(読み)サイ

デジタル大辞泉 「最」の意味・読み・例文・類語

さい【最】

[ト・タル][文][形動タリ]程度がもっともはなはだしいさま。第一番であるさま。多く、「最たる」の形で用いる。「成り金趣味のたるものだ」
[形動][文][ナリ]に同じ。
「僕の一生に大感化を及ぼした者…駒井先生と兼頭君がその―なる者である」〈蘆花思出の記
[接頭]名詞に付いて、もっとも、この上ない、の意を表す。「業界でも大手の会社」「前線」「先端」「優秀選手」
[類語]極上特上一番一等一級無上至上至高最高最良最善最上随一ぴか一白眉はくびベストナンバーワントップ最も

さい【最】[漢字項目]

[音]サイ(呉)(漢) [訓]もっとも も
学習漢字]4年
サイ〉もっとも。いちばん。「最悪最近最高最終最初最大最適最良
〈も〉「最中もなか最早もはや最寄もより
[名のり]いろ・かなめ・たかし・まさる・ゆたか・よし
難読最中さなか

も【最】

[接頭]状態を表す語に付いて、真に、本当に、もっとも、などの意を表す。「中」「寄り」「はや」

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「最」の意味・読み・例文・類語

いと【最・甚】

  1. 〘 副詞 〙
  2. 程度のはなはだしいさま。
    1. (イ) 肯定表現、または肯定的な気持で用いる。とても。たいへん。非常に。
      1. [初出の実例]「吾妹子(わぎもこ)が屋どの橘甚(いと)近く植ゑてしゆゑに成らずは止まじ」(出典万葉集(8C後)三・四一一)
    2. (ロ) 否定表現、または否定的な気持で用いる。あまり(…ではない)。それほど(…ではない)。
      1. [初出の実例]「天の河伊刀(イト)川波は立たねども伺候(さもら)ひ難し近きこの瀬を」(出典:万葉集(8C後)八・一五二四)
      2. 「いとやむごとなききはにはあらぬが」(出典:源氏物語(1001‐14頃)桐壺)
  3. 事態が並々でない、常態以上の程度に出ることへの詠嘆強調
    1. (イ) 肯定表現、または肯定的な気持で用いる。ほんとうに。まったく。
      1. [初出の実例]「いとかうきびはなる程は、あげおとりや、と疑はしく思されつるを」(出典:源氏物語(1001‐14頃)桐壺)
    2. (ロ) 否定表現、または否定的な気持で用いる。あまりにも。(たださえ…なのに)いよいよ。まさか(…までのことはあるまい)。
      1. [初出の実例]「春の雨はいやしきふるに梅の花いまだ咲かなく伊等(イト)若みかも」(出典:万葉集(8C後)四・七八六)

最の語誌

( 1 )「いと」と同源の類義語に「いたく」の「いた」、「いちしろし」の「いち」がある。このうち「いと」と「いたく」については、前者が形容詞性の語、後者が動詞性の語を修飾するという機能分担があることが指摘されている。
( 2 )「いと」は上代から用例があるが、中古以降の漢文訓読語にはほとんど使用されず、「はなはだ」が使われた。そのかわり、和文特有語として、散文に愛用され、かなり長い期間にわたって使用された。
( 3 )平安時代には、重複形「いといと」、その変化した「いとど」などが派生している。→いとど


さい【最】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( 形動ナリ・タリ ) 程度がもっともはなはだしいこと。また、そのさま。第一番。第一等。主要。現在では、多く「最たる」の形で用いる。
    1. [初出の実例]「仰、部内寺社皆是国司之最也」(出典:兵範記‐保元元年(1156)閏九月一八日)
    2. 「僕の一生に大感化を及ぼした者、母を除いては、駒井先生と兼頭君とが其最なる者である」(出典:思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉八)
    3. [その他の文献]〔漢書‐周勃伝〕
  3. ( 接頭語的に名詞の上について ) 「この上ない」の意を示す語。
    1. [初出の実例]「其年中の最(サイ)傑作戯曲に対し」(出典:欧米印象記(1910)〈中村春雨〉伯林雑記)

も【最】

  1. 〘 接頭語 〙 ( 「ま(真)」と同語源か ) 状態を表わす体言に付いて、真に、もっとも、などの意を添える。「も中」「も寄り」など。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「最」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 12画

(異体字)
12画

[字音] サイ
[字訓] とる・あつめる・もっとも

[説文解字]

[字形] 会意
正字はに作り、(ぼう)+取。取は耳をもつ形。戦場で敵を討ち取ったとき、その左耳を切って証とし、それによって軍功を定めた。〔説文〕七下に「犯して取るなり」とし、また字条七下に「積むなり」とするが、両字は声義同じく、もと同字である。・冖(べき)は上から覆う形。左耳を集めて、その数を軍功としたので、とは首功、第一の功をいう。集める意もあり、撮の初文。副詞にして「もっとも」という。

[訓義]
1. とる、あつめる、討ち取った敵の左耳を切ってあつめる。
2. 左耳の数で軍功を定め、首功を最という。
3. 撮の初文で、とり集める、ひろい集める。
4. すべる、くくる、しめくくる。
5. もっとも、はなはだ、すぐれる、第一。

[古辞書の訓]
名義抄〕最 ツトム・モトム・モトモ・アツマル・イト・スグル・アツム・ハジメ・クタク/最 ハツホ

[声系]
〔説文〕に最声として撮を収め、「兩指もて撮るなり」という。つまみあげるというほどの意。

[語系]
最tzuat、撮tsuatは声義近く、撮は最から分化した字。纂tzuan、dzhoan、dzuanはみな纂集の意をもち、また最・撮と関連のある語である。

[熟語]
最愛・最下・最佳・最課・最宜・最鉅・最近・最啓・最賢・最後・最功・最工・最好・最幸・最高・最終・最初・最小・最勝・最上・最新・最盛・最先・最善・最尊・最多・最大最中・最低・最殿・最微・最品・最凡・最末・最目・最尤・最優・最要・最吏

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