実体(哲学)(読み)じったい

世界大百科事典(旧版)内の実体(哲学)の言及

【関係】より

…哲学用語。伝統的なヨーロッパの存在観においては,独立自存する〈実体〉なるものがまずあって,実体どうしの間に,第二次的に〈関係〉が成立するものと考えられてきた。これに対して,〈関係〉こそが第一次的な存在であり,いわゆる実体は〈関係の結節〉ともいうべきものにすぎないと考える立場が,仏教の縁起観など,古くから存在したが,現代においてはこの〈関係主義〉的存在観が優勢になりつつある。…

【西洋哲学】より

…これももともとアリストテレスの〈エネルゲイア〉の概念の根底に形而上学的思考様式が存していたことからの必然的帰結と見られる。
【実体と属性】
 西洋哲学の基本的概念群の一つに〈実体‐属性〉という対概念があるが,これもまたアリストテレス哲学に源を発する。もっとも,通常〈実体〉と訳されているアリストテレスの用語〈ウシアousia〉は,それが〈ある〉〈存在する〉という意味の動詞〈エイナイeinai〉の女性分詞形〈ウサousa〉に由来し,日常語としては〈現に眼前にある不動産・資産〉を意味するということからも知られるように,広く〈存在〉を意味する言葉であり(《形而上学》第7巻第3章),これがsubstantia(下に立つもの=実体)というラテン語に訳されたのは,事物の第一の存在(ウシア)が〈ヒュポケイメノンhypokeimenōn(下に横たわるもの=基体)〉としての存在にあると考えられたからである(《形而上学》同上)。…

【相対性理論】より

…【藤井 保憲】
【哲学的意義】
 哲学との関連で,相対性理論のもつ意義およびそれのもたらした影響について付言しておこう。まず,存在論に即していえば,相対性理論は〈関係主義的(非実体主義的)〉な存在観を促すゆえんとなった。哲学においては,19世紀のある時期からヨーロッパにあってすらさすがに関係主義的な存在観が登場するようになっていたが,科学的世界観の拠点をなす物理学においては,古典物理学的実体主義が牢固(ろうこ)として支配していたため,非実体主義=関係主義の貫徹が阻まれていた。…

【もの(物)】より

…このとらえ方は,ヒュポケイメノンが命題の〈主語〉をも意味するところから知られるように,命題の〈主語‐述語〉という構造をモデルに構想されたものである。このヒュポケイメノンが,ラテン語でも〈下に置かれたもの〉という言葉のつくりをそのまま写してsubstantiaないしsubjectumと,シュンベベコスがaccidensと訳され,物をもろもろの特性の基体・実体とみるこの考え方も,中世のスコラ哲学やさらには近代哲学にも継承される。(4)近代のロックなどにもこの種の考え方は残っており,彼は実体そのものに対しては不可知論的立場をとるが,それでも実体としての物体そのもののうちに実在する第一性質primary qualities(延長,形態,運動など)と,物体によってわれわれの心のうちに生ぜしめられる第二性質secondary qualities(色,音,味,香など)を区別したのに対し,経験論の立場を徹底するD.ヒュームは,経験に与えられることのない実体の想定を否認し,したがって実体を想定してのみ意味をもつ第一性質,第二性質の区別をも否定した。…

※「実体(哲学)」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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