(読み)ゾク

デジタル大辞泉 「属」の意味・読み・例文・類語

ぞく【属〔屬〕】[漢字項目]

[音]ゾク(呉) ショク(漢) [訓]さかん
学習漢字]5年
〈ゾク〉
付き従う。その範囲に入る。つながる。「属国属性帰属軍属係属従属所属専属直属転属配属付属隷属
なかま。みうち。同類。「金属眷属けんぞく尊属卑属
〈ショク〉
つなげる。つづる。「属文」
目をつける。「属望属目
[補説]2は「しょく」と通用。
[名のり]つら・まさ・やす

ぞく【属】

部下。従者。
われにも六天八部の―あり」〈露伴・二日物語〉
仲間。同類。
もとどりなきものは浮屠ふとの―にたぐへて」〈野ざらし紀行
律令制で、主典さかん
明治の官制で、判任文官。属官。
生物分類学上の階級の一。の下、の上に位置する。

しょく【属/続】[漢字項目]

〈属〉⇒ぞく
〈続〉⇒ぞく

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精選版 日本国語大辞典 「属」の意味・読み・例文・類語

ぞく【属】

  1. 〘 名詞 〙
  2. なかまであること。一員であること。人以外のものにも言う。みうち。同類。
    1. [初出の実例]「何も食物の属が多てきるものもやすいほどに、餓するほどの事もなく」(出典:史記抄(1477)一九)
    2. 「我僧にあらずといへども、浮屠(ふと)の属にたぐへて、神前に入事をゆるさず」(出典:俳諧・野ざらし紀行(1685‐86頃))
  3. つきしたがうこと。支配下にあること。また、その人や物。付属。従属。部下。配下。従者。
    1. [初出の実例]「技術が主で、人が属だといふやうなことは絶対にない」(出典:女工哀史(1925)〈細井和喜蔵〉一四)
    2. [その他の文献]〔書経‐周官〕
  4. 令制で、寮・職・坊の四等官制の第四等の官。大属と少属がある。さかん。→主典(さかん)
  5. 明治の官制で判任文官。上官の指揮をうけて庶務に従事する。
  6. 生物分類学上、科の下、種の上に設ける分類階級。おのおのの群分けに客観的基準はないが、普通、生殖器官などの可塑性の小さい形態的特徴を基準にし、国際命名規約に従って定める。たとえば、ユリ科のネギ属(花序が総苞につつまれる)や、エンレイソウ属(花が三数性で明瞭な花被が三個)など。また、これを属名といい、学名として用いる場合はラテン語またはラテン語化した名詞頭文字大文字で Allium(ネギ属)、Trillium(エンレイソウ属)のように表わす。
    1. [初出の実例]「猿猴(手ながざる)の属(ゾク)にして『ヲランクタン』と名づくるもの有り」(出典:西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈仮名垣魯文〉七)

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普及版 字通 「属」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 12画

(旧字)屬
21画

[字音] ゾク・ショク
[字訓] つらなる・つく・まかす

[説文解字]

[字形] 会意
旧字は屬に作り、尾(び)+蜀(しょく)。尾は牝獣、蜀は牡器を主とする牡獣の形で、虫の部分は牡器の形。尾と虫と、牝牡相属(つら)なるを屬という。ゆえに連属の意となる。〔説文八下に「なるなり」とし、蜀声とするが、蜀は獨(独)・(たく)の従うところで、単なる声符ではない。は牡器を殴(う)つ形で去(たくきよ)、去勢することをいう。すべて連属し、附属する関係にあることを属という。

[訓義]
1. つらなる、つづく、牝牡相連なる。
2. つなぐ、むすぶ、つづる。
3. ちかづく、およぶ、つく、つける。
4. たのむ、ゆだねる、まかす、うべなう、かこつける、すすめる。
5. なかま、ともがら、たぐい。
6. てした、けらい、つかさ。
7. たまたま、さきに、さきごろ、このごろ。

[古辞書の訓]
名義抄〕屬 ツク・トモガラ・トモ・ツラヌク・ツドフ・ツラナル・アタル・オヨブ・アフ・コノゴロ・ハジメ・タグヒ・アツム・イマシ

[声系]
〔説文〕に屬声としてなど三字を収め、〔玉〕にはまた囑(嘱)を収める。矚は〔慧琳音義〕に引く〔説文〕にみえ、おそらく逸文であろう。

[語系]
屬・囑tjiokは同声(注)tjioは声義の近い字。矢を弓につがえることをといい、酒を杯につぐことを屬という。

[熟語]
属意・属垣・属厭属稿・属・属詩・属耳・属辞・属心・属草・属託・属任・属付・属文属辟・属望・属目属鏤・属引・属員属怨・属懐・属官・属観・属言・属行・属国・属佐・属志・属思・属茨属疾・属車・属者・属酒属聚・属従属曹・属対・属聴・属綴属附・属婦・属聞・属命属臾・属遊・属頼・属吏・属慮・属僚・属寮・属累・属令・属連・属路・属和
[下接語]
姻属・掾属・下属・家属・外属・官属・帰属・羈属・近属・金属・軍属・係属・属・血属・眷属・圏属・婚属・支属・私属・耳属・従属・所属・心属・親属・戚属・専属・疎属・族属・率属・尊属・直属・徒属・同属・内属・配属・卑属・付属・附属・部属・服属・分属・本属・奔属・与属・僚属・寮属・隷属・連属

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「属」の意味・わかりやすい解説


ぞく
genus (genera)

生物を分類するときの集合単位の一つ。互いに近縁な一群の種から成り立つが、近縁種がみつからないため1種のみで1属を形成する場合もある。1属が含む範囲の判断や評価は、生物群・研究者によって相違があり、多くの種を含む属では属内に近縁度の高い種をまとめた亜属あるいは種群を置くことが多い。種を表す学名(例、ネコFelis catus)は属名と種小名を連記する二名式をとるので、属名はより高い段階名より重要で、それらの段階を代表する属名はそれらの名の根拠になる(例、アブ属Tabanus→アブ科Tabanidae)。属名はラテン語の主格単数名詞またはそれに準ずる語を用いることが原則になっている。

[中根猛彦]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「属」の意味・わかりやすい解説


ぞく
genus

生物分類上の単位の一つで,種の上の分類群。二名法による場合には,種よりもむしろ属に基準がおかれるような形になり,たとえば,ショウジョウバエ属の一種であるが,種名が不明,あるいは明示する必要がないときには Drosophila sp.のごとく,種名は sp. (speciesの略で某種の意。複数は spp.) ですませる。学名では属名はラテン語またはラテン化した語で名詞の形をとり,頭文字を大文字にする。そして種小名はそのあとに添えて書くことになっている。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【種】より

…ここでは主として分類学の立場から種について説明する。日常語で種類という場合には生物学的な分類の階級を考慮したものではないため,亜種や変種,ときには属や科などを指すこともある。
[種概念の変遷]
 生物の種の認識は人間の歴史とともにはじまったといえる。…

【分類学】より

…命名については国際動物(植物)命名規約によって方法が規定されている。 分類群の階級としては,種speciesを基本的な単位として,それより上級に属genus,科family,目order,綱class,門division(動物ではphylum)などが設けられ,それらの間にもいくつかの階級を設けてもよいことになっている。種以下の分類群としては,動物の命名規約では,亜種subspeciesだけが認められているが,植物の場合には,亜種のほかに変種variety,亜変種,品種などの階級も認められている。…

※「属」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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