デジタル大辞泉
「丈」の意味・読み・例文・類語
じょう〔ヂヤウ〕【丈】
[名]
1 尺貫法の長さの単位。10尺。1丈は、曲尺で約3.03メートル、鯨尺で約3.79メートル。
2 たけ。長さ。「丈の短い反物」
3 「杖2」に同じ。
[接尾]
1 歌舞伎俳優などの芸名に付けて、敬意を表す。「尾上菊五郎丈」
2 男性の名前の下に付けて、尊敬の意を表す。
「これ新兵衛―」〈浄・いろは蔵三組盃〉
たき【▽丈/▽長】
「たけ(丈)」に同じ。
「身―一丈」〈景行紀〉
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たけ【丈・長】
- 〘 名詞 〙
- ① 物の高さ。人の身長。また、物の長さ。
- [初出の実例]「常陸国の中臣部若子、貢子。長(タケ)尺六寸」(出典:日本書紀(720)天智一〇年三月(北野本訓))
- ② 人の身長をもとにした長さの単位。
- [初出の実例]「寝時の衣は今の被(ふすま)也 長さ一たけなかばにするなり」(出典:足利本論語抄(16C)郷党第十)
- ③ 特に和服で、肩山から裾までの長さ。
- [初出の実例]「ちょっと着てお見せ、丈(タケ)や行が間違やアしないか」(出典:人情本・春色梅児誉美(1832‐33)九)
- ④ 馬の蹄(ひづめ)から背までの高さの称。四尺(約一・二メートル)以上、五尺(約一・五メートル)以下を標準とする。また、単に背の高い意にも用いられる。
- [初出の実例]「真鹿毛なる馬の法師髪にて、長五つき許なるが、足固くて年七八歳許也」(出典:今昔物語集(1120頃か)二八)
- ⑤ ある限り。ありたけ。全部。限り。「ありったけ」「くびったけ」などの形で、接尾語のようにも用いる。
- [初出の実例]「ものおもふ心のたけぞしられぬるよなよな月をながめあかして」(出典:山家集(12C後)中)
- ⑥ 壮大な風格。雄大な趣。
- [初出の実例]「おとどの御うたたけもたかくいとやさしくこそきこへ侍しか」(出典:今鏡(1170)六)
- ⑦ 勢い。
- [初出の実例]「軍の長(たけ)劣りたるに依て難支得し」(出典:今昔物語集(1120頃か)一〇)
- ⑧ 目方の単位。
- [初出の実例]「四分を為二一両一。十二両を為二一長(タケ)一」(出典:壒嚢鈔(1445‐46)九)
丈の語誌
「高い」と同根の語で、「観智院本名義抄」に「長」の訓として「タキタカシ」とあるように、古くは「たき」ともいった。本来、物の高さを指す語で、「平家‐二」に「たけ七尺ばかり」とあるなど、具体的に尺度の示されることが多かった。これに対して、「せ(背)」は本来は「はら(腹)」に対する語で動物などの首から尻尾までの部分を指す語であったが、立っている動物では足下から「せ」までの高さを指すようになり、「たけ」と類義の語となった。
だけ【丈】
- 〘 副詞助 〙 体言または活用語の連体形を受ける。
- ① ( 「たけ」とも ) 程度・限度を表わす。…ほど。…限り。
- [初出の実例]「いきらるるたけ此世でそはふ」(出典:浄瑠璃・冥途の飛脚(1711頃)中)
- 「其仕打は父の人格を反射する丈(ダケ)夫(それ)丈(ダケ)多く代助を不愉快にした」(出典:それから(1909)〈夏目漱石〉一五)
- ② ( ①のうち、特に ) それ相応に、…にふさわしく、…にふさわしい程度に、の意を表わす。→だけに。
- [初出の実例]「ちいさいからの馴染(なじみ)だけ我子の様に思はれて」(出典:浄瑠璃・心中重井筒(1707)中)
- 「さすがは田舎だけ、ものがふ自由だ」(出典:滑稽本・東海道中膝栗毛(1802‐09)四)
- ③ それと限る意を表わす。
- [初出の実例]「下駄さへも年玉だけで扁木にのる」(出典:雑俳・住吉みやげ(1708))
- 「口頭(くち)に出したのは纔に如此(これ)耳(ダケ)であるが」(出典:多情多恨(1896)〈尾崎紅葉〉二)
丈の語誌
( 1 )語源は名詞「たけ(丈)」と考えられる。
( 2 )江戸前期上方語では「伝七殿と名の知れたとは、尋ねて行て恨みのたけを」〔伎・韓人漢文手管始(唐人殺し)‐四〕のように、名詞としての用法と思われる例が多い。現代語でも「なるたけ」「ありったけ」のように清音の形が慣用句の中に残っている。
( 3 )③の用法は江戸後期上方語で発生。江戸語にまで広がったのは明治以降とされる。
じょうヂャウ【丈】
- [ 1 ] 〘 名詞 〙
- ① 長さの単位の一つ。尺貫法による単位で、一〇尺(三・〇三〇三メートル)にあたる。
- [初出の実例]「凡度。十分為レ寸〈略〉十尺為レ丈」(出典:令義解(718)雑)
- 「此の屋のいぬゐの隅の方に、深く一丈掘れる穴あり」(出典:宇津保物語(970‐999頃)俊蔭)
- [その他の文献]〔礼記‐曲礼上〕
- ② =じょう(杖)④
- [初出の実例]「串良院九十丁三段二丈」(出典:建久図田帳(1197)大隅国)
- ③ 地積を測ること。検地。丈量。〔春秋左伝‐襄公九年〕
- ④ 長さ。たけ。
- [初出の実例]「上州絹。〈略〉幅九寸、丈五丈四尺」(出典:万金産業袋(1732)四)
- [ 2 ] 〘 接尾語 〙
- ① 男性の名前に付けて、敬意を表わす。
- [初出の実例]「卯月廿五日 芭蕉桃青 卓袋丈」(出典:卓袋宛芭蕉書簡‐元祿元年(1688)四月二五日)
- ② 歌舞伎俳優など芸人の名前に付けて、敬意を表わす。
- [初出の実例]「芝居俳優及び浄瑠璃太夫等に物を贈る書にのみ某丈江と書く」(出典:随筆・守貞漫稿(1837‐53)三)
たき【丈・長】
- 〘 名詞 〙 =たけ(丈)
- [初出の実例]「身の長(タキ)一丈五尺二寸なり」(出典:法華義疏長保四年点(1002)一)
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普及版 字通
「丈」の読み・字形・画数・意味
丈
常用漢字 3画
(旧字)
3画
[字音] ジョウ(ヂャウ)
[字訓] たけ・としより
[説文解字]
[字形] 会意
杖の形+(又)(ゆう)。は手。手に杖をもつ形で、杖の初文。〔説文〕三上に「十尺なり。の十を持するに從ふ」とするが、十は杖の形。は十尺。尺は指をひろげて長さをはかる形で、わが国の「あた(咫)」にあたる。〔説文〕の夫字条十下に「寸を以て尺と爲し、十尺をと爲す。人は長(たけ)尺なり。故に夫と曰ふ」とみえる。〔論語、泰伯〕「以て六尺(りくせき)のを託すべし」は未成年者。〔穀梁伝、文十二年〕「男子は二十にして冠す。冠して夫に列す」という。〔左伝、襄九年〕に「りてを(はか)る」とあり、杖の長さは一定であった。〔礼記、曲礼上〕に「席、を函(い)る」と、その間隔をおくことを規定しており、尊者への手紙の脇付けに、函丈という。
[訓義]
1. じょう、十尺。
2. たけ、せたけ。
3. 長老、年長者、としより。
4. つえ。
5. つえの長さではかる、はかる。
[古辞書の訓]
〔和名抄〕夫 集に云ふ、末須良乎(ますらを) 〔名義抄〕夫 マスラヲ 〔字鏡集〕 ツヱ・ナガシ
[声系]
〔説文〕六上に声として杖を収め、「持つなり」と訓する。持杖の意である。
[語系]
・杖・仗diangは同声。は長さの意に用い、杖はその木の意に用い、杖に仗(よ)るを仗という。梃・挺dyeng、deangも同系の語で、横さまに挺(てい)するものを梃(てい)という。(とう)は〔説文〕に「杖なり」と訓し、また杖の類である。
[熟語]
丈器▶・丈冊▶・丈室▶・丈尺▶・丈丈▶・丈人▶・丈席▶・丈度▶・丈匹▶・丈夫▶・丈量▶・丈六▶
[下接語]
盈丈・岳丈・函丈・気丈・称丈・尋丈・千丈・万丈・方丈・袤丈・老丈
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
丈
じょう
尺貫法の長さの単位。10尺をいう。約3.03メートルに相当する。古代中国の周代から用いられてきた。『説文』によれば「丈丈夫也、周以八寸為尺、十尺為丈、人長八尺故曰丈夫」とあり、周は8寸(後漢(ごかん)の尺で実長約6寸)を1尺としたので、1丈を現在の基準に直すと実質6尺となる。ちょうど一人前の身長分にあたるので、「丈夫」ということばができた。
[小泉袈裟勝]
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丈 (じょう)
尺貫法における長さの単位。古代中国から,また日本では大宝令以前から用いられてきた。10尺に等しく,1891年制定の度量衡法によれば約3.03m。
執筆者:三宅 史
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
じょう【丈】
尺貫法の長さの単位。10尺が1丈。約3.03m。◇「丈」は古代中国の周代から用いられてきた。ただし、周尺では「1丈」は約1.7mで、成人男子の身長にあたるため、立派な男子を「大丈夫」といった。これがやがて「非常にしっかりしている」意に変化し、さらに現在のように「確かである」「間違いない」意に変化して用いられるようになった。
出典 講談社単位名がわかる辞典について 情報
丈【じょう】
尺貫法の長さの単位。1丈=10尺=100/33m≒3.0303m。
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
世界大百科事典(旧版)内の丈の言及
【尺】より
…したがって1尺は約30.303cmであり,分量単位は1/10尺の寸,以下十進法による分(ぶ),厘,毛である。倍量単位は寸法用と距離・間隔用に分かれ,寸法用の倍量単位は10尺に等しい丈,距離用の倍量単位は6尺の間(けん),60間の町,36町の里である。(2)鯨尺の尺。…
【度量衡】より
… なお度量衡に対応する西欧語は,英語weights and measures,フランス語poids et mesures,ドイツ語Mass und Gewichtなどであって,質量(weights,poids,Gewicht)と長さ・体積(measures,mesures,Mass)との並列という表現になっている。
【史上の度量衡】
中国の《書経》の後につけられた注疏(ちゆうそ)を見ると,〈度はこれ丈尺,量はこれ斛斗,衡はこれ斤両〉とあり,国の法制度としてこれらを等しくしておくのだといった説明がなされている。ここにいう丈,尺,斛(石とも書く)などは,ものごとを数量的に表現するための〈単位〉の呼名である。…
※「丈」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」