知音(読み)チイン

デジタル大辞泉の解説

ち‐いん【知音】

《中国の春秋時代、の名人伯牙は親友鍾子期が亡くなると、自分の琴の音を理解する者はもはやいないと愛用していた琴の糸を切って再び弾じなかったという「列子」湯問などの故事から》
互いによく心を知り合った友。親友。「年来の知音
知り合い。知己。「知音を頼る」
恋人となること。また、恋人。なじみの相手。
「しをらしき女は大方―ありて」〈浮・一代男・三〉

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大辞林 第三版の解説

ちいん【知音】

〔琴の名人伯牙は、自分の弾く琴をよく理解していた友人の鍾子期の死後、琴の弦を切ってしまったという「列子湯問」の故事から〕 心の底まで理解しあった友人。親友。
知り合い。知人。 「親類-の人々/遠野物語 国男
愛人。恋人。また、情を交わすこと。 「小まんの-の与作/浄瑠璃・丹波与作

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

知音
ちいん

互いに心をよく知り合い、許し合った友達、親友のこと。のち転じて、広く知人や恋人などをもいうようになった。中国、春秋時代の琴の名手伯牙(はくが)に鐘子期という親友がおり、伯牙が高山を思いつつ琴を弾ずれば、子期の心にも高山の姿が映じ、流水を思いつつ弾ずれば、洋々たる江河が子期の心に写ったというほど、伯牙の琴の音をよく知り、聞き分けた。その子期が没すると、伯牙は「もはや琴を聞かせる人はいない」といって、琴を破り、弦を断ってふたたび琴を弾くことがなかった、と伝える『列子』「湯問篇(へん)」や『呂氏春秋(りょししゅんじゅう)』「本味篇」などの故事による。「断琴」「伯牙琴を破る」も同義。[田所義行]

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精選版 日本国語大辞典の解説

ち‐いん【知音】

〘名〙 (「列子‐湯問」「呂氏春秋‐孝行覧」などに見える故事による語。中国の春秋時代、琴の名手伯牙(はくが)のひく曲を、その友人鍾子期(しょうしき)はよく理解していたが、鍾子期が死んで、伯牙は自分の音楽の真髄を理解してくれる人はいなくなったとして、琴の弦を切ってしまったという故事から)
① 心の底をうちあけて話すことのできる友。心の通じ合った親友。無二の友。
※性霊集‐一(835頃)徒懐玉「知音々々、蘭契深」
※太平記(14C後)二八「汝は吾年来(としごろ)の知音(チイン)也」
② (━する) 転じて、友人。知り合い。知人。また、友人づきあいをすること。
※明衡往来(11C中か)上本「昨日春宮亮出立之処。知音之輩多以到訪」
※足利本論語抄(16C)公冶長第五「久しく知音すれども不絶却て敬するぞ」
③ (━する) 男と女が親しくすること。恋情を通じること。恋人となること。遊女のなじみ客となること。また、なじみの相手。衆道においては、念友をいう。
※虎明本狂言・八尾(室町末‐近世初)「此ゑんまわうがいにしへ、やをの地蔵と知音をして、さいさいだいてねた」
※浮世草子・好色一代女(1686)五「一年中の鬠(もとゆひ)白粉(おしろい)つづけるちいん有」
④ 音曲を理解すること。
※歌謡・松の葉(1703)序「やつがれ年ごろ閑暇の茶菓に是をもてあそびて、知音(チイン)のこころざしありければ」
⑤ 学問・仏法などに精通していること。また、その人。
※性霊集‐一〇(1079)叡山澄和上啓返報書「権実難別。顕密易濫。自知音誰能別之」

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