(読み)ちょう

精選版 日本国語大辞典 「帳」の意味・読み・例文・類語

ちょう チャウ【帳】

〘名〙
屏障具の一つ。室内をくぎったり、人目をさえぎったりするために、室内の上部から垂れ下げる布帛(ふはく)総称几帳(きちょう)・壁代(かべしろ)帳台の類。とばり。たれぎぬ。また、陣営や野外にはる幔幕(まんまく)
※竹取(9C末‐10C初)「ちゃうのうちよりも出ださず、いつき養ふ」 〔班固‐東都賦〕
② 「ちょうだい(帳台)①」の略。
古今(905‐914)哀傷・八五七・詞書「かのみこすみける帳のかたびらのひもに、ふみをゆひつけたりけるを」
厨子(ずし)などの小さい木製のとびら。
※源平盛衰記(14C前)四〇「御廟の御前にて祈誓を致し、御帳を開きたりけるに」
④ 帳面。帳簿。江戸時代、奉行所や町内などの公的な帳簿は「お帳」の形で言われ、また、年始帳・閻魔帳・過去帳など、特定の帳簿の略称としても使われる。
続日本紀‐和銅七年(714)四月壬午「国司相替之日、依帳承付、不更勘験」 〔通俗編‐貸財・帳〕

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デジタル大辞泉 「帳」の意味・読み・例文・類語

ちょう【帳】[漢字項目]

[音]チョウチャウ)(呉)(漢) [訓]とばり
学習漢字]3年
長い垂れ幕。とばり。「帳台開帳几帳錦帳紙帳緞帳どんちょう
記入用の冊子。「帳簿帳面記帳台帳通帳手帳大福帳
[名のり]はる
[難読]蚊帳かや主帳さかん

と‐ばり【帳/×帷】

室内や外部との境などに垂らして、区切りや隔てとする布帛ふはく。たれぎぬ。たれぬの。
物をおおいかくすもの。さえぎって見えないようにするもの。「夜の―」
[類語]カーテン暖簾窓掛け日除け日覆いシェードブラインド

ちょう〔チヤウ〕【帳】

帳面。帳簿。「雑記
「節季に―かたげた男の貌を見ぬを」〈浮・永代蔵・二〉
部屋の仕切り、また、目隠しのために垂らす布帛ふはく。とばり。たれぎぬ。
帳台1」に同じ。
寝殿東面に―たてて」〈大鏡・二・実頼〉

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改訂新版 世界大百科事典 「帳」の意味・わかりやすい解説

帳 (ちょう)

壁代(かべしろ),引帷(ひきもの),几帳(きちよう),斗帳(とちよう),軟障(ぜじよう),幌(とばり)など室内で屛障用に用いられる帷(かたびら)の総称。〈とばり〉ともよむ。帷は布を数条縫い合わせて垂れ下げるものをいう。〈かたびら〉は片枚(かたひら)という意味で,〈片〉は対になるべきものの一方を意味し,〈枚〉は薄くて平らなものをいうから,文字通りだと裏のつかない布ということであるが,帳の場合はほとんど袷(あわせ)になっている。壁代は壁の領域(しり)の意。古代の建築は間仕切壁がほとんどなく,必要に応じて帳を張って間仕切としていたため壁代といった。寝殿造では母屋と庇(ひさし)の間に御簾(みす)といっしょにかけられた。冬は平絹に紫茶の朽木形文様や纐纈(こうけち)文,夏は生絹に白泥で花鳥秋草などを描き,裏はいずれも艶出しした白平絹で上に袋乳をつけ,綱を通す。長さは約1丈,幅は場所に合わせて縫いつなげ表面には1幅ごとに野筋という紐を垂らす。野筋は壁代を巻き上げたとき縛るためである。引帷も壁代の一種で,曳物,引物とも書き,野筋が表裏両面についている。壁代より自由に室内の適宜な間仕切として用い,色柄も華やかなものが多かったようである。壁代が衝立(ついたて)式になったものが几帳である。箱形の台の上に柱が2本あるT字形の棹を立て,上の横木から帷を垂らす。棹は黒漆塗で,高さにより三尺几帳,四尺几帳とあり,三尺には四幅,四尺には五幅の帷を垂らす。屛風のように人の周囲,庇と母屋の境の御簾の下などに立てた。身近に立てるには三尺几帳が使われ,御簾の下には四尺几帳が使われた。斗帳は帳台のことであるが,帳台の周囲にかける帷のこともいい,単に帳ともいう。材質や作り方などは壁代に似ている。四幅のもの4条と五幅のもの4条の2種類からなり,帳台の四隅にまず四幅の帷をかけ,ついで五幅の帷を四方の中央に垂らす。そしてさらにこれに重ねて上方に帽額(もこう)とよぶ1条の横布を四周にめぐらす。軟障は幔幕(まんまく)に似た間仕切,幌は戸口にかける暖簾(のれん)である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「帳」の意味・わかりやすい解説


ちょう

(1)屏障(へいしょう)具の一つ。部屋をくぎったり、風や人目を遮るためにかけて垂らす布帛(ふはく)の総称。幌(とばり)、戸帳(とばり)、几帳(きちょう)、壁代(かべしろ)など。(2)帳台(ちょうだい)の略。帳台は、貴人が坐臥(ざが)する寝台で、斗帳(とちょう)、御帳台(みちょうだい)、または帳ともいわれた。畳二畳(じょう)を南北に敷いた上に、L字形の台を四隅に置いて、それに3本ずつ柱を立て、上に四角の枠を組んで天井として、上に白絹を敷き、天井のかまちから周囲に白絹の帷(かたびら)といわれる帳を垂らす。更衣のとき、夏物と冬物にかえた。

[高田倭男]

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【帳】より

…壁代(かべしろ),引帷(ひきもの),几帳(きちよう),斗帳(とちよう),軟障(ぜじよう),幌(とばり)など室内で屛障用に用いられる帷(かたびら)の総称。〈とばり〉ともよむ。…

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