デジタル大辞泉 「飯」の意味・読み・例文・類語
はん【飯】[漢字項目]
[学習漢字]4年
〈ハン〉
1 米など穀物を炊いた食べ物。めし。「残飯・炊飯・赤飯・麦飯・噴飯・米飯」
2 食事。「飯台・飯店・
〈めし〉「飯粒/朝飯・早飯・麦飯・夕飯・五目飯・無駄飯」
[難読]
めし【飯】
1 米・麦などを炊いたもの。ごはん。いい。「
2 食事。ごはん。「三度の
[類語](1)ライス・麦飯・冷や飯・
いい〔いひ〕【▽飯】
「家にあれば
[補説]古くは米を
( 1 )室町時代にそれまでのイヒに代わって現われた。語源にはいくつかの説があるが、動詞「めす(召)」の名詞化という説が有力である。「召す」は「呼び寄せる」「着る」「食べる」「乗る」など複数の用法をもっていたが、名詞としてはそれらの意味を共存させず、「呼び寄せること」の意から「食べるもの=飯」の意へと交替した。
( 2 )語源から見てメシは本来敬語のはずであるが、室町後期にはすでにオメシのように「お(御)」を冠した形も認められる。このオメシは近世には遊里の女性を中心に使用されたようである。
( 1 )もともとは、米を煮た水分の多いカユに対し、蒸して水分の少ないものをいったと思われるが、平安時代になると、蒸した米はこは(強)い━固いものという意識がすでに生じていたためか、イヒよりもコハイヒが多く用いられるようになる。
( 2 )中世から近世にかけて、炊いたヒメイヒが一般化するに従ってコハイヒは主に餠米を蒸したものを指すように用法を限定されていった。また、メシが日常語として用いられるようになるとコハイヒもコハメシに変化した。
語源はウマウマ(旨々)からきたとする「大言海」などの説が有力と思われ、その点からすると本来幼児語であったと考えられる。
本来は穀類を炊いたものの総称であったが、一般には米に水を加えて炊いたものをいう。「めし」「いい」または字音で「はん」といっている。現在は「ごはん」という呼び方が一般的であるが、「めし」も広く使われている。古くは「召す」の名詞化「召し」「御食(みめし)、食物(めしもの)」といい、これから「めし」に転じたのである。また、平安朝のころ高貴の人が用いる飯は「御物(おもの)」「供御(くご)」「御台(おだい)」などといった。
[河野友美・大滝 緑]
米に他の穀類などを混ぜて炊飯するものが数多くあり、混ぜる材料の名を冠して麦飯(むぎめし)、稗飯(ひえめし)、粟飯(あわめし)、小豆飯(あずきめし)、大豆飯(だいずめし)などがある。このほか、各種の具を加えた五目飯(ごもくめし)(かやく飯)、混ぜご飯、しょうゆで色づけした桜飯、クチナシで色づけした黄飯(おうはん)など種類が多い。また、使用する米により、精白米を使用したものを白飯(はくはん)、胚芽米(はいがまい)を使用した胚芽飯(めし)、玄米を使う玄米飯、米の搗精(とうせい)度により半搗(はんつ)き米飯といった区別もある。
[河野友美・大滝 緑]
古くは飯をつくるために米を蒸した。つまり、平安時代までは、飯は今日の「おこわ」すなわち米を蒸したものをいい、これを強飯(こわいい)とよんだ。米に水を多く加えて煮たものは粥(かゆ)といった。粥のうち水を少なくして炊いたものは硬粥(かたかゆ)、弱飯(よわいい)または姫飯(ひめいい)といったが、糄(ひめ)という漢字を用いることもあった。貴族たちは強飯や粥のほかに水飯(みずめし)・湯飯(ゆめし)(強飯や、穀類を蒸して乾燥させた糒(ほしいい)を水や湯に浸した飯)も用いた。平安末期から姫飯がしだいに広まったが、一般民衆は玄米にアワ、ムギ、ヒエや、ダイコンの干葉(ひば)、山菜などを混ぜて炊くのが常であった。
[河野友美・大滝 緑]
古くから飯の炊き方には、炊乾(たきぼし)飯、湯取(ゆどり)飯、二度(ふたたび)飯などの種類があった。炊乾飯は今日の通常行われている炊飯法であり、湯取飯は、いったん米を多量の湯で軽くゆで、表面の粘(ねば)を洗ったのち蒸して仕上げる。日本以外では、この方法で炊くところが多かった。二度飯は、湯取飯に水を加えもう一度煮て柔らかくしたものや、冷や飯に湯を加えて飯を温めたのち湯を抜き、蒸し上げて飯に仕上げるものをいう。
[河野友美・大滝 緑]
飯はデンプンが水とともに加熱されてデンプンがα(アルファ)化したものである。いったんα化したデンプンは、水分の多い状態で長く放置すると、デンプンが老化現象をおこし、ばさばさした状態になりやすい。とくに気温が低い場合にこれがおこりやすい。また、気温の高いときには、細菌による腐敗も進み、糸を引くようになる。老化の防止には、砂糖などが効果があるから、甘味のきいた飯などにすれば、弁当などとして、時間が経過して食べる場合ではデンプンの老化が防止でき、味が低下しにくい。また、夏季など気温の高いときには、炊飯時に少量の酢を加えると、酸によって加熱の際に菌が多く死滅するから腐敗しにくい。また、圧力鍋(なべ)のような高温で炊飯した場合も殺菌率が高く、比較的腐敗しにくい。
[河野友美・大滝 緑]
玄米飯は、白飯よりもビタミンやミネラルが多く、健康上推奨されることが多い。また、不消化物である食物繊維を多く含み、これが消化器によい影響を与え、腸内乳酸菌などの繁殖を促し、腸内のビタミン合成を行う利点がある。しかし、他の栄養素の吸収を低下させる点があり、成長期で多くの栄養成分を要する者や、食が少なくなっている高年者では必要な栄養成分が十分にとれないため、健康を害することもあるから注意が必要である。
[河野友美・大滝 緑]
米が国民全体の常食となったのは第二次世界大戦後、配給制度が確立してからで、それまでは米の飯は盆・正月・祭り・節供(せっく)などのハレの日に限られていた。普段は、米にケシネ(褻稲)とよぶ麦・粟(あわ)などの雑穀を混炊した麦飯・粟飯・稗飯(ひえめし)・大豆飯・豌豆飯(えんどうめし)、雑穀数種を混ぜた三穀飯(さんごくめし)、あるいは野菜・芋・海藻などを混炊した大根飯・芋飯・筍飯(たけのこめし)などのかて飯(めし)を食していた。松茸(まつたけ)飯・鳥飯・五目飯などもかて飯が発達したものであるが、これは御馳走(ごちそう)とされた。竈(かまど)に釜(かま)をかけて飯を炊くようになったのは比較的新しく、第二次世界大戦前まではいろりの自在鉤(じざいかぎ)に鍋(なべ)をかけて炊く地方が多かった。麦飯やかて飯はオネバを絞り流して炊く湯とり法で炊事したので、鍋が便利だったのである。白米食が普及すると、米の飯は炊き干しで炊くので蓋(ふた)が厚くて重い釜がもっとも適していた。
ハレの日の飯には赤飯と赤の飯がある。赤飯は糯米(もちごめ)にゆでた小豆(あずき)や大角豆(豇豆)(ささげ)を入れて蒸した強飯(こわめし)で、雑穀混炊と蒸し飯の伝統的食品調理法を伝え、赤く着色するのは、米の古い品種である赤米に連なるものといわれる。赤の飯は粳米(うるちまい)に大角豆を入れて炊いたものである。赤飯は祝い事のものと考える人が多いが、葬式のときにつくる所もあり、要するに普段と違ったハレの日の食べ物だったのである。ただし、葬式のときの赤飯は、ゴマをすりつぶしてかけるなど、祝い事の赤飯とは区別している地方が多い。
日本では、古く携帯食として糒(ほしいい)や屯食(とんじき)があったが、握り飯はもっとも一般的な携帯食である。
かつてもっとも一般的な主食だった麦飯も、時代によっていろいろの種類があった。丸麦というまるのままの大麦を炊いた飯は、素麦(すばく)、麦飯(ばくめし)、ムギイッソウ、ムギゾッキなどといわれた。大麦を石臼(うす)で挽(ひ)いて挽き割りにしたヒキワリ、ワリメシは、素麦に比べ口あたりがよかった。押し麦はもっとも新しく普及した食法である。麦飯にも野菜麦(やさいばく)や麦粥(ばくがゆ)などのかて飯も行われたが、米に対する麦の割合が時代とともに減少していった。
[内田賢作]
『福田浩・山本豊著『おかゆ――粥・汁かけ飯・雑炊・泡飯と粥のおかず』(2002・柴田書店)』▽『農山漁村文化協会編、奥村彪生解説『聞き書・ふるさとの家庭料理2 混ぜごはん・かてめし』(2003・農山漁村文化協会)』
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
〈召しあがるもの〉の意で,穀類,とくに米を煮たり蒸したりしたものの総称。穀類を煮たり蒸したりすることを古くは〈炊(かし)ぐ〉といい,のち〈炊(た)く〉というようになった。〈たく〉は燃料をたいて加熱する意と思われる。飯の炊き方には煮る方法と蒸す方法とがあり,古く日本では甑(こしき)で蒸した強飯(こわめし)を飯(いい)と呼び,水を入れて煮たものを粥(かゆ)といった。粥はその固さによって固粥(かたがゆ)と汁粥(しるかゆ)に分けられた。現在の飯はこの固粥にあたり,強飯に比べると軟らかいので姫飯(ひめいい)とも呼んだ。従来は日本の飯が,蒸したものから煮たものに変わったのは室町末期から安土桃山時代にかけてのこととされていたが,弥生時代の土器のあり方からして,古代でも日常的には米を煮て食べていたと推論されている。甑で蒸すよりもなべやかめ(甕)で米を煮るほうがはるかに容易であり,現にミャンマーなどでそれが行われていることからいっても,この説は首肯しうるものと思う。江戸時代には米を煮て飯にする方法には,焼乾(炊干)(たきぼし)飯,湯取(ゆどり)飯,二度(ふたたび)飯の3法があるとされていた。焼乾飯は現今一般に行われている炊飯法,湯取飯は沸騰させた湯に米を投じ,ほぼ煮えたころに煮汁をしぼり捨てて蒸す方法で,東南アジアなどではこれが一般的である。二度飯は湯取飯をもう一度煮て軟らかくするもので,病人などによいとされている。
ところで,日本では第2次大戦後までハレの日を除いては米に雑穀を加えたり,それらにダイコン,カブ,干し菜,干し芋,海藻などの増量材を加えて主食とした地域が多かった。こうした混ぜ物をして増量したものは糅飯(かごめし)と呼ばれた。糅飯の増量材を質的に変化させて嗜好(しこう)的なものにしたものが,変り飯,混ぜ飯,味つけ飯などと呼ばれるものである。関西でかやく飯と呼ぶのは,ゴボウ,ニンジン,シイタケ,油揚げなどの具を加薬(かやく)(薬味)として炊き込み,あるいは混ぜたものをいうが,この〈かやく〉ももともとは助けるものの意味の〈加役〉で,増量材の意ともされる。江戸時代,東海道目川(めがわ)宿(現,滋賀県栗東市)の名物として知られた菜飯は,カブやダイコンの葉をゆでて刻み,塩味をつけて飯に混ぜたもので,奈良茶と呼ばれた茶飯とともに広く普及したものであった。たけのこ飯,クリ飯,マツタケ飯,五目飯,あるいは芳飯(ほうはん)なども,すべてこうした変り飯である。ほかに,各種の茶漬,握りずしや押しずしなどのすし,ウナギ丼その他の丼物(丼)といった日本独特の米飯料理も行われている。なお平安時代から,夏は冷水をかけて食う水飯(すいはん),その他の季節には湯をかけて湯漬(ゆづけ)にすることも多かった。とくに室町時代には湯漬が愛好され,その食べ方の作法が多くの故実書に記されている。また,飯を食べる前にまず少量をとって別の小皿に置く生飯(さば)の風習も,広く行われていた。
欧米では,米飯はふつう野菜料理の一種とされ,付合せに用いられることが多いが,ピラフ,パエーリャ,リゾットなどの炊込飯も行われる。パエーリャpaellaはスペインの名物料理で,油でいためた米にエビ,ムール貝,鶏肉,野菜などを加え,塩,コショウで調味し,サフラン,ベイリーフ,タイムなどを入れてブイヨンで炊き上げる。リゾットrisottoはイタリアの料理で,ふつうタマネギといっしょにいためた米に鶏肉,エビなどを加え,塩,コショウで調味してブイヨンで炊き,炊き上がりにチーズやバターを加えて混ぜ合わせる。
執筆者:鈴木 晋一+松本 仲子
米は搗精(とうせい)の度合により玄米,七分づき米,精白米などがあり,飯の栄養分含量は搗精度が進むにしたがって減少するが,逆に消化吸収率は向上する。近年ビタミンB1,Eなどを含む胚芽を残しながら精白した胚芽精米ができるようになり,栄養分,消化,風味ともにすぐれた飯が食べられるようになってきた。また精白米の栄養を補うため,強化米を混ぜて炊くこともある。飯の栄養成分は表に示すとおりである。従来日本人は1年に1人1石(143kg)の米を食べ,必要なエネルギーの70%,タンパク質の30%をこの米にたよってきたが,現在は消費量が激減してそれぞれ40%,25%の割合になっている。米のタンパク質は動物性タンパク質に比べるとリシン,トレオニンが少ないが,アミノ酸組成がよく,脂肪は血中コレステロールを低下させるリノール酸を含む。精白米ではビタミンB1が不足し,無機質ではカルシウムが少ない。米飯は美味であるため飯偏重の食事になりやすいが,不足する栄養分を副食で補い,バランスのとれた食事にするのがよい食べ方である。
執筆者:松本 仲子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…甑(こしき)やせいろうで蒸した飯。《万葉集》巻五の山上憶良の〈貧窮問答歌〉に〈甑には蜘蛛の巣懸(か)きて飯(いい)炊(かし)く事も忘れて〉とあるように,もともと飯といえば蒸したものであった。…
…〈たく〉は燃料をたいて加熱する意と思われる。飯の炊き方には煮る方法と蒸す方法とがあり,古く日本では甑(こしき)で蒸した強飯(こわめし)を飯(いい)と呼び,水を入れて煮たものを粥(かゆ)といった。粥はその固さによって固粥(かたがゆ)と汁粥(しるかゆ)に分けられた。…
…甑(こしき)やせいろうで蒸した飯。《万葉集》巻五の山上憶良の〈貧窮問答歌〉に〈甑には蜘蛛の巣懸(か)きて飯(いい)炊(かし)く事も忘れて〉とあるように,もともと飯といえば蒸したものであった。…
※「飯」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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