大野(市)(読み)おおの

日本大百科全書(ニッポニカ) 「大野(市)」の意味・わかりやすい解説

大野(市)
おおの

福井県東部、九頭竜川(くずりゅうがわ)上流にある市。北西部の大野盆地を除く市域の80%以上が山林。1954年(昭和29)大野町を中心に下庄(しもしょう)町と上庄、乾側(いぬいかわ)、富田、小山(おやま)、阪谷、五箇(ごか)の6村が合併して市制施行。1970年西谷村を編入。2005年(平成17)大野郡和泉村(いずみむら)を編入。JR越美北線(えつみほくせん)が通じ、国道157号、158号、476号が走るほか、永平寺大野道路(中部縦貫自動車道の一部)の大野インターチェンジがある。旧大野町は南に古代の篠座(しのくら)神社、東に中世の土橋庄、西に戦国時代の戌山(いぬやま)城があったが、旧市街は1576年(天正4)金森長近(かなもりながちか)の大野(亀山築城に始まり、1682年(天和2)以後土井氏4万石の城下町として明治を迎えた。格子(こうし)状の街路寺町など旧景観を残し、街路中央には旧水路を通して火災、積雪に備えた。清滝川旧扇状地の末端を占め、地下水が豊富で、いまも清水(しょうず)とよばれる湧(わ)き水が生活用水となるが、工場のくみ上げすぎで井戸枯れがおきたこともある。近世の絹織を継ぐ機業は、人絹から化学・合成繊維に変わっている。周辺農山村の物資を集散し、七間(しちげん)通りの朝市は市民に新鮮な野菜を供給してにぎわい、特産に水引(みずひき)細工がある。専福寺の大ケヤキ、九頭竜川のアラレガコ(淡水魚のカジカの一種)生息地と本願清水イトヨ生息地は国指定天然記念物。東部の火山泥流からなる六呂師(ろくろし)高原は放牧場で、キクの露地栽培も盛ん。また、スキー場、キャンプ場ともなっていて、福井県自然保護センターがある。ほかに鳩(はと)ヶ湯温泉、九頭竜峡、真名(まな)峡など観光地が多い。また、上打波(かみうちなみ)に伝わった「かんこ踊(神子おどり)」や巣原(すはら)の「平家踊」は県指定無形民俗文化財。面積872.43平方キロメートル、人口3万1286(2020)。

[島田正彦]

『『大野市史』全15巻(1978~2019・大野市)』『『大野のあゆみ』(1968・大野市)』


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