デジタル大辞泉 「誠」の意味・読み・例文・類語
ま‐こと【誠/▽真/▽実】

1 本当のこと。うそ・偽りのないこと。「うそから出た―」「―の武士」
2 誠実で偽りのない心。すなおでまじめな心。「―の情」「―を尽くす」
3 歌論・俳論用語。作品に現れる作者の真情・真実性。

「―済まん次第じゃが」〈有島・カインの末裔〉

「―、人知れず心ひとつに思ひ給へあまること侍れ」〈狭衣・四〉
[類語](


儒教の徳目。敬が外面的恭順をいうのに対して精神態度の誠実をいう。『大学』の8条目に誠意があり、『中庸(ちゅうよう)』には「誠とは天の道なり。これを誠にするは人の道なり」とある。朱熹(しゅき)(朱子)は、この誠を真実で邪心のないこと、天の理法の本来の姿と解釈した。つまり天の理法は人間の道徳実践の目標としてあり、その内容は真実無妄(むぼう)だというのである。聖人はこの境地に達しているが、凡人は道徳実践によって天の理法と合一することが求められた。『大学』の誠意章は、朱熹が臨終の数日前まで補訂の筆をとるほど重視したが、ただ朱子学では、誠意の前段階である「物に格(いた)り、知を致(いた)す」という認識方法に重点が置かれていた。明(みん)代の王陽明(守仁(しゅじん))は『大学』の古いテキストの再評価を通して、誠意が学問の中心テーマであることを明らかにした。このようにして誠意は宋明(そうみん)代思想の重要な問題点の一つとなったのである。
[佐野公治]
近世の日本儒教のもっとも基本的な徳目である。また日本で強調された誠は、中国の誠と異なり、天の理法との合一に誠をみるものではなく、人と交わり事をなすときにおける心情の純粋さそのものを内容とした。この誠を重視する傾向は「已(や)むことを得ざる、これを誠と謂(い)う」とした山鹿素行(やまがそこう)に始まるが、人と交わり事をなすときの欺かず偽らざる真実さを実践倫理の根本とした伊藤仁斎(じんさい)によって強力に推し進められた。後期において、誠は表裏一体・内外一致という仕方で一般に理解されたが、誠を重視する傾向がもっとも高まったのは幕末である。吉田松陰(しょういん)は、心に思うことを実行に移すこと(実)、その一事に集中すること(1)、事が成就(じょうじゅ)するまで持続すること(久)を誠の三大義とした。このような誠重視の傾向は、清明心などを重んじた古来の日本人の伝統的心情が儒教概念の理解に反映したものである。
[相良 亨]
『武内義雄著『日本の儒教』(『易と中庸の研究』所収・1943×・岩波書店)』▽『相良亨著『近世の儒教思想――「敬」と「誠」について』(1966・塙書房)』
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報
…しかし,景をして言外の情を語らしめる理想は,現実には景に情を託そうとはかる作為的な句作りに落ちやすい。景情融合の句作りを保証するものは表現主体が表現対象と合一する境地であり,合一をもたらすものは〈誠(まこと)〉,妨げるものは私意であるという芭蕉は,誠を責めれば句作りは自然に成ると説いたが,その高度な抽象論を理解し,実践できる者はまれであった。晩年の芭蕉は,私意の介入する余地のないまでに情の表出を抑え,〈軽み〉と称して日常の景を淡々と描き出す作風を唱導したが,そのために浪漫的な香気が失せたことも否めない。…
…矛盾が明らかなときには,彼らは彼らの立場を固執する。彼らの立場は,戦国武士団の理想であり,仲間の団結と主君への忠誠である。彼らにとっては,その所属する共同体を超えるいかなる絶対的価値も存在しなかった。…
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