デジタル大辞泉 「泡盛」の意味・読み・例文・類語
あわ‐もり【泡盛】
[類語]酒・
沖縄特産の焼酎(しょうちゅう)。製法は15世紀の初頭シャム(タイ)から伝来したとされ、やがて九州に伝わり、焼酎となった。昭和初期に刊行された東恩納寛惇(ひがしおんなかんじゅん)の『泡盛雑考』には、タイの米からつくる蒸留酒ラオロンと泡盛とは、その香味と蒸留機が酷似していることが指摘されている。原料は今日でもタイ産の砕米を用いるが、製法の特色は、沖縄独自の開発になる「泡盛麹菌(こうじきん)」という黒麹菌を原料米に繁殖させて麹にし、仕込む。したがって香味の個性が強い。黒麹菌はクエン酸を多量に生成し、もろみを酸性に保つから、暖地での安全醸造を可能にしている。麹100キログラムに水170リットルを加えて、もろみとし、25~30℃で約10日間ぐらい、半分地中に埋めた甕(かめ)で発酵させて蒸留する。蒸留は直火式のかぶと釜(がま)蒸留機による。アルコール分40%ほどのものを南蛮甕(なんばんがめ)に入れ、イトバショウの葉でくるんだ木栓で密栓して貯蔵する。長く貯蔵した酒をクース(古酒)という。古酒を出荷した場合、それと同量の、次に古い酒を順次補う仕次(しつぎ)というやり方がとられていた。クースは甕からの色素で淡黄色を呈する。近年は、ステンレス製で、温度制御のできる大型発酵タンクや大型貯蔵タンクが用いられている。
泡盛の名は、粟(あわ)でつくったとする説、醸造するときに泡が盛り上がったからとする説、杯に盛り上がるからとする説、また泡盛の強さを計るのに、水を混ぜて泡のたたなくなる水量で計ったからとする説などいろいろある。泡盛は特有の甘い香りのある味の濃い蒸留酒で、1997年(平成9)には47場で約2万キロリットル(アルコール度数30度で換算)以上生産され、生産量は伸長している。
[秋山裕一]
沖縄県特産の米焼酎。蒸米に黒こうじ菌(泡盛菌)をはやした酸味の強いこうじと水を容器に仕込み,糖化と同時に酵母によるアルコール発酵を行わせる。こうして熟成したもろみを簡単な単式蒸留機で蒸留すると,アルコール分45%に近い原酒が得られる。これを素焼きのかめに入れ,イトバショウの葉でくるんだデイコ(マメ科の植物)の木栓で密栓し,5~6年以上貯蔵すると淡黄色に色づいて味はまろやかになり,バショウの香りが移った古酒(くうしゆ)になる。とくに古くシャムから入った南蛮(なばん)がめに貯蔵したものは,味,色ともによく,珍重される。15世紀にはじまるシャム(南蛮,現,タイ国)との交易にともなって蒸留技術が伝えられて琉球焼酒(しようしゆ)(焼酎)の製造がはじまったとされ,泡盛の名は1671年尚貞王から将軍徳川家綱への献上品目録にはじめて見える。洋の東西を問わず,蒸留酒を移しかえるときの泡立ちや泡持ちで,その酒のつよさを測ることが行われており,琉球焼酒のつよさを強調するため,島津藩が表文作成にあたって,泡盛と名づけたとする説がある。琉球王朝時代には王家の監督下に,首里城下の赤田,崎山,鳥小堀の3ヵ村で40人の焼酎職が製造に従事したものであった。現在は貯蔵熟成したものに水を加え,アルコール分40,35,30,25%の製品としている。泡盛の酒器に提子(ひさげ)に似た〈酎家(ちゆうかあ)〉と〈からから〉がある。前者は鹿児島県で〈ちょか〉,後者は鹿児島県で〈からから〉,熊本県球磨地方で〈がら〉と呼ばれる。なお,本土の米焼酎,いも焼酎,麦焼酎などは,すべて泡盛のもろみを酒母としてつくられている。
→焼酎
執筆者:菅間 誠之助
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…麦焼酎は長崎県壱岐(いき),黒糖焼酎は鹿児島県大島郡の特産,そば焼酎は宮崎県に多い。もろみ取焼酎の原型として,一次もろみをそのまま蒸留する沖縄特産の泡盛がある。以上のほか二次もろみにトウモロコシ,ヒエ,アワ,キビ,および上質の米ぬかなどを使うものもある。…
※「泡盛」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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