蟠る(読み)ワダカマル

デジタル大辞泉 「蟠る」の意味・読み・例文・類語

わだかま・る【×蟠る】

[動ラ五(四)]
輪状に曲がって巻いている。とぐろを巻く。「―・っている蛇」
入り組んで複雑に絡み合っている。「老松の根が―・っている」
心に不平・不満・不安などがあって晴れ晴れしない。「不吉な予感が胸に―・る」
かがんでうずくまる。また、しっかりと根をはる。蟠踞ばんきょする。
「あたかも毘留遮那大仏が虚空に―・っているような雪峰で」〈河口慧海・チベット旅行記〉
盗んで自分のものとする。横領する。
「主人の金子きんすを―・り」〈浄・歌念仏
[類語](3もやもやぼけっと朦朧もうろうぼやける雲をつかむ不確か曖昧曖昧模糊ファジー茫乎ぼうこぼうっとなんとなくなんだかそこはかとないほんのりなんとはなしどことなくそれとなしに心なしなにかしら思いなしかほのか模糊茫茫ぼうぼう漠漠不明瞭茫漠ぼうばくもやくやもやつくぼんやり彷彿ほうふつ不鮮明憂鬱憂さ鬱気気鬱鬱鬱陰鬱鬱然鬱陶しい物憂い暗鬱沈鬱くよくよくしゃくしゃ重苦しいくさくさ滅入る塞ぐ塞ぎ込む気塞ぎ悶悶もんもんやるせないくすぶる意気消沈暗澹あんたん胸騒ぎ怪訝けげんいぶかしいいぶかる辛気歯がゆいいらいら

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精選版 日本国語大辞典 「蟠る」の意味・読み・例文・類語

わだかま・る【蟠】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙
    1. 輪のような形状にかがまり曲がる。蛇などがとぐろを巻く。
      1. [初出の実例]「安坐すること龍の蟠(ワタカマレ)るがごとし」(出典:大智度論天安二年点(858))
    2. くねり曲がる。
      1. [初出の実例]「七曲にわだかまりたる玉の」(出典:枕草子(10C終)二四四)
      2. 「松が信楽の鉢に、蟠(ワダカ)まる根を盛りあげて、くの字の影を椽に伏せる」(出典:虞美人草(1907)〈夏目漱石〉一〇)
    3. 心が、ねじけ曲がる。悪意がある。
      1. [初出の実例]「サキノ ゴトク vadacamatte(ワダカマッテ) ミヲ タバカルトモ」(出典:天草本伊曾保(1593)大海と野人の事)
    4. 心の中に、ある考え、感情が滞っている。あるこだわった考え、気持があってさっぱりしないでいる。多く、不満・悪感情など、悪い考え・気持についていう。
      1. [初出の実例]「常に彼等の心の底にそれが蟠居(ワダカマッ)て居たら如何だらう」(出典:夫婦(1904)〈国木田独歩〉六)
    5. 滞って動かないでいる。固まって滞る。
      1. [初出の実例]「其の黒い影は後の襖の上に蟠(ワダカマ)った儘、少しも動く事が無い」(出典:夢の女(1903)〈永井荷風〉三)
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 ラ行四段活用 〙 人をだまして、ある物を自分の物にする。着服する。横領する。
    1. [初出の実例]「誰人にてもこがれての状たまはるを、蟠(ワダカマ)りて届けずば汝恋しらずなり」(出典:浮世草子男色大鑑(1687)一)

わだま・る【蟠】

  1. 〘 自動詞 ラ行四段活用 〙わだかまる(蟠)[ 一 ]新撰字鏡(898‐901頃)〕

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