髣髴(読み)ホウフツ

デジタル大辞泉 「髣髴」の意味・読み・例文・類語

ほう‐ふつ〔ハウ‐〕【××髴/××彿】

[名](スル)
ありありと想像すること。よく似ているものを見て、そのものを思い浮かべること。「往時を―させる」
ミイラに因って埃及エジプト人を―する」〈漱石吾輩は猫である
ぼんやりしていること。
「眸を凝らして海を望めば、―の間」〈鴎外訳・即興詩人
[ト・タル][文][形動タリ]
ありありと想像するさま。目の当たりに見る思いをするさま。「郷里を―とする」「故人が―として現れる」
ぼんやりしているさま。
「彼が何物をか有しているのが、―として認められた様である」〈鴎外青年
よく似ているさま。
「田の太夫の舞台顔に―たり」〈逍遥当世書生気質
[類語]1明瞭明快平明簡明明晰明白明明白白端的はっきりくっきりありありまざまざしか明らかきわやか定かさやか鮮やか一目瞭然火を見るよりも明らか手に取るようたなごころを指すまがう方ない隠れもない見るからめっきり浮き彫りクリア鮮明分明顕著顕然歴然歴歴瞭然亮然りょうぜん判然画然截然せつぜん明確明解自明鮮烈目に見える言わずと知れたまぎれもない/(2もやもやぼけっと朦朧もうろうぼやける雲をつかむ不確か曖昧曖昧模糊ファジー茫乎ぼうこぼうっとなんとなくなんだかそこはかとないほんのりなんとはなしどことなくそれとなしに心なしなにかしら思いなしかほのか模糊茫茫ぼうぼう漠漠不明瞭茫漠ぼうばくもやくやもやつくぼんやり不鮮明憂鬱憂さ鬱気気鬱鬱鬱陰鬱鬱然鬱陶しい物憂い暗鬱沈鬱くよくよくしゃくしゃ重苦しいくさくさ滅入る塞ぐ塞ぎ込む気塞ぎ悶悶もんもんやるせないくすぶるわだかまる意気消沈暗澹あんたん胸騒ぎ怪訝けげんいぶかしいいぶかる辛気歯がゆいいらいら/(3共通通有普遍同一一律一つ類似相似酷似近似似たり寄ったり類縁通ずる通う通底いつにする

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精選版 日本国語大辞典 「髣髴」の意味・読み・例文・類語

ほう‐ふつハウ‥【髣髴・彷彿】

  1. 〘 名詞 〙 ( 形動タリ )
  2. ( ━する ) よく似ていること。また、そのさま。そっくりなさま。
    1. [初出の実例]「水上有花。非軽葩之全浮。是余光之漫映。焔焔焼波。髣髴火井之夜燃」(出典:本朝文粋(1060頃)一〇・花光浮水上詩序〈源順〉)
    2. 「今その声ざまをきくに、毛国鼎に似たるのみならず、面影も又彷彿(ホウフツ)たり」(出典:読本・椿説弓張月(1807‐11)拾遺)
    3. [その他の文献]〔慧琳経音義‐二五〕
  3. ( ━する ) ありありと眼前に見えること。はっきりと脳裏に浮かぶこと。また、そのさま。
    1. [初出の実例]「後世儒者、奚為獲其髣髴」(出典:童子問(1707)下)
    2. 「この笛の音は、我に髣髴としてその面影を認めしめたり」(出典:即興詩人(1901)〈森鴎外訳〉歌女)
  4. 影のおぼろなこと。ほのかであること。姿、形がかすかであること。また、そのさま。
    1. [初出の実例]「髣髴佳人家、潺湲道士渓」(出典:菅家文草(900頃)一・賦得詠青)
  5. はっきりしないこと。あいまいなこと。たしかでないこと。また、そのさま。
    1. [初出の実例]「此詩上句為髣髴、作者之心如何」(出典:江談抄(1111頃)四)
    2. [その他の文献]〔揚雄‐甘泉賦〕

ほう‐ほつハウ‥【髣髴・彷彿】

  1. 〘 名詞 〙 ( 形動タリ ) =ほうふつ(髣髴)色葉字類抄(1177‐81)〕
    1. [初出の実例]「児童の貌顕たり、髣髴(ハウホツ)たる事、明月の薄雲を隔たるが如く」(出典:源平盛衰記(14C前)二八)

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