(読み)チョウ

デジタル大辞泉 「帳」の意味・読み・例文・類語

ちょう【帳】[漢字項目]

[音]チョウチャウ)(呉)(漢) [訓]とばり
学習漢字]3年
長い垂れ幕。とばり。「帳台開帳几帳錦帳紙帳緞帳どんちょう
記入用の冊子。「帳簿帳面記帳台帳通帳手帳大福帳
[名のり]はる
[難読]蚊帳かや主帳さかん

と‐ばり【帳/×帷】

室内や外部との境などに垂らして、区切りや隔てとする布帛ふはく。たれぎぬ。たれぬの。
物をおおいかくすもの。さえぎって見えないようにするもの。「夜の―」
[類語]カーテン暖簾窓掛け日除け日覆いシェードブラインド

ちょう〔チヤウ〕【帳】

帳面。帳簿。「雑記
「節季に―かたげた男の貌を見ぬを」〈浮・永代蔵・二〉
部屋の仕切り、また、目隠しのために垂らす布帛ふはく。とばり。たれぎぬ。
帳台1」に同じ。
「寝殿の東面に―たてて」〈大鏡・二・実頼〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「帳」の意味・読み・例文・類語

ちょうチャウ【帳】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 屏障具の一つ。室内をくぎったり、人目をさえぎったりするために、室内の上部から垂れ下げる布帛(ふはく)総称。几帳(きちょう)・壁代(かべしろ)・帳台の類。とばり。たれぎぬ。また、陣営や野外にはる幔幕(まんまく)
    1. [初出の実例]「ちゃうのうちよりも出ださず、いつき養ふ」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
    2. [その他の文献]〔班固‐東都賦〕
  3. ちょうだい(帳台)」の略。
    1. [初出の実例]「かのみこすみける帳のかたびらのひもに、ふみをゆひつけたりけるを」(出典:古今和歌集(905‐914)哀傷・八五七・詞書)
  4. 厨子(ずし)などの小さい木製のとびら。
    1. [初出の実例]「御廟の御前にて祈誓を致し、御帳を開きたりけるに」(出典:源平盛衰記(14C前)四〇)
  5. 帳面。帳簿。江戸時代、奉行所や町内などの公的な帳簿は「お帳」の形で言われ、また、年始帳・閻魔帳・過去帳など、特定の帳簿の略称としても使われる。
    1. [初出の実例]「国司相替之日、依帳承付、不更勘験」(出典続日本紀‐和銅七年(714)四月壬午)
    2. [その他の文献]〔通俗編‐貸財・帳〕

と‐ばり【帳・帷】

  1. 〘 名詞 〙 ( 古く「とはり」とも )
  2. 室内や寝所・帳台・厨子・高御座(たかみくら)、また、外部との境などに垂らして、区切りや隔てとしたり、光をさえぎったりなどするための布。壁代(かべしろ)、几帳(きちょう)のれんなど。とばりちょう。
    1. [初出の実例]「乃ち室(よとの)に入て、帳(トハリ)を開きて玉床(みゆか)に居(ま)します」(出典:日本書紀(720)履中即位前(図書寮本訓))
  3. 物を隔て区切るもの、覆い隠して見えなくするもののたとえにいう。
    1. [初出の実例]「七夕のよとてのすがた立かくすきりのとはりに秋風ぞふく〈藤原家良〉」(出典:建長八年百首歌合(1256))

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「帳」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 11画

[字音] チョウ(チャウ)
[字訓] とばり・まく・ちょうめん

[説文解字]

[字形] 形声
声符は長(ちよう)。〔説文〕七下に「張れるものなり」とあり、張りめぐらすものをいう。牀上などに用いた。

[訓義]
1. とばり、はりめぐらす。
2. まく、まんまく、陣幕。
3. 葬所、葬儀のところ。
4. まくなどを数える助数詞
5. ちょうめん、帳簿。
6. 張と通じて用いる。

[古辞書の訓]
名義抄〕帷帳 カタビラ・トバリ/几帳 キチヤウ

[語系]
帳・張・漲・脹tiangは同声。みな、はりひろがる意がある。暢thiangは伸張・暢達の意。掌tjiangも広がるものの意をもつ語であろう。

[熟語]
帳幄・帳帳帷・帳飲・帳影・帳・帳下・帳外・帳額・帳御帳衾帳鉤・帳・帳冊・帳司・帳室・帳宿・帳籍・帳前・帳中・帳殿・帳内・帳簿・帳房・帳幕帳幔・帳門・帳裏
[下接語]
帷帳・維帳・雲帳・王帳・帳・開帳・隔帳・寒帳・几帳・記帳・綺帳・虚帳・錦帳・空帳・軽帳・孤帳・洪帳・絳帳・沙帳・紙帳・手帳・帳・戎帳・牀帳・帳・翠帳・毳帳・籍帳・氈帳・祖帳・台帳・帳・通帳・斗帳・緞帳・撥帳・布帳・符帳・武帳・蚊帳・夜帳・羅帳・冷帳・廬帳

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「帳」の意味・わかりやすい解説

帳 (ちょう)

壁代(かべしろ),引帷(ひきもの),几帳(きちよう),斗帳(とちよう),軟障(ぜじよう),幌(とばり)など室内で屛障用に用いられる帷(かたびら)の総称。〈とばり〉ともよむ。帷は布を数条縫い合わせて垂れ下げるものをいう。〈かたびら〉は片枚(かたひら)という意味で,〈片〉は対になるべきものの一方を意味し,〈枚〉は薄くて平らなものをいうから,文字通りだと裏のつかない布ということであるが,帳の場合はほとんど袷(あわせ)になっている。壁代は壁の領域(しり)の意。古代の建築は間仕切壁がほとんどなく,必要に応じて帳を張って間仕切としていたため壁代といった。寝殿造では母屋と庇(ひさし)の間に御簾(みす)といっしょにかけられた。冬は平絹に紫茶の朽木形文様や纐纈(こうけち)文,夏は生絹に白泥で花鳥や秋草などを描き,裏はいずれも艶出しした白平絹で上に袋乳をつけ,綱を通す。長さは約1丈,幅は場所に合わせて縫いつなげ表面には1幅ごとに野筋という紐を垂らす。野筋は壁代を巻き上げたとき縛るためである。引帷も壁代の一種で,曳物,引物とも書き,野筋が表裏両面についている。壁代より自由に室内の適宜な間仕切として用い,色柄も華やかなものが多かったようである。壁代が衝立(ついたて)式になったものが几帳である。箱形の台の上に柱が2本あるT字形の棹を立て,上の横木から帷を垂らす。棹は黒漆塗で,高さにより三尺几帳,四尺几帳とあり,三尺には四幅,四尺には五幅の帷を垂らす。屛風のように人の周囲,庇と母屋の境の御簾の下などに立てた。身近に立てるには三尺几帳が使われ,御簾の下には四尺几帳が使われた。斗帳は帳台のことであるが,帳台の周囲にかける帷のこともいい,単に帳ともいう。材質や作り方などは壁代に似ている。四幅のもの4条と五幅のもの4条の2種類からなり,帳台の四隅にまず四幅の帷をかけ,ついで五幅の帷を四方の中央に垂らす。そしてさらにこれに重ねて上方に帽額(もこう)とよぶ1条の横布を四周にめぐらす。軟障は幔幕(まんまく)に似た間仕切,幌は戸口にかける暖簾(のれん)である。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「帳」の意味・わかりやすい解説


ちょう

(1)屏障(へいしょう)具の一つ。部屋をくぎったり、風や人目を遮るためにかけて垂らす布帛(ふはく)の総称。幌(とばり)、戸帳(とばり)、几帳(きちょう)、壁代(かべしろ)など。(2)帳台(ちょうだい)の略。帳台は、貴人が坐臥(ざが)する寝台で、斗帳(とちょう)、御帳台(みちょうだい)、または帳ともいわれた。畳二畳(じょう)を南北に敷いた上に、L字形の台を四隅に置いて、それに3本ずつ柱を立て、上に四角の枠を組んで天井として、上に白絹を敷き、天井のかまちから周囲に白絹の帷(かたびら)といわれる帳を垂らす。更衣のとき、夏物と冬物にかえた。

[高田倭男]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【帳】より

…壁代(かべしろ),引帷(ひきもの),几帳(きちよう),斗帳(とちよう),軟障(ぜじよう),幌(とばり)など室内で屛障用に用いられる帷(かたびら)の総称。〈とばり〉ともよむ。…

※「帳」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android