知る(読み)シル

デジタル大辞泉 「知る」の意味・読み・例文・類語

し・る【知る】

[動ラ五(四)]
物事の存在・発生などを確かにそうだと認める。認識する。「おのれの非を―・る」「ニュースで事件を―・った」
気づく。感じとる。「昨夜地震は―・らなかった」「―・らずに通り過ぎる」
物事の状態・内容・価値などを理解する。把握する。さとる。「物のよしあしを―・っている」「世界の人口はどのくらいか―・っていますか」
忘れずに覚えている。記憶する。また、物事に通じている。「昔を―・っている人」「内部事情をよく―・っている者の犯行らしい」
経験する。体験して身につける。「酒の味を―・る」「世の中の苦労を―・らない」
学んで、また、慣れて覚える。「フランス語なら、少し―・っている」
付き合いがある。知り合いである。面識がある。「―・っている人に会う」「―・った顔ばかり」
(多く、打消しや反語を伴って用いる)そのことにかかわって責任を持つ。関知する。「私の―・ったことではない」
(「領る」「治る」とも書く)
㋐領有する。所有する。
春日の里に―・るよしして」〈伊勢・一〉
㋑支配する。治める。
「汝が御子やつひに―・らむと雁はらし」〈・下・歌謡
10 世話をする。
「また―・る人もなくて漂はむことのあはれにりがたうおぼえ侍りしかば」〈柏木
[可能]しれる
[動ラ下二]し(知)れる」の文語形
[下接句]過ちをここに仁を知る井の中のかわず大海を知らずいざ知らず衣食足りて礼節を知る一を聞いて十を知る一葉落ちて天下の秋を知る一丁字いっていじらず易者身の上知らず燕雀えんじゃくいずくんぞ鴻鵠こうこくの志を知らんや男を知る親の心子知らず女を知る嘉肴かこうありといえども食らわずんばそのうまきを知らず歌人は居ながらにして名所を知る臭い物身知らず怖いもの知らず疾風に勁草けいそうを知る倉廩そうりんちて礼節を知るたれからす雌雄しゆうを知らんや手の舞い足の踏む所を知らず天知る、地知る、我知る、知る天命を知る年寒くして松柏しょうはくしぼむに後るるを知る情けを知るなんじ自らを知れ恥を知る世に知られる論語読みの論語知らず我が身をつねって人の痛さを知れ
[類語]理解分かる把握解釈分かりのみ込み承知知識認識学ぶ判断解する取る受け取るとらえる物分かり聞き分けわきまえわきまえる分別ふんべつ了知存知聞知合点了解自覚納得早分かり早飲み込み早合点話せる

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「知る」の意味・読み・例文・類語

し・る【知・領】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙 物事の性質、なりゆき、対処すべき方法などがわかる。
    1. [初出の実例]「他国(ひとくに)に君をいませていつまでか吾(あ)が恋ひ居らむ時の之良(シラ)なく」(出典万葉集(8C後)一五・三七四九)
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 ラ行五(四) 〙 物事をすっかり自分のものにする意。
    1. [ 一 ] ( 知 )
      1. 物事の発生、存在、状態、内容、趣きなどをわきまえる。
        1. (イ) 物事の発生や存在を認める。意識する。認識する。感知する。
          1. [初出の実例]「天飛(あまだ)む 軽のをとめ いた泣かば 人斯理(シリ)ぬべし 波佐の山の 鳩の 下泣きに泣く」(出典:古事記(712)下・歌謡)
          2. 「聞きゐたりけるをしらで、人の上いひたる」(出典:枕草子(10C終)九六)
        2. (ロ) 物事の状態、なりゆき、他との区別、対処すべき方法などをわきまえる。
          1. [初出の実例]「小林(をばやし)に 我を引き入(れ)て せし人の 面(おもて)も始羅(シラ)ず 家も始羅(シラ)ずも」(出典:日本書紀(720)皇極三年六月・歌謡)
          2. 「ただ月を見てぞ、にしひんがしをばしりける」(出典:土左日記(935頃)承平五年一月一一日)
        3. (ハ) 物事の意味、内容、情趣、本質などを理解する。さとる。
          1. [初出の実例]「世の中は空(むな)しきものと志流(シル)時しいよよますます悲しかりけり」(出典:万葉集(8C後)五・七九三)
          2. 「いにしへのことをも、哥のこころをもしれる人、わづかにひとりふたりなりき」(出典:古今和歌集(905‐914)仮名序)
        4. (ニ) 打消の語を伴って、「…することができない」の意に用いる。
          1. [初出の実例]「言はむ術(すべ) せむ術知らに 石木をも 問ひ放(さ)け斯良(シラ)ず」(出典:万葉集(8C後)五・七九四)
      2. 考えに入れる。考慮する。
        1. [初出の実例]「『さらにただ、手のあしさよさ、歌のをりにあはざらんもしらじ』とおほせらるれば」(出典:枕草子(10C終)二三)
        2. 「民の愁、国のそこなはるるをもしらず、よろづにきよらをつくしていみじと思ひ」(出典:徒然草(1331頃)二)
      3. 実際に行なってみたり、見聞したりする。経験する。→男を知る女を知る
        1. [初出の実例]「ある時には、風につけてしらぬ国に吹よせられて」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
        2. 「いにしへもかくやは人のまどひけん我まだしらぬしののめのみち」(出典:源氏物語(1001‐14頃)夕顔)
      4. 人と交わり親しむ。面識がある。
        1. [初出の実例]「たれをかもしる人にせん高砂の松も昔の友ならなくに〈藤原興風〉」(出典:古今和歌集(905‐914)雑上・九〇九)
        2. 「明けぬればしれる大徳の坊におりぬ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)玉鬘)
      5. 関知する。かかわりあう。下に打消の語を伴って、相手のことばに対して「拒絶する、問題にしない」という気持を表わす場合が多い。
        1. [初出の実例]「この君は、ただまかせ聞こえさせてしり侍らじ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)東屋)
        2. 「あたしゃア知らないからいい…私しゃア…其様(そん)な失敬な事って…」(出典:浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉三)
    2. [ 二 ] ( 領 )
      1. ある範囲の土地などを治める。統治する。
        1. [初出の実例]「汝(な)が御子や 遂に斯良(シラ)むと 雁は卵産(こむ)らし」(出典:古事記(712)下・歌謡)
        2. 「春宮の御おほぢにて遂に世中をしり給べき右のおとどの御いきほひは」(出典:源氏物語(1001‐14頃)桐壺)
      2. ある場所、土地などを領有する。また、品物や建物などを管理する。
        1. [初出の実例]「葛城の高間の草野(かやの)早知(しり)て標(しめ)刺さましを今そ悔しき」(出典:万葉集(8C後)七・一三三七)
        2. 「丹波に出雲と云所あり〈略〉しだのなにがしとかやしる所なれば」(出典:徒然草(1331頃)二三六)
      3. 世話をする。責任をもって扱う。
        1. [初出の実例]「いとゆたかに、御位のまさるままにも、万をしり給ひ、心もとなき事なし」(出典:落窪物語(10C後)四)
  3. [ 3 ] 〘 自動詞 ラ行下二段活用 〙しれる(知)

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