(読み)かつら

精選版 日本国語大辞典 「桂」の意味・読み・例文・類語

かつら【桂】

[1] 〘名〙
カツラ科の落葉大高木。日本の各地と中国の山地に生える。高さ二五メートル、径一・五メートルをこえるものもある。樹皮は暗灰色で縦に裂け目がある。葉は長さ二~二・五センチメートルの細い柄をもち、長枝には対生し短枝には単生する。葉身は長さ幅とも三~七センチメートルの心臓形で、縁に鈍い鋸歯(きょし)があり、裏面は粉白色。雌雄異株。春、葉に先だって花被のない花を葉腋(ようえき)に単生。雄花は紅色の葯(やく)をつけたおしべ多数から成り、雌花は三~五個のめしべをもち柱頭は糸状で淡紅色を帯びる。花後、短柄のある、やや湾曲した円柱形果実を結ぶ。熟すと紫褐色となって裂け、一端に翼のある長さ五ミリメートルほどの種子をとばす。材は軽く柔らかく、木目(きめ)がまっすぐで変形が少ないので、建築・家具・彫刻材などに用いられる。本州の中・北部には、日本特産の、葉が大形で、種子の両端に翼があり、樹皮は老木となるまで裂けないヒロハカツラが産する。かもかつら。しろかつら。かつらぎ
※古事記(712)上「傍の井の上に湯津香木有らむ。〈略〉〈香木を訓みて加都良と云ふ。木ぞ〉」
※源氏(1001‐14頃)花散里「大きなるかつらの木の追ひ風に、祭の頃おぼし出でられて」
② 中国伝説で、月の世界に生えているという木。→桂男(かつらおとこ)
※万葉(8C後)四・六三二「目には見て手にはとらえぬ月の中の楓(かつら)のごとき妹をいかにせむ」
※古今(905‐914)秋上・一九四「久方の月の桂も秋は猶もみぢすればやてりまさるらむ〈壬生忠岑〉」
③ 桂むきにした生大根を丸めて切り、糸状にしたもの。刺身のつまなどに用いる。
④ 植物「にっけい(肉桂)」また「けいひ(桂皮)」の異名。〔改正増補和英語林集成(1886)〕
[補注]「十巻本和名抄‐一〇」では「桂」を「めかつら」、「楓」を「をかつら」とよむ。
[2] 京都市西京区東部、桂川西岸の地名。桂離宮がある。
※源氏(1001‐14頃)松風「かつらにみるべきことはべるをいさや心にもあらでほどへにけり」

けい【桂】

〘名〙
クスノキ科の常緑高木。中国南部やインドシナなどで栽培される。幹は高さ一五メートルほどになる。葉は革質の長卵円形で長さ七~一〇センチメートル、裏面は粉白色を帯びる。花は帯黄色。樹皮を桂皮といい、芳香があり、調味料、健胃・脱臭剤などとし、また香料に用いる油を採る。とんきんにっけい。
カツラモクセイニッケイ、クス、ゲッケイジュなどの総称。特にニッケイの慣用漢名に用いる。〔色葉字類抄(1177‐81)〕
③ 「けいま(桂馬)①」の略。
※明治浮世風呂(1887)〈浮世粋史〉一三「其歩(ふ)を捨て桂(ケイ)を上った方が宜(いい)ぜ」

かつら【桂】

姓氏の一つ。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「桂」の意味・読み・例文・類語

かつら【桂】[姓氏]

姓氏の一。
[補説]「桂」姓の人物
桂小五郎かつらこごろう
桂湖村かつらこそん
桂太郎かつらたろう
桂春団治かつらはるだんじ
桂文枝かつらぶんし
桂文治かつらぶんじ
桂文楽かつらぶんらく
桂米朝かつらべいちょう
桂三木助かつらみきすけ

けい【桂】[漢字項目]

人名用漢字] [音]ケイ(漢) [訓]かつら
ニッケイ・モクセイなどの香木の総称。「桂冠桂皮肉桂
月の別名。「桂月
将棋の駒の一。「桂馬
[名のり]かつ・よし

けい【×桂】

ニッケイの慣用漢名。また、トンキンニッケイカシア)の漢名。
カツラの別名。中国ではモクセイをいう。
将棋で、「桂馬けいま」の略。

かつら【桂】[書名]

写真家石元泰博桂離宮を撮影した複数の写真集の通称。→桂日本建築における伝統と創造桂離宮空間と形

かつら【桂】[地名]

京都市西京区、桂川西岸の地名。桂離宮がある。[歌枕]
[補説]書名別項。→

かつら【×桂】

カツラ科の落葉高木。山地に自生。葉は広卵形で裏面が白い。雌雄異株。5月ごろ、紅色の雄花、淡紅色の雌花をつけ、花びらはない。材を建築・家具や碁盤・将棋盤などに用いる。おかつら。かもかつら。
中国の伝説で、月の世界にあるという木。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「桂」の意味・わかりやすい解説

桂【かつら】

京都市西京区の桂川右岸の地名。当地には古代〜中世を通じ,桂御厨(かつらのみくりや),桂殿(かつらどの),上桂荘,下桂荘など多くの荘園が成立,貴紳の別荘も営まれた。また《古今和歌集》以下数々の歌集に桂里(かつらのさと)を詠んだ歌があり,《宇津保物語》や《源氏物語》の舞台ともなっている。なお歌は,月世界には桂の大木があるという中国の伝説に関連して,月の桂を詠むものが多い。桂御厨からは,鵜飼い漁法によって獲った鮎・鮒等の川魚を朝廷に貢進していた。これらに従事する人々は〈桂贄人〉とよばれ(12世紀以降は桂供御人),漁業のほか桂川の渡船業一般にも従事していた。鵜飼漁法は南北朝期より衰退していったようで,桂供御人の名は史料から消える。しかし以後も鵜飼による桂川の魚とりは細々と続けられたようで,桂供御人と同じ集団に属していたとみられる桂女(かつらめ)の活動が史料にみられるようになる。15―16世紀には桂女が毎年鮎鮨樽を紀州日根荘や奈良興福寺に持参した記録がある。桂女はまた権門の宴席に侍り,寿詞・歌舞を捧げ,併せて遊女の役割も担うようになっていった。近世には集団を飾る伝説が生じ,元祖を岩田姫とし,神功皇后の侍女として皇后着用の綿帽子なるものを家に伝え,権家に出入して安産を祝い,年頭や八朔(はっさく)には堂上公家(どうじょうくげ)に飴を献ずる習俗があった。→桂離宮

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

改訂新版 世界大百科事典 「桂」の意味・わかりやすい解説

桂 (かつら)
guì

中国では,ニッケイ(肉桂)あるいはモクセイ(木犀),また月にあると考えられた木。日本のカツラやゲッケイジュとは別物。桂については《山海経(せんがいきよう)》や《荘子》など先秦の書物にも記事があり,珍しい木,香辛料の木とされ,時代が下ると《本草》をはじめ諸書に,薬用植物として,牡桂,菌桂,木桂,肉桂など多様に表出される。これらが現在の何に当たるかは大半不明だが,漢の武帝が未央(びおう)宮の北に桂宮を作ったように,桂が高貴,良い香りを象徴したことはまちがいない。一方,《淮南子(えなんじ)》にさかのぼって,月の中に桂の木と蟾蜍(ひきがえる)がいるという民話が普遍化し,唐の段成式の《酉陽雑俎(ゆうようざつそ)》には,500丈の桂を呉剛という男が切ろうとするが切口はすぐにふさがるという話をのせる。桂蟾(けいせん),桂宮(けいきゆう)といった熟語は月の文学表現として頻用され,桂月,桂樹などの名号,桂園一枝,折桂などの言葉もこれと関係する。唐・宋以後,江南の開発にともない,桂はこの地方に多いモクセイを指す場合が多くなる。桂林,桂陽の地名もモクセイにちなむ。
執筆者:

桂(旧村) (かつら)

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「桂」の意味・わかりやすい解説


かつら

茨城県中北部,城里町北東部の旧村域。那珂川流域にある。 1955年圷 (あくつ) 村,岩船村,沢山村の3村が合体して桂村が成立。 2005年常北町,七会村と合体して城里町となった。半分以上が八溝山地で,那珂川沿いに水田が,丘陵地に畑地が広がる。御前山県立自然公園に属する。


かつら

京都市西京区の一地区。旧村名。 1931年京都市に編入。桂川右岸にあり,国道9号線が通じる。米作のほか,近郊野菜園芸が行われるが,都市化,宅地化も進んでいる。桂川河岸に桂離宮がある。かつてはアユや飴を売り歩く桂女で知られた。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

動植物名よみかた辞典 普及版 「桂」の解説

桂 (カツラ)

学名:Cercidiphyllum japonicum
植物。カツラ科の落葉大高木,園芸植物

桂 (カツラ)

植物。キンポウゲ科の多年草,園芸植物,薬用植物。オキナグサの別称

桂 (カツラ)

植物。クスノキ科の常緑高木,園芸植物,薬用植物。ニッケイの別称

桂 (ケイ・カツラ)

植物。クスノキ・モクセイなどの総称

桂 (カツラ)

植物。藪肉桂または,木犀の古名

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android