カウンセリング(英語表記)counseling

翻訳|counseling

デジタル大辞泉 「カウンセリング」の意味・読み・例文・類語

カウンセリング(counseling)

学業や生活、人間関係などで悩みや適応上の問題をもつ人に対して、心理学的な資料や経験に基づいて援助すること。
[類語]助言教示訓示アドバイスコンサルティング指導導き教え手引き指南教授教育訓育教導補導ほどう善導誘掖ゆうえき鞭撻べんたつ手ほどき教習コーチ伝授する講義する講ずる仕込むたたき込む育てる導く仕付ける教鞭を執る薫育教化教学文教育英教えるガイダンス手を取る示教指教徳育知育体育矯正薫陶入れ知恵洗脳感化徳化醇化啓発啓蒙

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「カウンセリング」の意味・読み・例文・類語

カウンセリング

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] counseling ) 生活や一身上のことで悩みをもつ人に対し、話し合うことによって、その人が自ら解決できるように援助する活動。二〇世紀初頭のアメリカで始まり、進路相談、学業相談のほか精神的健康の回復、維持など広い分野で応用されている。
    1. [初出の実例]「アメリカでは、このカウンセリングというシステムが、ずいぶん発達しているが」(出典:こちら社会部(1964)〈菊村到〉一三)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

最新 心理学事典 「カウンセリング」の解説

カウンセリング
カウンセリング
counseling

カウンセリングは,その発展の経緯から多義的に使用されて現在に至っている。語源は「ともに考慮すること」を意味するラテン語のconsiliumに由来し,相談する・協議する(take counsel)と,意見を述べる・助言する(give counsel)の二つの意味をもつ。『旧約聖書』(箴言)の英訳では,「助言者」はcounselor,そして賢者の「勧め」はcounselと書かれている。カウンセリングは人類の歴史始まって以来,人びととの生活の中で知恵者が行なっていた一味違った「相談」とか「助言」を意味していたと受け止めることができる。

 知恵者の相談・助言が科学的基礎のある働きとして確立され,カウンセリングの先駆となったのは,1909年に出版されたボストン職業局のパーソンズParsons,F.の著書『職業の選択Choosing a Vocation』だといわれている。彼の提示した青年の賢明な職業選択に必要な3要素,①個人の特性・特徴の発見,②職業に必要な能力の分析,③個人と仕事の適合は,1910年代に始まった心理測定運動に支えられて,職業指導vocational guidance,特性因子理論によるカウンセリング,キャリア・カウンセリングの原型となった。

 カウンセリングが心理学に基づいた専門的行為という意味で使われたのは1938年,アメリカにおいてパターソンPatterson,O.G.,シュナイドラーSchneidler,G.G.,ウィリアムソンWilliamson,E.G.による著書『学生ガイダンスの技法Student Guidance Techniques』においてである。翌年,ウィリアムソンは『学生カウンセリングの方法:臨床カウンセラーの技法マニュアルHow to Counsel Students:A Manual of Techniques for Clinical Counselors』を著わし,カウンセリング・カウンセラーという用語を使って,特性因子理論に基づく学生支援論を展開した。カウンセリングとは,学生の適合,環境の変化,適切な環境の選択,必要なスキル学習,態度の変容を支援することであり,臨床的カウンセリング技法とは,分析,総合,診断,予後,カウンセリング,フォローアップの6段階を踏んだ個別対応であるとした。

 ところが,1942年ロジャーズRogers,C.R.が『カウンセリングと心理療法Counseling and Psychotherapy』で,カウンセリングと心理療法psychotherapyは,個人との持続的・直接的な接触によって,その個人の行動・態度の建設的な変容をもたらす面接であり,基本的に同じ方法を活用しているとして両語を互換的に用いた。このことにより,両語を区別する立場とほぼ同じとみなす立場の違いについての議論が続くこととなった。その結果,教育的支援と治療的支援を区別して,開発的カウンセリングと治療的カウンセリングとよぶこともある。

 2004年,日本カウンセリング学会が発表した定義では,カウンセリングとは,クライエントが尊重される人間関係を基盤として,クライエントが自己資源を活用して人間的に成長し,自立した人間として充実した社会生活を営み,生涯において遭遇する諸問題の予防と解決のための専門的援助活動としている。2010年,アメリカ・カウンセリング学会(ACA)は新たなカウンセリングの定義を採択し,「多様な個人・家族・集団がメンタルヘルス,心身の快適性,教育,キャリア目標の達成をエンパワーする専門的な関係」としている。以上のような経緯から,カウンセリングとは,心理学に基礎をおいた成長モデル指向の支援関係と考えることができる。 →心理療法 →多文化間カウンセリング
〔平木 典子〕

出典 最新 心理学事典最新 心理学事典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「カウンセリング」の意味・わかりやすい解説

カウンセリング
counseling

英語で〈相談すること〉を意味するが,今日の日本では単なる相談や助言よりも専門的な意味をこめて用いられるときと,そうでないときとがある。アメリカにおいて,最初は職業指導,個人指導など,専門家が〈指導〉することが熱心に行われたが,それでは不十分であり,話合いによって方向を見いだしてゆくことがたいせつであるとの考えから,1940年ころよりカウンセリングが盛んとなってきた。その過程において,それは個人の可能性を開発していくことができることが明らかとなってきたので,カウンセリングは,単なる相談の域を越えて,人間の自己実現の可能性をひき出していく方法として重要視されるようになった。カウンセリングにおいて,悩みや問題をもって来談する人をクライアントclient,それに応じる人をカウンセラーcounselorと呼ぶが,カウンセラーとクライアントの人間関係のあり方が,クライアントの自己実現傾向を促進することが認められ,それについての研究が盛んとなった。

 カウンセリングは簡単な知識や情報を得るために1回だけの面接が行われるものから,上記のようなクライアントの自己実現にかかわって長期間に及ぶものまであるが,狭義には,後者のものだけをカウンセリングと呼び,専門的な訓練を受けた者が担当すべきであると考える人もある。今日一般にはきわめて広義に使用され,〇〇カウンセリングという名称によって単なる相談が行われていることが多い。専門的には,カウンセラーがクライアントの悩みを共感的に理解し,受容的な態度によって接することにより,クライアントの自己実現の可能性を十分にひき出すことがたいせつと考えられている。個人に対してのみではなく,集団で行うグループ・カウンセリング,家族を対象とする家族カウンセリングなどがある。カウンセリングにおいても,多くの学派や方法があるが,深層心理学の諸学派からの影響を強く受けている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のカウンセリングの言及

【教育相談】より

…すなわち知能障害,情緒障害,反社会的行動,非社会的行動などを示す子どもについて,その原因を明らかにし,症状に応じて対応する。たとえば登校拒否児の場合,本人の心理的状態と親子関係,学校の学習指導のあり方や友人関係などに目を向け,本人に対して種々の心理療法を適用しつつ親に対するカウンセリングも行い,必要に応じて教師に指導助言をするなどである。教育相談としては,このようなもののほかに,とりたてて問題をもたない子どもも含めて,身体,知能,学力,パーソナリティなどの検査を実施し,そのデータを参考にしながら面接するなどして科学的な教育指導を行おうとすることも教育相談に含む。…

【精神療法】より

…一般に,危機や新しい不安に対しては,受容的態度で患者の自己表現をはかり,洞察をまつが,慢性化した行動や態度の異常に対しては学習や訓練の側面が中心となる(行動療法,森田療法)。治療者との人間関係に重点をおくもの(精神分析,カウンセリング)から特殊な状況のなかでの変容を期待するもの(森田療法,内観療法)等,また,理論や利用する手段に従ってさまざまな分類がある。不安および不適応行動の成立についての科学的理論とそれに基づく技法がないと精神療法とはいえないが,宗教による〈癒し〉のみならず,日常生活の中の人間関係の支援にも共通するメカニズムを見いだすことはできる。…

※「カウンセリング」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

マイナ保険証

マイナンバーカードを健康保険証として利用できるようにしたもの。マイナポータルなどで利用登録が必要。令和3年(2021)10月から本格運用開始。マイナンバー保険証。マイナンバーカード健康保険証。...

マイナ保険証の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android