デジタル大辞泉
「段」の意味・読み・例文・類語
だん【段】
[名]
1 上方へ高くのぼるように重なっている台状のもの。また、その一つ一つ。段々。「石の段を上る」「段を踏み外す」
2 上下に区切ったものや順に重なったものの一つ一つ。「寝台車の上の段」
3 段組みで分けられた、文字をレイアウトする列の一つ一つ。日本の多くの新聞では、上下15段で1面が構成される。
4
㋐長く続く文章のひとくぎり。段落。「文を三つの段に分ける」
㋑浄瑠璃など、語り物のひとくぎり。「『義経千本桜』の鮨屋の段」
㋒掛け算の九九で被乗数を同じくするもの。「二の段を唱える」
㋓五十音図で、行に対し、「あ」「い」「う」などの列。「た行う段」
5 武道や囲碁・将棋などで、技量によって与えられる等級。ふつう、初段から10段まである。「段を取る」
6 ある事柄をそれとさす語。「無礼の段お許しください」
7 物事の一局面。そういう場合。「いよいよという段になって逃げだす」
8 否定や疑問の語を伴って、それどころではないという気持ちを表す語。そういう程度。それほどの程度。「痛かったのなんのという段じゃない」
[接尾]
1 助数詞。階段状、または層をなしたものを数える。「階段を2段ずつ駆け上がる」「3段組みのページ」
2 武道や囲碁・将棋などの技量の程度を表す。「柔道3段の腕前」
[類語](4㋐)段落・章段・パラグラフ・章・節/(7)場合・時・折・ところ・際・節・場・機会
きだ【▽段/▽常】
《「きた」とも》
[名]
1 布などの長さを計る単位。反。
「庸布四百―」〈天武紀〉
2 田畑の面積の単位。段。
「およそ田は、長さ三十歩、広さ十二歩を―とせよ」〈孝徳紀〉
[接尾]助数詞。物の断片、切れ目を数えるのに用いる。
「十拳剣を乞ひ度して、三―に打ち折りて」〈記・上〉
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たん【段・反・端】
- 〘 名詞 〙
- ① 土地の面積の単位。
- (イ) 古代・中世の田積の単位。曲尺方六尺(一・八メートル)を一歩(三・三平方メートル)として、三六〇歩の面積。大化改新より太閤検地に至る。ただし奈良時代の一尺(令の小尺、すなわち和銅の大尺)は曲尺より約二二分(六ミリメートル)短いから計算上面積も小さくなる。奈良時代およびそれ以前には、高麗尺(こまじゃく)で方六尺を一歩とし、二五〇歩を一段とする制(高麗尺すなわち令の大尺は、和銅の大尺すなわち令の小尺の一尺二寸にあたる)、高麗尺方五尺を一歩とし、三六〇歩を一段とする制、和銅の大尺方六尺を一歩とし、三六〇歩を一段とする制の三方法があったが、いずれの制によっても一段の面積は同じである。なお収穫する稲の量を基準として、稲一束(穀一石・米五升)を得る田積を一代(しろ)として、五〇代を一段とする方法も広く後世まで行なわれた。
- [初出の実例]「凡田。長卅歩。広十二歩為レ段。十段為レ町」(出典:令義解(718)田)
- (ロ) 太閤検地以後の田積の単位。三〇〇歩を一段とする。天正年間から文祿・慶長年間にかけて全国的規模で行なわれた豊臣秀吉の検地では曲尺方六尺三寸を一歩とし、三〇〇歩を一段とした(六尺五寸とする史料もある)。江戸時代に入っての検地では、方六尺を一歩とし、これが明治政府に引き継がれた。
- [初出の実例]「一田畑屋敷六尺三寸棹を以、五間に六十間、三百歩を壱反に可レ致二検地一事、〈略〉一〈長六拾間 横五間〉此歩三百坪壱反也」(出典:伊勢国渡辺文書‐就伊勢国御検地相定条々・文祿三年(1594)六月一七日(古事類苑・政治七六))
- ② 布帛の長さの単位。
- (イ) 古代・中世、布(ぬの)の長さの単位(絹織物の単位は疋)。一巻(ひとまき)をいう。広狭・材質・産地などによって長さは一定せず、年代により大きく変わるが、養老令の規定では、令の小尺すなわち和銅の大尺ではかって、調布(調として納める布)は幅二尺四寸で長さ五丈二尺を一端とし、庸布(庸のかわりに納める布)は二丈六尺を一端とする。
- [初出の実例]「布二丈六尺。並二丁成二絇屯端一。〈謂。〈略〉布五丈二尺曰レ端也〉」(出典:令義解(718)賦役)
- 「ならの京の七大寺に御す行、布四千たん、この近き都の四十寺に、絹四百疋をわかちて」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜上)
- (ロ) 布帛の長さの単位。ふつう、一人分の衣服の料とする衣。幅九寸。絹物は三丈ないし三丈二尺。反物の尺は、江戸初期まで曲尺(かねじゃく)を用い、のちに呉服尺・鯨尺を用いるようになった。また、長さは、統一されるまで変化が多かった。
- [初出の実例]「ぬのなど人にいだされ候はば、越中・越後・宇治ぬのなどやうなるものは、十たん五十たん百たんもしんじゃう候し時は、さがみ入道殿めしよせられ御らんじ候き」(出典:身のかたみ(室町中頃))
- ③ 距離の単位。六間(一町の十分の一)にあたるか。約一一メートル。
- [初出の実例]「権左中弁来言、造二大垣一事等、長門国申下請可レ築二五段一由上」(出典:小右記‐寛仁三年(1019)一一月二三日)
- 「海へ一段(たん)ばかりうち入れたれども、猶扇のあはひ七段(たん)ばかりはあるらんとこそ見えたりけれ」(出典:平家物語(13C前)一一)
- ④ 和船の帆の大きさの単位。中世から近世初期までは筵(むしろ)帆を使用し、およそ三尺幅を一単位として長さに無関係に一反と称した。一七世紀後期以後は木綿帆が主用され、一反の幅は三尺三寸から二尺までがあり、一定しなかったが、一九世紀以後は松右衛門帆の普及で二尺五寸幅にほぼ統一された。長さに関係のないことは筵帆と同様である。
- [初出の実例]「沖に何まつ檜垣作十四五端の廻船に」(出典:浄瑠璃・博多小女郎波枕(1718)上)
- ⑤ 「たんもの(反物)」の略。
- [初出の実例]「よっぽどよい・反(タン)なり袖へ当てみる」(出典:雑俳・あふむ石(1839))
だん【段】
- [ 1 ] 〘 名詞 〙
- [ 一 ]
- ① 高さの違う台状のもののつながり。また、その一つ一つ。きざはし。きだ。〔日葡辞書(1603‐04)〕
- [初出の実例]「ハイと階子の段(ダン)をおりながら」(出典:人情本・春色梅児誉美(1832‐33)初)
- ② 格付けや品格の上下。しな。品等。
- [初出の実例]「なにか上るりも、口跡もきこへぬ。役者もだんがしれぬ」(出典:黄表紙・見徳一炊夢(1781)上)
- ③ 柔道・剣道・囲碁・将棋などで、技量に応じて与えられる等級。
- ④ 上下に重ねたもののいくつかをさしていう。また、表などの形で縦横に配されたものの、横の並び。「五十音のえの段」
- [初出の実例]「覚へのわるひ子供に、二の段(ダン)をおしへ、幾度させても覚へず」(出典:咄本・初登(1780)十露盤)
- 「この押入には、下の方はあたしのものが少しばかり這入って居りますから、あなたは当分上の段だけで我慢して下さいましな」(出典:千鳥(1906)〈鈴木三重吉〉)
- ⑤ 文章や話の一くぎり。場面。
- [初出の実例]「又おくの段にのたまへるは、若但書写是人命終当生忉利天上、とのたまへり」(出典:法華修法一百座聞書抄(1110)三月二六日)
- ⑥ 邦楽の楽曲の構成単位。能楽では仕舞、一調、独吟などに用いる一曲中の独立性の強い謡い所(「玉之段」「笠之段」など)、また、囃子事の構成単位をいう。箏曲・地歌では器楽部分の構成単位(「六段」「八段」など)、また、手事の構成単位についていう。浄瑠璃では曲を構成する最も大きな単位、また、俗に「鮨屋の段」のように一段の一部分を独立させて呼ぶのにいう。
- ⑦ 横縞に染めた織物。
- ⑧ ⇒たん(段)
- [ 二 ] 形式名詞のように用いる。
- ① 上に述べることを統合して、体言格とする語。くだり。こと。手紙文などに用いられる。
- [初出の実例]「云御下知違背段、為被行罪科、重言上如件」(出典:東寺百合文書‐は・正応二年(1289)八月日・若狭太良荘雑掌尼浄妙重申状案)
- 「貴家益々御隆盛の段奉賀上候」(出典:吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉九)
- ② 予想される状況とか一つの局面とかをとりたてていう語。そういう場合。
- [初出の実例]「迦葉仏、当入涅槃のだむなり。智者当得結縁せよ」(出典:栄花物語(1028‐92頃)峰の月)
- 「いざ帰ると云ふだんになって」(出典:多情仏心(1922‐23)〈里見弴〉半処女)
- ③ ( 否定や疑問の語を伴って ) ある場面・情況をとりたてて、それどころではないという気持を表わす語。そういう程度。
- [初出の実例]「ようもようも徳兵衛が命は続きの狂言に、したらば哀れにあらふぞと、溜息ほっとつぐ斗、ハテ軽口のだんかいの」(出典:浄瑠璃・曾根崎心中(1703))
- [ 2 ] 〘 接尾語 〙
- ① 階段などの一つ一つの平面を数えるのに用いる。
- [初出の実例]「五六段はかりおくれて非レ疾非レ遅、盖高座の如なる、大輿の来るなり」(出典:台記‐久安七年(1151)正月一〇日)
- [その他の文献]〔旧唐書‐陳叔達伝〕
- ② きざみ、等級などを数える語。
- [初出の実例]「先大昔、中むかし、当世やうと三段有が、どれをならひたひぞ」(出典:虎明本狂言・音曲聟(室町末‐近世初))
- ③ 柔道、剣道、囲碁、将棋など、免許状を発行するようなものについて、程度・段階を表わすのに用いる。数が多くなるにしたがい上位になる。
- ④ 文章の区切りの数を数えるのに用いる。
きだ【段・常】
- ( 「きた」とも )
- [ 1 ] 〘 名詞 〙
- ① 布地を測るために用いる単位。一常(きだ)の長さは庸布一丈三尺という。
- [初出の実例]「布一常(キタ)」(出典:日本書紀(720)天武五年八月(北野本訓))
- 「謂〈略〉布一丈三尺。是為二一常一」(出典:令義解(833)賦役)
- ② 田畑の面積を測る単位。一町の一〇分の一。段(たん)。
- [初出の実例]「凡そ田は、長さ卅歩、広さ十二歩を、段(キタ)と為」(出典:日本書紀(720)大化二年正月(寛文版訓))
- ③ きざみめ。段(だん)。きざ。また、階段。きざはし。
- [ 2 ] 〘 接尾語 〙 きれめを数えるのに用いる。わかれめ。
- [初出の実例]「是に、天照大神、乃ち素戔嗚尊の十握釼(とつかのつるき)を索取(こひと)りて打折(うちを)りて三段(みキタ)に為(な)し」(出典:日本書紀(720)神代上(兼方本訓))
- 「此法師が一生の頸(くび)、七きだに被レ切候はむ」(出典:梵舜本沙石集(1283)六)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
普及版 字通
「段」の読み・字形・画数・意味
段
常用漢字 9画
[字音] ダン・タン
[字訓] だん・きたえる・わかつ
[説文解字]
[金文]
[字形] 会意
段石の形+攴(ぼく)。鍛冶(たんや)の素材をうって薄片とし、器を鍛冶するもので、鍛の初文。〔説文〕三下に「物を椎(つい)するなり」とあり、椎(つち)でうち鍛えることをいう。の公孫段、字(あざな)は子石。名と字と相対し、段石の意を用いる。分段の意があり、段階の意に用いる。
[訓義]
1. 段石、鍛冶する材質のもの、層をなしている。だん。
2. 段石をうつ、うちきたえる、かためる、かたまり。
3. うってわかつ、こわけする、段々とする。
4. きざはし、階段、段々。
5. しな、階層。
6. わが国では六間を一段。地積三百六十歩、のち三百歩。
[古辞書の訓]
〔名義抄〕段 キル・ツタキル・ハシ・ムラ・クダリ・ツタツタ
[声系]
〔説文〕に段を「(たん)の省聲」とするが、左偏は段石の象形。〔説文〕に段声として緞・・鍛など四字を収める。は「石」にして段がその初文、鍛は鍛冶を加えることをいう。
[語系]
段・斷(断)・duanは同声。段は段石を切り出して椎を加え、鍛冶することをいう。また(絶)dziuat、截dziatも声の関係があり、tjiuanも切り出すことをいう。鍛tuanはそれを鍛冶する意である。
[熟語]
段階▶・段子▶・段氏▶・段脩▶・段段▶・段匹▶・段疋▶・段落▶・段聯▶
[下接語]
一段・下段・階段・格段・後段・算段・手段・初段・上段・前段・大段・尾段・疋段・分段・別段・両段
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
段 (だん)
日本の芸能の用語。区切りを表す一般語彙(ごい)を応用したものであるが,種目によって厳密にはその規定する内容が異なる。
(1)雅楽では,近代では,1曲を章・節・段と細分したときの最小単位に用いる。これは文章の細目用語の応用で,楽章・楽節・楽段とも用い,そのまま洋楽のmovement,phrase,periodの訳語にも用いる。ただし楽段という訳語の用い方は場合によって一定していない。
執筆者:平野 健次(2)能でも,脚本構成の単位として,〈シテ登場ノ段〉などと,区切られた部分の呼称として用いられることもあるが,古くは,《海人(あま)》の〈玉ノ段〉のように,クセやキリなどの類型に入らない特殊な構造と性格をもつ部分を,とくに取り出していう場合に用いた。その類の謡を〈段歌〉,その曲目を〈段物〉と総称することもある。また,囃子事(はやしごと)と呼ばれる器楽的部分では,段落をつける特定部分のみをいい,曲全体の冒頭部分は,カカリなどといって段とはいわないため,たとえば〈序ノ舞五段〉といえば,全体で6節からなり,途中に段落をつける部分が5ヵ所あることをいう。この場合,最初の段落から次の段落までを初段目ということもある。囃子事でも,〈一声(いつせい)〉などでは,その第1節を〈越(こし)ノ段〉,第3節を〈幕上ゲノ段〉などと呼ぶように,一般的用法に近い用い方もある。
執筆者:松本 雍(3)浄瑠璃では,1曲を区切る場合の最も大きな単位をいう。古浄瑠璃では6段組織,義太夫節の時代物では5段組織を標準とするが,後代のものでは段数が増え10段以上に及ぶものも生まれたが,2~3段を一つにまとめて5段組織に換算しうる。世話物は,上中下3巻組織を標準とするが,これを3段組織ともみなしうる。各段には,《……の段》という標題もつけられ,特定の段のみを取り出して上演されることもある。さらに1段のうちを細分して,口(くち),中(なか),切(きり)などと分けるが,そのそれぞれを独立させて,《……の段》と名づけることもある。たとえば,《菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゆてならいかがみ)》の四段目の切を《寺子屋の段》などという。切の最後の部分をとくに〈段切(だんぎり)〉というが,段構成をもたない長唄や豊後系浄瑠璃などでも,1曲の終曲部分を〈段切(だんぎれ)〉ということがある。
(4)その他,地歌・箏曲,胡弓,尺八などにおいて,器楽曲ないし器楽部分の構成単位として用いる。とくに地歌・箏曲では,その古典的器楽曲は,いわゆる〈段物〉にしても〈砧(きぬた)物〉にしても,段構造をもつのが原則であり,〈手事物〉の〈手事〉部分も,その当初のものは段構造をもつものが多い。各段を初段,二段などと呼ぶが,前奏部分がある場合には,これをマクラまたは序,後奏の後歌への経過的部分がある場合には,これをチラシと呼ぶ。〈段物〉にしても〈手事物〉にしても,各段がほぼ同一の拍数の場合,これを同時に合奏させることが可能で,この演出形式を〈段合せ〉という。
→段合せ →段物
執筆者:平野 健次
段/反 (たん)
尺貫法における面積の単位。大宝令以後,地積を表すのに用いられ,1891年制定の度量衡法により,36平方尺(1間四方)を歩(ぶ),30歩を畝として,段は10畝,すなわち300歩と定められた。約992m2であり,10aに近い。慣用では反とも書き,日本特有の単位で,倍量単位は10段に等しい町である。なお,和服地の長さないし広さの単位として端(反,段)がある。
執筆者:三宅 史
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
段
だん
日本音楽の用語。一曲をその構成部分に区分するとき,またはその特定部分をいうときに用いられる称。種目によって用法が異なる。 (1) 雅楽 舞楽の楽曲構成単位。章,部,段と細分した場合の最小単位。 (2) 能 (a) 囃子事の構成単位。ただし,カカリのように初段に先行する部分もあるので,段数の数え方は場合によって異なる。また,実際に段であるが数に加えない段を,「空 (そら) 段」という。 (b) 一部の能の曲で,独特の特色があって,しかもクセやキリなどの中心部分でないものを「…の段」と呼ぶことがある。『芦刈』の「笠の段」,『海人』の「玉の段」などがその例。 (3) 浄瑠璃 全曲をいくつかに区切った構成単位。古浄瑠璃は6段,義太夫節浄瑠璃の時代物は5段の組織を標準とし,後期のものではさらに段数がふえた。世話物では上中下の3巻という言い方をするが,これを3段組織ともみなしうる。各段には,それぞれ「…の段」という標題もつけられ,1段のなかを口,中,切 (奥) などに細分することもあり,しかもその細分されたものを独立させて「…の段」と名づけることもある。切の最後の部分を特に「段切り (段切れ) 」という。 (4) 地歌箏曲 純器楽曲の「段物」や,「手事物」の器楽的部分の「手事」などを,それぞれの構成単位に区切ったときの大きなまとまり。「手事」には,「…段」といわれる部分の前後に,「マクラ」「チラシ」といわれる前奏,後奏がつくこともあり,流派によっては「手事」の第2段が「チラシ」に近い性格をもつときには,これを「中チラシ」といって,後奏の「チラシ」を「本チラシ」または「後ヂラシ」ということもある。
段
たん
もと区画を意味した。反とも書く。 (1) 土地の面積の単位。大化改新後,町 (ちょう) 段歩の制が設けられ,町を 10段に分け,1段を 360歩とした。1歩は,和銅6 (713) 年の規定では方6尺,『大宝令』と『養老令』では方5尺であったが,実面積には相違なく,360歩を1段とする制が踏襲された。太閤検地では方6尺3寸を,江戸時代には方6尺を1歩とし,300歩を1段とした。明治の地租改正でも方6尺を1歩,300歩を1段とした。 (2) 織物を数える単位。端とも書く。成人一人前の衣料に相当する分で,普通鯨尺で長さ2丈8尺 (10.6m) ,幅約9寸 (0.34m) を1段としたが,織物の産地,種類によって異なる。 (3) 距離単位。6間 (約 11m) を1段とした。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
段
たん
反とも。面積の単位。中国では北魏以降,段が土地一区画という意味で用いられており,日本では令制で町の10分の1を示す単位として採用したらしい。養老田令では1段は360歩(ぶ)(1歩は高麗(こま)尺5尺平方)で,令制以前の地積単位である代(しろ)との関係は1段=50代。中世以降も地積単位として用いられ,太閤検地では300歩(1歩は6尺3寸平方)が1段となり,江戸時代以降も300歩(1歩は6尺平方)を示す単位として存続した。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
世界大百科事典(旧版)内の段の言及
【圧縮機】より
…さらに高圧気体を必要とする場合は,ディフューザーから戻り通路を経て次の羽根車で同様な過程で昇圧させる。このようなものを多段圧縮機といい,羽根車は直列的に配置される。また段間に冷却器(中間冷却器)を取り付け,圧縮過程で上昇する気体温度を下げることで,駆動動力の減少をはかっている。…
【蒸気タービン】より
…これに対して,蒸気タービンの実用化には,大きい遠心力に耐え複雑な形状をした羽根,あるいは高速回転体のつり合いや軸受などに関して材料の進歩と加工技術の発達を待たねばならなかった。 蒸気タービン実用化の道が開かれたのは19世紀の終りになってからであり,スウェーデンのド・ラバルCarl G.P.de Laval(1845‐1913)による単段の衝動タービンの製作(1883),イギリスのパーソンズCharles A.Parsons(1854‐1931)による多段の反動タービンの製作(1884)に始まる。とくに後者は,本質的な形式の変化もなく今日の大出力機に受け継がれている。…
【はかり(秤)】より
…当時の史料をみると,穫稲の分量を測定する際,斗量の使用と同程度に〈斤〉を使用していたことが知られる。当時稲1束(そく)の重さを1斤とする史料があるが,これは1段250歩制に基づく穫稲1束の重量で,1段360歩制に基づく穫稲1束はこれよりも軽く,そこで前者を〈成斤(せいきん)〉と称するのに対し,後者を〈不成斤〉または〈小斤〉と称することがあった。この〈成斤〉1斤はメートル法に換算して,500~700gほどであることが確かめられている。…
【漁網】より
… 網目の大きさを目合というが,この表し方には3通りある。1尺(30.3cm)の中にいくつ網目があるか(すなわち5寸の中にいくつ結節があるか)という数え方をするのが節,ひきのばした網目の長さ,すなわち脚2本分を測るのをcm目(昔は寸目),5寸の中にある脚の数(結節の数より一つ少ない)で数えるのが段である。段はあまり使われない。…
【検地条目】より
…封建領主が検地実施に際して検地役人にあてて出した検地実施規則のことで,〈検地条目〉と銘うったものもあるが,〈掟条々〉〈定条々〉〈置目〉などさまざまある。実際に検地役人を派遣して1筆ごとに測量する検地方法は太閤検地に始まり,検地条目もそのときからと考えられる。太閤検地も当初はまだ従来の慣習を踏襲するところがあったが,数年の施行過程をへてしだいに統一規準を設ける方向にすすみ,1589年(天正17)には検地条目の体裁をもった秀吉朱印状が出された。…
【元禄検地】より
…[寛文・延宝検地]につぐ江戸時代中期の検地。通例は5代将軍徳川綱吉の政権下(1680‐1709)で実施された江戸幕府の検地をさす。1683年(天和3)の越後高田(旧,松平光長領)に対する検地がその最も早い例であり,以下上野沼田(旧,真田領),陸奥窪田(旧,土方領),信濃高遠(旧鳥居領),出羽幕領(旧,米沢藩預地),関東幕領,佐渡幕領,備中松山(旧,水谷(みずのや)領),飛驒高山(旧,金森領),備後福山(旧,水野領),大和松山(旧,織田領)などを対象とする検地が行われた。…
【義太夫節】より
…そして18世紀半ばに《菅原伝授手習鑑》《義経千本桜》《仮名手本忠臣蔵》の三大名作が初演された。このころが人形浄瑠璃の勢いがもっともさかんで,生彩をはなった時期で,〈操り段々流行して歌舞伎は無きが如し〉(《浄瑠璃譜》)とまでいわれるほどの繁栄をみた。また18世紀初めからは,歌舞伎の音楽としても用いられるようになった([丸本物])。…
※「段」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」