)」の意味・わかりやすい解説

基(中国、唐の僧)

(632―682)

中国、唐の僧。法相(ほっそう)宗の開祖。姓は尉遅(いっち)、字(あざな)は洪道(こうどう)。普通は窺基(きき)といわれるが、正しくは基といい、慈恩(じおん)大師と号する。京兆(けいちょう)・長安(陝西(せんせい)省)の人。17歳で出家し、玄奘(げんじょう)の弟子となり、28歳のとき師に従って『成唯識論(じょうゆいしきろん)』の訳出に参加した。以来『成唯識論』を研究して『成唯識論述記』『掌中枢要(しょうちゅうすうよう)』などを著した。682年11月13日、慈恩寺翻経院(ほんきょういん)において没した。その他の著書には『瑜伽論略纂(ゆがろんりゃくさん)』『法華玄賛(ほっけげんさん)』『大乗法苑義林章(だいじょうほうおんぎりんしょう)』などがあり、「百本の疏主(そしゅ)、百本の論師」と称された。

 これらの著書のうち『大乗法苑義林章』と『成唯識論述記』とによって法相宗教義が成立し、その宗派は、彼の住した慈恩寺にちなんで慈恩教ともいわれた。

鎌田茂雄 2017年1月19日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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