開く(読み)ヒラク

デジタル大辞泉 「開く」の意味・読み・例文・類語

ひら・く【開く】

[動カ五(四)]

㋐閉じふさがっていたものがあけ広げられる。あいた状態になる。「戸が―・く」「傷口が―・く」
㋑花が咲く。「梅の花が―・く」
物事が始まる。業務が始まる。「店が―・く」
㋓二者の間に差ができる。隔たり・差が大きくなる。「値が―・く」「点数が―・く」
㋔わだかまりがなくなる。「心が―・く」
㋕力のためがなく、姿勢の向きがすぐ変わる。「からだが早く―・くので打球ファウルになりやすい」
㋖《投票箱を開くところから》開票が始まる。

㋐閉じふさがっていたものをあけ広げる。「窓を―・く」
㋑(「披く」「展く」とも書く)畳んであるもの、閉じてあるものなどを広げる。「本を―・く」
㋒物事を始める。業務を始める。また、金融機関口座を設ける。「幕府を―・く」「店を―・く」「口座を―・く」
㋓(「拓く」とも書く)未開拓の場所・土地などに手を入れて利用できるようにする。開拓する。開墾する。「山林を―・く」
㋔あけて道をつくる。道をゆずる。「血路を―・く」「後進に道を―・く」
㋕よい方へ向くように努める。「自分で運を―・く」
㋖隔たり・差を大きくする。「差を―・く」「後続ランナーとの距離を次第に―・く」
㋗わだかまりなどを取り去る。包み隠してあるものをなくす。「胸襟を―・く」
㋘身をかわす。「右に体を―・いて投げを打つ」
㋙(「啓く」とも書く)知識を授ける。啓発する。「もうを―・く」
㋚会などを催す。「展示会を―・く」
数学で、平方根・立方根を求める。また、括弧かっこ付きの式を括弧のない形に変える。
原稿の、文章中の漢字をかなに書きなおす。「かなに―・く」→閉じる
忌み詞で、終わる、逃げる。
「急ぎいづ方へも御―・き候ふべし」〈古活字本保元・中〉
盛んにする。
「楽しみを春の花の前に―・き」〈古活字本平治・中〉
疑わしいことを解明する。
「不審を―・かんために」〈太平記・二五〉
ける[用法]
[可能]ひらける
[動カ下二]ひらける」の文語形
[下接句]肝胆をひらく・胸襟を開くきんひら口を開く心を開く枯木こぼくはな開く小間物屋を開く愁眉しゅうびを開くたたけよさらば開かれん鉢をひら兵端を開く眉を開く目を開くもうひら・門戸を開く
[類語]開ける始める起こす創始する開業する始業する咲く開花満開爛漫花期花時早咲き遅咲き狂い咲き返り咲き二度咲き四季咲き室咲き綻びる花開く膨らむ咲き初める咲き乱れる咲きこぼれる・咲き競う・咲き揃う咲き匂う咲き誇る

はだ・く【開く】

[動カ下二]はだける」の文語形。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「開く」の意味・読み・例文・類語

ひら・く【開・披・拓】

  1. [ 1 ] 〘 他動詞 カ行五(四) 〙
    1. [ 一 ] 閉じふさがったものを押し広げる。まとまっているものをほぐして広げる。
      1. あけひろげる。開放する。
        1. (イ) 開き戸、門などをあける。
          1. [初出の実例]「ひさかたの 天の戸比良伎(ヒラキ) 高千穂の 嶽に天降(あも)りし」(出典:万葉集(8C後)二〇・四四六五)
        2. (ロ)(まぶた)、口、手、足などを広げる。
          1. [初出の実例]「マナコヲ firaqu(ヒラク)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
        3. (ハ) 閉ざされた場所、建物などを人がはいれる状態にする。「広く門戸を開く」「開かれた世界」
          1. [初出の実例]「汝等(いましたち)〈略〉新羅(しらき)を撃(う)ちて其(そ)の道路(みち)を披(ヒラケ)」(出典:日本書紀(720)応神一六年八月(北野本南北朝期訓))
        4. (ニ) ( 「心を開く」「胸襟を開く」などの形で ) 自分の殻を解き放って、隠すところなくする。
          1. [初出の実例]「小斎会、并日譚笑開老懐也。殆不快乎」(出典:蔭凉軒日録‐寛正五年(1464)九月七日)
      2. ( 「披」「展」とも )
        1. (イ) たたんであるもの、くっついているものなどを広げる。
          1. [初出の実例]「袈裟を披(ヒラキ)挂け」(出典:守護国界主陀羅尼経平安中期点(1000頃)一〇)
        2. (ロ) 文書・書籍などを見るために広げる。
          1. [初出の実例]「判官文をひらいて御覧ずるに」(出典:浄瑠璃・吉野忠信(1697頃)二)
        3. (ハ) 魚の腹または背から刃を入れて切って広げる。
          1. [初出の実例]「不断着が魚を開いたやうに日南に並べて干してある」(出典:多情多恨(1896)〈尾崎紅葉〉後)
      3. 横風帆走に適するように、帆を片寄せてのばし広げることをいう、船方ことば。
        1. [初出の実例]「Firaite(ヒライテ) ハシル」(出典:日葡辞書(1603‐04))
      4. 「割る」「砕く」などの意で用いる忌み詞。→鏡開き
        1. [初出の実例]「力を入れて鏡餠を開(ヒラ)かうと」(出典:歌舞伎・裏表柳団画(柳沢騒動)(1875)六幕)
      5. 酒杯をからにする。飲みほす。
        1. [初出の実例]「その酒を開(ヒラ)いてくりやれ」(出典:歌舞伎・盟三五大切(1825)大詰)
      6. 数学で、開平・開立をする。累乗根を求める。一般に、n乗根を求めることをn乗に開くといい、平方根を求めることを平方に開く、立方根を求めることを立方に開くという。
        1. [初出の実例]「四百四十八なる数あり之を平方并立方に開(ヒラ)けば各何程なるや」(出典:舶用機械学独案内(1881)〈馬場新八・<著者>吉田貞一〉附録)
      7. ( 「括弧を開く」の形で ) 数学で、括弧のつかない式に変える。
      8. 印刷物の校正などで、漢字を平仮名に改める。平仮名にする。
    2. [ 二 ] 物事を新たに興す。創設する。また、物事を良い方に展開させる。
      1. ( 「拓」とも ) 未開拓の場所・土地などに手を加えて整える。
        1. [初出の実例]「桂椒を(ヒラ)き、移楊をあつむ」(出典:漢書楊雄伝天暦二年点(948))
      2. 新しい流儀・学説などをたてる。「一派を開く」
        1. [初出の実例]「法門を闢(ヒラケリ)」(出典:大唐三蔵玄奘法師表啓平安初期点(850頃))
      3. 事柄を開始する。
        1. (イ) 事業、商売、会合などを始める。起こす。
          1. [初出の実例]「銭湯天明(よあけ)ていまだ店を開(ヒラ)かず」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)前)
        2. (ロ) もよおす。開催する。
          1. [初出の実例]「寄席もしくは講演を開(ヒラ)く様な設備もある」(出典:満韓ところどころ(1909)〈夏目漱石〉二〇)
        3. (ハ) 托鉢を始める。→鉢開き
          1. [初出の実例]「ハチヲ firaqu(ヒラク)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
        4. (ニ) 器物などを初めて使う。
          1. [初出の実例]「ダウグヲ firaqu(ヒラク)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
      4. 繁栄、幸福、幸運などを求めて、その状態になるようにする。
        1. [初出の実例]「門をひらき、栄花をひらかせ給へば」(出典:大鏡(12C前)六)
      5. ( 木版印刷で ) 開板する。出版する。
        1. [初出の実例]「さかいにてちかき比あたらしくひらきたる年代記のはんき」(出典:御湯殿上日記‐享祿五年(1532)六月七日)
    3. [ 三 ] ( 「啓」とも ) 事柄を明らかにする。解き明かす。
      1. 疑念などを晴らす。弁明する。
        1. [初出の実例]「四方の衆生に斉しく疑ひを啓(ヒラカ)しめたまふ」(出典:守護国界主陀羅尼経平安中期点(1000頃)三)
      2. 無知蒙昧(もうまい)を教えただす。「蒙を開く」
        1. [初出の実例]「身を修め智を開き才芸を長するによるなり」(出典:太政官第二一四号‐明治五年(1872)八月二日(法令全書))
      3. 真理・道理などを明らかにする。また、その奥義や悟りの域に到達する。
        1. [初出の実例]「世親菩薩書を覧論を閲(ヒライ)て沈吟することやや久くして」(出典:大唐西域記長寛元年点(1163)四)
      4. 反駁(はんばく)する。弁駁(べんばく)する。
        1. [初出の実例]「頓(とみ)に難説と云は、是孟子の所謂遁辞たりと闢くべし」(出典:敬斎箴講義(17C後))
    4. [ 四 ] 米相場で、高値になってから売り埋める。〔稲の穂(1842‐幕末頃)〕
  2. [ 2 ] 〘 自動詞 カ行五(四) 〙
    1. 閉じふさがったものが広がりあく。
      1. [初出の実例]「ひらけるかどよりうちいる道もさりあへず、人はうち散らされ」(出典:松浦宮(12C終)二四)
    2. 花などがほころびる。開花する。
      1. [初出の実例]「ハナガ firaqu(ヒラク)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
    3. 物事が良い方向にゆく。繁栄したり幸運な状態になったりする。
      1. [初出の実例]「開(ヒラ)く御運が定ならば」(出典:浄瑠璃・源頼家源実朝鎌倉三代記(1781)七)
    4. ( 敵の攻撃などに対して ) 身を引いて構える。また、身をかわす。
      1. [初出の実例]「件の鉞(まさかり)を以て開き〈略〉思様に打ける処を」(出典:太平記(14C後)三二)
    5. ( 武士が用いる「落ちる」「ひく」などの意の忌み詞 ) 退陣する。退散する。逃げる。
      1. [初出の実例]「いそぎいづ方へも御ひらき候べし」(出典:保元物語(1220頃か)中)
    6. 転じて、宴会、会合などが終わって帰る。また、解散する。→お開き
      1. [初出の実例]「こんれいにわ、かゑるといふ事を、ひらくといふ物だ」(出典:咄本・さとすゞめ(1777)婚礼)
      2. 「席は一先(ひとまづ)十時に開(ヒラ)きて」(出典:心の闇(1893)〈尾崎紅葉〉九)
    7. ものとものの間に隔たりができる。
      1. (イ) 距離や年齢が隔たる。
        1. [初出の実例]「二人は姉弟なのだろうか? 年はいくつひらいているだろう?」(出典:鶸(1972)〈三木卓〉)
      2. (ロ) 差がつく。格が違う。
        1. [初出の実例]「よほど上な事、ひらく」(出典:当世花詞粋仙人(1832))
        2. 「あんまり明夫が勝つので、二位との差がひらき過ぎた」(出典:絵合せ(1970)〈庄野潤三〉一六)
      3. (ハ) 値段に違いが出る。値が離れる。
  3. [ 3 ] 〘 自動詞 カ行下二段活用 〙ひらける(開)

開くの補助注記

古くは、四段活用の「ひらく」は、他動詞としての用法に限られ、自動詞の用法は、下二段活用の「ひらく」が対応していた。→ひらける


はだ・く【開】

  1. 〘 自動詞 他カ下二 〙はだける(開)

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